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夜の梅をた忘れて
太宰大監大伴宿祢百代の梅の歌一首
ぬばたまの その夜の梅を た忘れて 折らず来にけり 思ひしものを
(巻3-392)
その夜の梅については、つい忘れてしまって、折らずに来てしまった。
折ろうとは思っていたのだけれど。
太宰大監は大宰府政庁の第三等官。
おそらく「夜の梅」とは、おそらく「夜の女性」。
宴席で「夜の女性」を紹介されたけれど、忘れてしまった。
結局、残念ながら、その夜の女性が気に召さなかったのではないかと思う。
おそらく、その女性の顔ぐらいは見ただろうから、忘れたとは考えられない。
好感が持てなかった、だから、結局相手をせず、帰ってきてしまった。
あるいは、また別の愛人に逢いに行ってしまったのかもしれない。
「思ひしものを」は、おそらく、紹介してくれた人への言い訳。
都の官人の身勝手さとも言えるけれど、男も誰でもいいというわけにはいかない。
嫌いな、気が合わないタイプの女性もいるのだから。