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軽の池の
紀皇女の御歌一首
軽の池の 浦廻行き廻る 鴨すらに 玉藻の上に ひとり寝なくに
(巻3-390)
軽の池の浦のめぐりを泳ぎ回る鴨でさえ、玉藻の上には一人寝をしないのに。
なんとも素直に、一人寝の寂しさを詠んでいる。
鴨のような自由な身になりたかったのだろうか。
そうすれば、愛しいあの人と、共寝ができるのに。
複雑な立場が、なかなか自由な恋愛を許さない。
だからこそ、恋心は増すのだけれど。
紀皇女は天武天皇の皇女。
弓削皇子(異母)とは恋愛関係にあったと言われている。
「軽の池」は奈良県橿原市にある剣池。