82/1385
雨降らば
石上乙麻呂朝臣の歌一首
雨降らば 着むと思へる 笠の山 人にな着せそ 濡れはひつとも
(巻3-374)
雨が降ったらかぶろうと思っている笠の山さん、その笠をあの人にはかぶさせないでください、あの人がびしょ濡れになろうとも。
石川乙麻呂朝臣は、前出の山部赤人と春日野の宴席で同席したのだろう。
三笠の山を笠の山として、あの笠は自分がかぶる予定。
だから、違う人が濡れようとも、かぶせてはいけませんと、山に命令している。
三笠の山に関わって恋する女性でもいたのだろうか、私が通うのだから、他の人が雨に濡れようが、家には入れるな、という意味に取った。
これも宴席で詠めば、大笑いの歌になる。