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山辺赤人 武庫の浦を
武庫の浦を 漕ぎ廻る小舟 粟島を そがひに見つつ ともしき小舟
(巻3-358)
武庫の浦を漕ぎ廻る小舟が、粟島を背にして進んでいく。
あの小舟がうらやましい。
山部赤人は西に進み、すれ違った武庫の浦を漕ぎまわる小舟は粟島(未詳、淡路島との説あり)を背にして進む。
つまり都の方面に向かっていくのが、うらやましいと詠う。
旅中の山辺赤人氏は、都への望郷の思いが浮かんだのだろうか。
都に待つ愛しい人の顔でも浮かんだのだろうか。
旅に出るからこそ、望郷の思い、残して来た人への想いはつのる。