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太宰師大伴卿の、酒を誉めし歌(7)
あな醜 賢しらすと 酒飲まぬ 人をよく見ば 猿をにかも似る
(巻3-314)
なんとも見苦しい。
見下したような顔をして酒を飲まない人を、よくよく見ると、まるで猿に見えて来る。
酒を飲んでいる最中に、シラフの人に「飲みませんよ、あなたたちとは」と、見下したかのように言われたのだろうか。
それが気に入らなくて、じろじろ見かえして、猿のように見えると言い返した。
赤い顔をしているのは、酔っ払いの方だけれど、そんな理屈は酔っ払いには通用しない。
落語か漫才のような歌と思う。
尚、浅知恵の人を「猿のようだ」と表現する例が、古代中国の詩文には多く見られるとか。
ただ、この歌の場合は、そんな真面目な理屈は無関係。
「一緒には飲まない」と言われた、意趣返しのような歌なのだから。