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太宰師大伴卿の、酒を誉めし歌(6)
なかなかと 人にあらずは 酒壺に なりにてしかも 酒に染みなむ
(巻3-343)
どうでもいい人間でいるよりは、いっそのこと酒壺になってしまいたい。
そうすれば酒がもっと身体に染めこむだろうから。
※三国時代の呉の大夫鄭泉が酒好きがこうじて、「自分が死んだら、その屍を窯場の側に埋めて欲しい。そうすればやがては、陶土になって酒壺にしてくれるだろう」と遺言した故事に基づく。
酔った歌のようで、しっかりと故事に結び付いている。
ただの酔っぱらいでは、この歌は詠めない。
しかし、人でいるより、酒壺になってまでも、酒に染みたい。
あきれるほどの、酒好き、この歌も楽しい。