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筑波山に登りて月を詠みし歌一首
筑波山に登りて月を詠みし歌一首
天の原 雲なき夕に ぬばたまの 夜渡る月の 入らまく惜しも
(巻9-1712)
天空に何も雲がない、こんな素晴らしい夜に、月が夜空を渡り、沈んでしまうのが実に惜しまれるのです。
雄大にして広大な筑波山の天空は、今夜は何も雲が見えない。
見えるのは、その夜空を渡る月だけ。
できれば、いつまでも見ていたいほどの美しさ。
しかし、見る人のそんな願いはかなわず、惜しいけれど月は沈んでしまう。
作者は未詳となっているけれど、人麻呂歌集(人麻呂以外の人の作も入る)の歌。
詠まれた世界が、実に雄大。
さすが人麻呂、あるいは人麻呂が選んだ歌と思う。




