舎人皇子に献りし歌二首
妹が手を 取りて引きよじ ふさ手折り 我がかざすべく 花咲けるかも
(巻9-1683)
春山は 散り過ぎぬとも 三輪山は いまだふふぬり 君待ちかてに
(巻9-1684)
その手を取り引き寄せて見ると、たっぷりの枝を折ってかざしにできるほどに、その花は盛りに咲き誇っています。
春山は、すでに散り過ぎてしまいましたが、三輪山だけは、まだ蕾のままなのです。それは貴方をずっと待ちかねていたのですから。
おそらく宴会時の応答歌。
まず、盛りに咲く花は、豊満な女性のたとえ。
男は、引き寄せ、抱き寄せて、自分と共寝しようと、誘いをかけようとする。
しかし、女は、春山はすでに散って(つまり貴方に興味はない、他に夫がいる暗示か)、残っているのは三輪山の蕾(これは反語。実は人が近づけない畏れるべき対象、だから恋愛対象そのものでない)。
君待ちかてには、強烈な皮肉か。
程度の悪い戯言をするような貴方は、三輪山の神に懲らしめてもらいたい、神はお待ちかねですよ、そんな意味だろうか。




