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神岳に登りて山部宿祢赤人の作りし歌(2)
明日香川 川淀去らず 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに
(巻3-325)
明日香川に立つ霧が川淀を去らないように、私の恋心はすぐに消え去ってしまうようなものではない。
山部赤人は平城京あるいは藤原京から、古都明日香を慕って出向いてきて神岳にのぼり、古都への想いを詠んだ。
恋心は、天武、持統、敬愛する人麻呂時代の古都への想い、もしかして慣れ親しんだ妻がいたのかもしれない。
古都への想い、かつて暮らした地への想いは、そんなに簡単には消え去らない。
新都が便利であるとか、そこで暮らさなくてはならないとか、新しい人間関係が生まれたとしても、人間の心は、杓子定規には出来ていないのだから。




