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流らふる
誉謝女王の作りし歌
流らふる われ吹く 風の寒き夜に わが背の君は ひとりか寝らむ
(巻1-59)
寒くて冷たい風が、家で待つ私に吹きつけて来る
こんな寒い夜に 私の愛する貴方は 一人で寝ているのでしょうか
現代のように、しっかりとした暖房設備もない時代。
寒くて冷たい風は、家で待つ女性には、肌感覚として、かなり辛い。
その寒い夜に、私の愛する人は 一人で寝ているのでしょうかと 寂しさや不安を詠む。
愛する人は旅なのか、あるいは他の女性のところなのか。
妻問い婚の時代、訪れがなければ、妻も一人寝になるけれど。
自分自身の肌感覚の寒さ、冷たさに、夫への不安も含めた辛さ。
やはり、男と女は、肌を接して寒さをしのぐ。
これが原点なのかもしれない。