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高市連黒人の羇旅の歌(2)
桜田に 鶴鳴き渡る 年魚市潟 潮干にけらし 鶴鳴き渡る
(巻3-271)
桜田に向かって、鶴が鳴きながら渡っていく。
年魚市潟は、潮が引いてしまったのだろう。
鶴が鳴きながら渡っていく。
桜田は、名古屋市熱田区及びその南部一帯。
鶴が餌を求めて、鳴き渡る声を聞き、年魚市潟の潮干を推測したようだ。
旅の途中、黒人は、おそらく年魚市潟の干潟を渡ろうとして潮の引くのを待っていたのではないのだろうか。
その合図として、餌を求めて移動する鶴の声を、年魚市潟を渡るための道案内とした。
鶴鳴き渡るを、二度繰り返しているのは、潮が引いて、ようやく年魚市潟を渡ることができる、うれしさと、安心感なのだろうか。
現代人では、考えもしない旅路の心理なのだと思う。




