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長屋王の故郷の歌
長屋王の故郷の歌一首
わが背子が 古家の里の 明日香には 千鳥鳴くなり 妻待ちかねて
(巻3-268)
あなたが引っ越してしまって、古家だけが残っている明日香の里では、しきりに千鳥が鳴いているのですよ。
あなたの妻も、あなたが来るのを、待ちかねているのでしょう。
様々な解釈がある歌。
明日香の宮(故郷)から、藤原宮に転居した時に、作られた歌との左注がある。
「わが背子」を長屋王の友人と捉える解釈が基本。
鳴いているのは、千鳥だけではなく、置き去りにされた妻が泣いていると捉えたほうがわかりやすい。
いずれにせよ、遷都により、顧みられなくなった旧宅、置き去りにされた妻の寂しさを詠んだのだと思う。
遷都に際して、妻だけでも連れて行けばと思うのは、現代人の感覚。
古代では、通い婚。
なかなか、連れて行けないことの理解が必要となる。