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わが背子は
当麻真人麻呂の妻の作りし歌
わが背子は いづくいくらむ 沖つ藻の 名張の山を 今日か超ゆらむ
(巻1ー43)
当麻真人麻呂の妻が作った歌
私の夫は、今どのあたりを歩いているのでしょうか。
名張の山を今日ぐらいに、超えたのでしょうか。
持統天皇6年(691)に、伊勢行幸が行われた時に、従った官人の夫の旅路を思いやる妻の歌。
※名張:畿内東限の地。宵に逢って、翌朝は恥ずかしくて「なばる(隠れる)」という意味もある。
※沖つ藻:名張の枕詞。藻に「なびく」という意味もある。
天皇の行幸に従うと行く夫、家で待つだけの妻は、寂しく不安。
しっかりやっているのだろうか、体調はどうだろうか・・・
同じく行幸に従事した女性たちに、心を移したりしないだろうか。(名張、沖つ藻に意味を込めたか?)
さて、この愛する人を送り出し、帰りを待つだけの人の複雑な想い、どんな時代でも変わらない。
単純にして、素朴な歌に思うけれど、それだけではない。