1241/1385
帰雁を見し歌二首
帰雁を見し歌二首
燕来る 時になりぬと 雁がねは 国偲ひつつ 雲隠ろ鳴く
(巻19-4144)
春まけて かく帰るとも 秋風に もみぢの山を 越え来ざらめや
(巻19-4145)
燕が来る時になったと、雁がねは、これから帰る故郷の国を思いながら、雲に隠れ鳴き渡って行く。
春になり、このように帰って行ったとしても、秋風が吹けば、紅葉に色づく山を、越えて来ないことなどはないのに。
春になれば、燕と交替で、雁は北国(故郷)に帰って行く。
故郷を偲びながら帰って行ったとしても、秋の紅葉の時期には、戻って来るのに。
そんな自然のサイクルを詠む。
家持の本心は、故郷の奈良を偲ぶ意味で、詠んだと思う。
二首目に、なかなか戻れない、もどかしさを詠んだのではないか、と思う。




