結界
ようやく四千字を越えました。(笑)
やっと動き始めた…といった感じですかね
「気にするな」
「…?」
弦には、三浦が何を言っているのか理解できなかった。
「さっきのオネエサンなら、まだ成仏してないから、そのうち出てくるだろ」
三浦の後ろから聞こえた声に、弦は目をしばたかせた。
「これ、オレの叔父。でもって、ここの家主」
「まだ35才でサルの叔父の三浦尊。タケル様か兄貴と呼んでくれたまえ」
「腐れおジジぃ様、他人の前でサルって呼ぶなって言ってんだろ」
「サトルなんだからサルでいいだろ」
「だったら悟って呼べよ」
「サトちゃん、4才から変わってないねぇ~」
「そう言うおジジぃ様は老けすぎだろ」
「で?彼女の名前は?」
「あ…、忘れた」
タケルは、弦とローテーブルを挟んだ一人がけのソファーにふんぞり返った。
サトルは彼女が座る三人がけのソファーに並んだ。
「オマエ、名前何だっけ?」
「ユヅ。枚方弦…あれ?」
答えてユヅは違和感を覚えた。
「枚方って、ひらパーの枚方?」
タケルは電子タバコを口にした。
「ひらパー?」
眉間を寄せるサトルは、長い手を伸ばし、タケルの口から電子タバコをひったくった。
「うわぁ~、知らないのかよ!?関西で初めて仮面ライダーショーやったところだぞ」
「?」
「気にするな。ジジぃの戯れ言だ」
小首を傾げるユヅの前に、サトルは缶コーヒーを置いた。
「ダメだよサトちゃん、本当のこと教えてあげなきゃ」
「いきなり過ぎだろ」
「そのために、俺んとこまで連れてきたんだろ?」
「まぁ…」
ふたりの三浦のやり取りに、ユヅは何となく居ずまいを正す。
突然消えた女性
冷房設備もないのに暑くない部屋
ふたりの気配…
「さっきの女は、昨日の新聞に載ってた人だと思う」
タケルは電子タバコの代わりに、缶コーヒーで一息ついた。
「自宅の浴室で自殺したらしい」
「自殺!?そんな…」
「鉈で左腕を切断した、って書いてた」
「…まさか」
ユヅは公園での笑顔を思い出した。最後まで話を聞く前に、三浦悟が乱入してきた。そして、ふたり揃ってここへ着いてきた。
「ユヅちゃんに触れてるときだけ、サトルにも見えていた。だろ?」
「あぁ。池の前でこいつが突っ立てて、誰もいないとこ見て顔面蒼白だった」
「誰もいない?」
ユヅは間違いなく、彼女の話を聞いた。
「ま、すぐに見えたけど」
サトルは飲みかけの炭酸水で口を湿らせた。
「ヤバい空気だったから、ここに直行したんだ」
「それが買い物してこなかった言い訳ってことだね」
「買い物はこれから行く」
「さすが、サトルはむかしっから優しくていい子だ」
タケルは甥っ子が可愛くて仕方がない、といった笑みを浮かべ、電子タバコを取り返した。
「この部屋はある種の結界になってる」
「結界…」
電子タバコをくわえるタケルを、ユヅは凝視した。
「わかりやすく言えば、怨念っていうか、強い気持ちを残して死んだ輩とかが、存在できない空間」
タケルはタバコをくわえているだけで、ふかす気がないようだ。
「あの、つまり、それって…」
「俺んとこ、そういう家業だから」
タバコの尖端がサトルを指す。
「オレは違うぞ」
「実家継がなくても、そういう血筋なんだよ」
サトルは背もたれに体を預け、天井を仰いだ。
「三浦くん、幽霊…とか見えるの?」
「あ?…初めてまともに見た」
「初めて?」
「オレ、科学的に証明できないことは、信じたくないんだ」
「だからって、向こうの工科大辞めてこっちの大学に入るとは思わなかったな」
「…成り行き」
「そういうことにしておいてやる。けど、兄さん未だに泣いてるぞ」
「オレじゃなくても継ぐだろ」
「妹に押しつけるとか、サトルはイヤラシイよな」
「押しつけじゃねーよ」
妹の芙華が学生坊主を親父にプッシュしたんだ。と、サトルは仰け反ったままぼやいた。
「三浦くん、実家は都内のお寺さんなの?」
「サトルでいいよ」
叔父きも三浦だし。
サトルは話す気がないらしい。
「うちはね、谷中ってとこで昔からお寺屋さんなの」
上野動物園から近いんだぞ。とタケルはユヅに笑いかけて、彼女の缶コーヒーを開けてやった。
「というわけだ、サルは買い物してこい」
「どーいうわけだ!サルじゃねーし!」
「俺はユヅちゃんと、縁側でゆっくり語りたいんでね」
有無を言わせないタケルの口調に、サトルは何も言わず立ち上がった。
「エコバック持って行けよ」
「わかってる!」
サトルはユヅをちらりと伺い、足音をたてずに出て行った。
「さて、河岸を変えますか」
軽い物言いとは違い、タケルの目つきは鋭かった。
自殺した人がでてくる話は
もしかして15禁とかじゃないですよね?




