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古びた街
もし、なんでも一つだけ願いが叶うとしたら。
悪魔の願いである。
心底うんざりしながら街を歩いた。
薄汚れたレンガの壁ばかり建つ、あまり裕福ではない街並み。
私はいつもここを歩いていた。
否、いつも歩いていなかった。
歩いたこともなかったが、私はここを歩いたことがあらねばならなかった。
子供が走ってくる。
子供に付いていき、家に入る。子供の両親と出会い、共に食事をする。
しかし今まで私は彼らに会ったことがない。
会ったことがあらねばならなかっただけだ。
一緒にサラダを食べる。
キャベツの一切れですら命の味がして、私は最後まで手掴みで頬張った。
食器は、サラダの入っている皿以外は無かった。
食べ終わると、私はその家を出ようとする。
子供が、私に聞いてきた。
なぜ正義は、いつも正義の味方をしない?
私は心底うんざりして、横に置いといたポテトを頬張った。
それと同時に世界が崩れた。
虚構を除き続ける。