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虚視  作者: uto-pia (translated)
7/15

創られた

私は、見覚えのない場所に立っていた。

どこからともなく突風が吹き荒れる。空が濁っている。空気が痛い。


欠片だ。

欠片を集めろ。

私の、大切な欠片。これがなければ私の大切な、真に大切なものを手に入れることができない。

なぜ大切なのかは覚えていない。宝物だった気もするし、友達だったような気もする。

とにかくそれがバラバラになった。私はそれを集めなければならない。

この世界には全ての欠片が揃っているはずなのだ。



あの子とはそこで出会った。

私より歳の離れた小さな女の子。彼女が私の探す欠片を持っていた。

曰く、彼女は風を操る。私が無くしてしまった欠片、綺麗な欠片を、風を使って興味本意で集めていたという。

欠片集めに協力するよう頼んだ。

彼女は快く了承してくれた。


結果から言うと、欠片は全て集まった。

全部で10個の欠片。

礼を言うと、別にいいと笑ってくれた。

なんの邪心もない純粋な笑顔だった。

そうして集まった欠片は綺麗な水晶へと形を変える。



そこで、私は思い出した。

この水晶は、()()だ。

これを所持していることで、私は現実へ帰れる___


待て。

私は覚えていなかった。

私が帰るべき場所は現実だ。ならば___

ここは何なんだ?



創られた世界だと彼女は応えた。

曰く、私と私の水晶以外は全て作り物なんだと。

風も、空も、大地も、少女ですらも。


帰り方は、分かっていた。

大きな階段を見つけた。有刺鉄線で阻まれた、石レンガ製の上へ続く階段。

その有刺鉄線が取り除かれていた。

ここから帰れる。私はそんな確信をした。



それから私は階段を登り始めた。

階段は恐ろしいほど長く、終わりが見えない。

否、終わりが見えないんじゃない。私が()()()()()()

パッと後ろを振り返ると、すぐ先程の階段のスタートが見えた。数分ほど駆け足で登ったつもりの階段は、ほとんど上に上がれていなかった。


それから私は、ずっと階段を登り続けた。

私が目指すべき上から、溢れんばかりの光が降り注ぐ。私は、そこへ帰らなければならない。



そして数時間、下手すると一日経ったかもしれない。

私は、遂に階段を登りきった。

階段の咲きには、大きな鉄扉。それを開ければ、私は間違いなく現実へ帰れる。

そして鉄扉へと手を掛けようと


そこで、手を止めた。

その扉を、開けてはならない気がした。

確かにこの先には、現実が待っている。この創られた世界とは違う、私が生きるべき世界だ。

しかし、あの少女はどうなる?

少女は創られた存在だから、ここから出られないと言っていた。だが彼女が見せた無垢な笑顔が、私は忘れられなかった。

あの子を連れ出して、外へ出たい。そう考えてしまったのだ。


頭の中では、無理だと分かっていた。

水槽から出された金魚は息ができず死んでしまう。

だが私は戻った。ここでずっと過ごすより、少女を置いて外へ出たほうが後悔する気がしたのだ。



教会に、少女はいた。

何故こんな場所に教会があるのかは分からない。

だが少女は一人で、そこに佇んでいた。

寂しそうな視線を外へ向けている。彼女はずっとそうしてきたのだろう。

一人でいる間、何もせず、ずっと遠くを見つめ



私は声をかける。

驚いたように振り返り、声を上げる。

その表情は困惑に溢れていた。

それと、ほんの僅かな希望。


私は、少女に言う。

そして私は___


_________


______


__

半端な終わり。


あの時の少女の澄んだ笑顔。

虚像?


記録。

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