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虚視  作者: uto-pia (translated)
6/15

偽物

100階建てのビルの中にいた。

屋上には行けない。行こうとも思わない。

私は、一番上の階にいた。

だが用があるのは一階なのだ。エレベーターを使って下へ降りる。


エレベーターの造りが非常に粗末だ。

一度1階まで降りだすと、凄まじい速度で落下していく。手すりを持っていなければ、体が宙に浮きそうになる。

エレベーターを使用する度、冷汗が頬を伝った。

着地のとき、体は耐えられるのか分からない。


尤も、今回は大丈夫だったので良しとしよう。

そして私は、一階で皆と合流した。

1階では、立食パーティーが行われていた。

私の知っている沢山の人々が、思い思いに食事を楽しんでいる。


私は腹も空いていないし、誰かと話したくもない。

あぁ、だから私は最上階にいたのだ。


私は再び、エレベーターに乗る。

そして100階のボタンを押す。気付いた。階のボタンは『1と10の倍数』しかなかった。

つまり1、10、20、30···100。


100階に行くまではやはり粗末だった。

私の体に凄まじい重力がかかるのだ。手すりに捕まっていなければ、体が潰されてしまう。


99階も離れているというのに、1階の声が聞こえてくる。

どれだけ騒がしいんだと思いつつ、私は会食が終わるのを待った。



どれくらい経っただろう。

気がつくと、1階からの声は消えていた。

突然止んだので不思議に思う。だが最上階に居続ける理由もないため下へ降りる。


また、あのエレベーターに乗るのか。。そう思った。

だがその時は違った。先程のように粗末には降りていないのだ。

だが、降下する速度は先程と変わっていない。

違和感を覚えつつ、私は1階へ降りる。


1階には、まだ皆がいた。

皆がいたのだが、それは皆ではなかった。


全てが偽物なのだ。

ドッペルゲンガー、ホムンクルス、分身。何の類かは分からない。

だが私には分かった。ここにいる者は、全て偽物だと。


同時に、背筋が凍りつくような感覚に襲われる。

このままだと、私も彼らのようにされてしまう。

私は急いでエレベーターへ戻り、ボタンを連打する。すぐに扉は閉まり、先程の粗末な上昇を始めた。



だが、着いた場所こそが災厄の始点だった。

それを目の当たりにした時、私の世界は終わった。

記憶……

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