無中
ひび割れたコンクリートの床。
その隙間から背の高い雑草が生えた屋外。私は一人ある確信を持つ。
それが分かってしまったら、もはや私に敵は無い。
見渡す限り淀んだ空を、私はゆっくり歩く___
そして、すぐ思い出した。
ここには、何も存在しない。
どうする。
遅かれ早かれ、いつかは消滅する。
次、これを把握できるのは何日後か、何ヶ月後か、何年後か。
今こそがチャンスなのだ。
私はこの機会を無駄にしまいと走り出す。
どこまで走っても、冷たい床は変わらない。汚れた空は変わらない。
しばらく走り続けて、私はハッとした。
間もなく消滅する。
それに気付いた私は、さらに急いで走り___
そこで、疑問が浮かび上がった。
私は、どうして走っているんだ?
直後、世界が崩れていく。
否、私が崩れていく。
今まで、バラバラになった私が勘違いしていたのだ。
同時に、私はある仮定に辿り着く。
この世界がもし、間違いではないとしたら。
今まで見てきた全ての世界が、真実なのだとしたら。
だとしたら···私は、何なのだろう。
崩れ行く意識の中、私は手を伸ばす。
淀んだ空に伸ばされた腕は、しかし空より穢れていた。
まあ、いい。