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虚視  作者: uto-pia (translated)
2/15

二人の少女

そこは、ある会場だった。

私は、そこを知らなかった。だが、記憶には残っているように思えた。

知っていなければならない場所に思えた。


「ねえ、######?」


横から声がする。この声も知らないものだったが、聞き覚えがあるように思えた。

知っていなければならない声だった。


「今日、ずっとあの子と話してたけど···」

そう言って、少し先の少女を指差す。話したことは無かったが、記憶には残っているように感じる。


無意識に、違う、と首を振る。

「そっか。···ねえ、######?」

彼女が、私の顔を覗き込む。

だが、

「···や、やっぱ何でもない。ごめんね?」

そう言って、出口から帰ってしまう。


私も同じように、出口から外へ出る。

そして、何気なく手元の携帯電話を見た。


彼女からのメッセージに目を通し、


そこで、やっと思い出した。



彼女はもう、この世に存在しない。



哀しかった。

彼女のことは、既に記憶に無かった。だが、哀しくて仕方なかった。

涙が溢れそうになり、手で目元を拭う。


そして、思い出した。


この世界は、虚像だということ。

この記憶も、虚像だということ。

私と私を取り囲む全ての存在が、虚像だということ。


目を醒ます時間だった。

さっきまで現実だと信じ込んでいた世界が、音を立てて崩れる。私の記憶も、同じように。

だが、私は敢えて手を伸ばす。

記憶の断片を何とか掴み取る。

この虚像を、一行でも長く綴るために。



目が醒めた時、私は涙を流していた。

もっと、もっと。

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