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制裁
人の遺体をトイレに流した。
相手は、私の想い人へ危害を加えた男だった。
私には好きな人がいる。この人でなければならないというほどではない。ただ、互いに何となく、この人と居たいと思う仲だった。
「大丈夫、今回もきっと勝てるよ」
私のことを思ってか、彼女はそう笑った。
相手を手に掛けたのは、戦いの大前提を破ったからだった。
こっちがやらなければ、想い人がやられていた。手に掛けたこと自体に後悔はない。だが、死体を肩に担いでから、なぜ自分はこんな面倒事を産み出したんだろうと激しく後悔した。
何度も水を流すが、死体が流れていく様子はない。
引っ掛かっているのだろうか。だが死体を、それも便器から引きずり出すことは、あまりにも汚い故に実行したくない。
私の反抗を見ていた者は皆、何事もなかったかのように戦いの準備をしている。
覚えているのは、それを目の前にしている私だけだ。
忘れたくても忘れられない。
対処するべきだがしたくない。
しかし見つかるのは怖い。
どうするべきか分からず、流し続けた水と混ざるように、私は虚影へと落ちた。