14/15
焦燥
皿にポツンと置かれた食パンを口に含む。
現在の時刻は午前九時半。本来の出発時間をとうに過ぎている。私は私に失望していた。
先に車で待っていると言われ、既に三十分が経過している。彼らはもう、呆れて出発してしまっただろうか。
横に置いた二袋の粉薬を飲み込む頃には、時計の針は十時を越えていた。
本来なら、時間のためなら朝食も薬も置いていく。しかし今の私は虚像に縛られ、無理にでも行動を起こすしかできなかった。
必要な書類を鞄に詰めながら、溜め息を吐く。
私は何をしているのだろう。これだけ人に迷惑をかけながら、現実では何一つ事を成せていない。
人を巻き込みながら、怠惰に生きる毎日。これまでも、これからも過ごすであろう自分の人生が、私にとって苦痛でしかなかった。
鍋の火を止め、時刻を確認する。まだ十時からそこまで経過していない。
準備を終えた私は、ようやく外へ出る。
そして、そこが虚像の終点だった。私は虚像に気付かず、そのまま暗い闇へと微睡んだ。