表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚視  作者: uto-pia (translated)
11/15

 恐怖と怒り。当時の心境は、この二つの感情抜きには話せないだろう。

 私は家にいたと思う。思うというのは、実際それが本当に私の家だったかは確証が持てないからだ。一度も見たことがないはずの場所だったが、しかし、私はその間取りをしっかりと覚えていた。どこがリビングでどこが寝室なのか。どこが玄関で、その扉を開けるとどんな光景が広がっているのか。ここにはどんな人が住んでいるのか。周りに住むのは、生息する動物は……その全てが、まるで当たり前かのように頭の中にあった。


 そんな私の家に、大男が何人か押し掛けてきた。

 私は隠れるように部屋を移動し、代わりに私の親が玄関から出た。今思えば、はたしてそれが本当に私の親だったのかは分からない。そもそも私に親など存在しないのだから、ここにいた親は偽物なのだろう。しかし当時の私は、これが本物だと信じて疑わなかった。


 しばらく隠れていると、親と男の怒声が家中に響き渡った。それが私に関する話題なのか、そうではなかったのかは覚えていない。ただその内容に、酷く腹が立ったことだけは覚えている。

 やがて騒ぎを聞き付けた住民、そして警察までもが家に集まりだした。耳を澄ましていると、どうやら大男達は私たちに文句を言っているらしい。ハッキリとしたことは覚えていないが、支離滅裂な内容だったのは覚えている。


 それからしばらく経つと、大男達が帰っていくのが見えた。見えたというより聞こえたのだろうか。なぜ部屋に閉じこもって玄関を見ていなかったのに、大男達が帰っていくのが確認できたのかは分からない。ただ、その時の私は確信していた。

 まったく、態度だけ大きな小心者が。心の中でそう悪態をつくと、私も部屋の隅から影へと微睡んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ