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獄中少女と雇われ暗殺者  作者: 零+α
7/10

第7夜「Go to the dark」


 夜が明けた。昨日のことがまだ嘘のように感じる。両親が殺され、私は牢屋へ。そして暗殺者が来て、共に逃げ出した。

 生きている。それだけは事実だ。紛れもない事実で、現実だ。ゆっくりと昇る太陽がどこか恨めしい。


「今日はどこまで逃げるん?」


「行けるところまで、だ」


 具体的な答えは返ってこない。元々、期待もしていない。期待するだけ無駄だ。

 今日もまた一歩を踏み出す。舞台は国中の鬼ごっこ。見つかったら、逃げ切らなければならない。捕まれば、終わり。


「安全なところが見つかればええなぁ」


「見つけてみせる」


 暗殺者が手を差し出した。私はそれを握る。温かい体温が二人とも生きているのだ、と安心させる。それと同時に少し緊張がほぐれて睡魔が襲ってきた。

 ああ、でも、追手はどこにいるのかわからない。もしかしたら近くにいるかもしれないし、いないかもしれない。


 寝てはいられない。眠気を振り払うように首を振った。手を繋いでいない方の手で頬を叩く。

 私たちは1歩を踏み出した。本当は、あのときに全てが終わっていたら楽だったのかもしれないな。お父さんと、お母さんと、一緒に逝けていたら。いや、暗殺者が来たときでも構わなかった。


 でも。ここまで来たんだ。私たちはもう戻れない。進んでいくしかない。

 私は暗殺者の顔を見て、少しだけ微笑んだ。ちゃんと笑えていた?……だなんて、思い出して笑いあえる日が来ればいいな、なんて思いながら。

 まだ少しだけ眠いけれど、頭はスッキリした気がする。


「今日も、明日も逃げ続けよう。それで、見つけるんや。理想の場所を」


 暗殺者は多分、微笑んだ。あれはきっと笑顔なのだろう。凝り固まった顔の筋肉がうまく解れてくれなくてよくわからない顔になっているけど。

 笑うことぐらい、なんてこともないことだけど、小さな幸せを積み重ねていけばいい。きっとその先に未来は存在するのだから。

 ああ、でも、この世界は理不尽だ。不都合なことしか起こらない。


「走れッ!!」


 暗殺者が私の背中をぐいっと押した。そのままの勢いで私は駆け出す。銃声。走りながら振り返って私は言葉を無くした。


「振り返るな! 止まるな、走れッ!!」


 暗殺者の腕から血が出ていた。撃たれたのだろう。名前。そういや、知らないのだ。私は彼の名前を呼ぶことが出来ない。


 「あああああ」と悲鳴をあげて逃げることしかできなかった。それからどれだけ走ったのかは覚えていないけれど暗い路地裏で、なるべく静かに泣いていた。

 辺りはもう暗い。牢獄から逃げ出したあの日、満月だった月がやや欠け始めていた。

 きっと敵は陰湿だ。背中を向けて走る私を殺すことは出来ただろう。

 暗殺者はどうなった?ここはどこ?独りだ。


私には何もわからない。


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