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六話 冒険者ギルド

 すれ違う人に冒険者ギルドの場所を何度か聞くことによって一つの建物の前にやって来た。剣と槍が交差するこの看板が冒険者ギルドの目印らしい。


「これが冒険者ギルドか……。商業者ギルドに比べると汚いな」


 ある程度予想していたが、やはり建物が汚かった。木造の壁にはいくつもの修理した跡が残っていて見すぼらしさが目立つ。


 うーむ。王都の商業ギルドにはシミ一つ無かったけど、これはひどいな。ここまでボロくなってるなら、いっそのこと建て直した方がいいと思うんだけど。冒険者ギルドは収入が少ないのかな?


「ネロどうしたのです? 早く行くのです」


「ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事してて……」



 まだ日が高いうちはクエスト中の冒険者が多いのか、中にいる人は数えるほどしかいない。

 酒場にいるその僅かな人もこちらをちらりと見るとすぐに興味を失ったように酒を飲み始めた。


 それでも面倒ごとを避けるため、冒険者と目を合わせないよう受付まで進む。



「あら、あなた達初めて見る顔ね。冒険者登録に来たの?」


 俺たちの用件を一発で当たるとはなかなか優秀じゃないか。


「はい。今すぐ登録できますか?」


「できるけど、勿体無いわね〜」


「何がです?」


 勿体無いとは何のことだろう? 何か損することでもしたっけ?


「顔よ、顔。そんなイケメンなのに冒険者やるなんて勿体無いわ。金が欲しければホストでもやればすぐに儲かるでしょうに。冗談抜きでホストにならない? なったら私毎日通うわよ?」


 なんだ? 逆ナンか? それとも俺が冒険者に向いてないって言いたいのか?

 どっちにせよ登録させて貰うことに変わりはないんだけどさ。


「ちょっとそれは無理ですね。俺たちはいろんな国を回りたいので冒険者の仕事がいいと思って登録に来たわけですから」


「そう。残念だわ………。貴方ならベスタのナンバーワンホストになれそうなのに……。で、冒険者登録だったわね。十五歳にならないと登録できないから、その獣人の子は無理そうね」


 本当に残念なそうな顔をしながらさらりと重要なことを言ってくる。


 そうだった! 登録できるのは十五歳からだったんだ!


 あれ?待てよ。ココって数百年間袋の中にいたんだよな? なら数百歳ってことで通用するんじゃないか?


「あー、実はこの子こう見えても十五歳超えてるんですよ。だから登録させて貰えませんか?」


「嘘はダメよ? どう見たって彼女まだ十歳くらいじゃない。冒険者は危険な仕事だから一定の年齢に達してないと本当に危ないの。だから諦めてちょうだい」


 やっぱ嘘だと思われるよなぁ……。俺もココが数百歳には見えないもの。


「本当ですって、魔道具で調べてもらったらすぐに分かりますから」


「う〜ん、わざわざ魔道具で調べなくても分かるんだけどなぁ……」


 ぶつぶつ言いながらもちゃんと魔道具を出してくれる受付嬢。


「じゃあ獣人ちゃん、この石板の上に手を置いてもらえる? 十五歳以上なら石板が光りだすから」


「手を置くのですか? 分かったのです!」


 ちゃんと光ってくれるだろうな? これで光らなかったら新たに金を稼ぐ方法を考えないと……。


 しかし俺の心配をよそに、ココが手を置くとちゃんと光りだしてくれた。


「おっし! ほらやっぱ光りましたよ! これでココも登録していいんですよね!」


「あれ〜? 私目がおかしくなっちゃったのかな? もう一回手を置いてもらえる?」


 言われた通りにココはもう一度手を置くがやはり石板は光りだす。


「ちょっと待って! 本当にこんな小さな子を登録するの!? さすがにマズイわよ! ギルドマスター呼んでくるから少し待ってて!」


 そう言って奥へ消えていった。


 ちゃんと十五歳以上って分かったんだから登録してくれればいいのに……。


 どうやらすぐに話は通ったようで、数分で戻ってきた。


「ギルドマスターが呼んでいるから私についてきて」


 受付嬢の後を追って奥へと歩いていくと、ある扉の前で止まった。


「メリーです。例の二人を連れて来ました失礼します」


 受付嬢、もといメリーさんに続いて部屋に入る。部屋の奥には眼鏡をかけた、線の細い男が座っていた。


「ご苦労様。メリー君は下がっていいよ」


 メリーさんが出ていくのを確認して、男は俺たちに話しかけてきた。


「ベスタの冒険者ギルドにようこそって言えばいいかな? 僕の名前はベンジャミン。ここのギルドマスターをやらせてもらっている。冒険者になるようだったらこれからよろしくね」


 ベンジャミンと言うのか。観賞用植物にありそうな名前だな。


「俺はネロ、そしてこっちがココです。二人とも十五歳を超えているのですぐ冒険者登録をしてほしいです」


「何をそんなに焦っているんだい?ああ衛兵に銀貨五枚取られたのか。そりゃあ急ぐよね。ほら、今日中には冒険者登録できないかもしれないから銀貨五枚あげるよ」


 ベンジャミンはポケットから無造作に銀貨を取り出し投げてきた。


「いいんですか? 貰っときますよ?」


「どうぞ、どうぞ。それでココ君の件のことなんだけどね。僕にもココ君が十五歳を超えているとは到底思えないんだよ。でも実際に石板が光った。これは紛れも無い事実だ。

ところで冒険者の敵は魔物だけじゃないって分かるかな? 冒険者はいつも魔物と戦ってるだけじゃないんだ。冒険者同士で争いがよく起きるんだよ。そして弱い冒険者は強い冒険者に狙われて食い物にされる。しかもココ君は女で獣人だ。きっと多くの冒険者から狙われることになるだろう。そんな時に自衛できる力がないと大変危険だ。

ここまで言えば分かってもらえたかな? 今からこっちが用意した冒険者と訓練場で少し手合わせしてもらいたい。ある程度の力を持っていると僕が判断できたら登録させてあげようじゃないか」


 なるほど、確かにその通りだ。しかもこっちはカトレアとアテネにも狙われているわけだしな。ここはココに一発どでかい魔法でも打ってもらって実力を示しておこうか。



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