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二話 姫様?


 ルナのおじいさんが住むルースという街が見えてきた。


 道中は平和なもので、盗賊はおろか魔物の一匹さえ現れることはなかった。

 おかげで予定よりも一日早く着くことができた。

 馬車での長旅は色々と疲れるので早く着けるのはありがたい。何が疲れるか具体的に言うとケツとかケツとかケツがね!


 てな訳で、そろそろケツが限界なのでおじいさんの家に早く行きたいのだが、そうは問屋がおろさないようだ。


 街の入り口の門に武装した男たちが集まっているのだ。

 物々しい雰囲気を発し、まるで今から戦争に行くのかと錯覚しそうになる。


 俺たちが乗る馬車が近づくと、男たちはこちらに気づき、場に緊張が走る。


 馬車は彼らから百メートルほど距離を置いて止まる。

 これ以上近づいて無闇に彼らを刺激したくないからだ。


「なあルースはいつもこんな感じなのか?」


 あり得ないと思いつつも隣に座るルナに尋ねる。


「はあ? そんなわけないじゃない! お祖父様が実質的治めてるのよ! 平和に決まってるでしょ!」


「いやでも実際あれだし……」


 そう言いながら集団に目を向ける。


 彼らは円陣を組んで槍を高らかに掲げている。しまいには奇声を発しながら謎の演舞を始めた。

 確実にやばいやつらだ。さすがはルナのおじいさんが治めている街だけはある。


 これにはルナも反論できないのかくちびるを噛みしめる。


「ならあんたがあいつらから聞いてきなさいよ!」


「え、ちょっ?!」


 そして俺は反論する間も無く馬車から突き落とされた。

 解せぬ。


 だがここで立ち往生していても拉致があかないのは事実。

 嫌々ながらも男たちに話しかける。


「すいませーん! そこで何をやっているんですかー! 俺たちここを通りたいのですが!」


「ああっ? 何をやっているかだって?! 見て分かんねぇのか! 姫の安全祈願の舞を踊っていたんだよ! そしてこれから周辺の魔物を間引きに行くところだ!」


 リーダーと思しき立派な体格のおっさんが返事をしてくれた。


 うん、返事をくれたのはいい。それよりも姫と言ったか? こんな田舎町に姫様が来ると言うのか?

 とある国の姫に対し嫌な思い出がある俺はそういう身分の人と関わりになりたくない!


「姫ってこの国の姫ですか!?」


 せめて元の国の姫様だけは勘弁してくれと祈りながら尋ねる。


「ああっ?! ちげーよ! 姫様は俺たちのボスのお孫さんだよ! 俺たちが勝手に呼んでるだけだよ! そんくらい言わなくても分かるだろ!」


 いや、わからねーよ! と口には出さず、何となく自体が把握できたので感謝の言葉を告げる。


「わかるわけねぇーだろ!? ぶっ殺すぞ?!」


「あっ?! やんのかテメー?!」


 どうやら俺の脳と口は連動してないようでつい本心が漏れてしまった。


 相手が槍を構えるのが見えて俺が焦っていると背後の馬車からうちのお姫様が飛び出てきた。


「バカッ! なんで煽ってんのよ! 早く謝りなさい!」


 同時に頭を叩かれる。

 かなり痛かった。INTが五十くらい下がったかもしれない。……そんなステータスないけども。


 そんなやり取りをしているとそれを見ていたおっさんに反応があった。


「ええぇぇぇぇっ!!! 姫様じゃないですか! なんでそんなところに!」


 やっぱりなー、思った通りこいつらのボスはルナのおじいさんだった。わかっていたさ……。

 そして俺たちは今からそのおじいさんの家に向かうわけさ……。ははは、笑うがいいさ。


 俺が現実を直視できないでいる間に集団が目の前にまで近づいていた。


「その気品溢れるうさ耳! この世の全てを憎んでいるのかと思わすふてぶてしい口! そして見るものを魅了するくれないの眼! 間違いない! 我らが姫様だぁ!」


「「「「うぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」


 奴らは褒めてるのだが貶してるのか分からないことを言って喜んでいた。


 一方その姫様は顔を真っ赤にして下を向いていたが。

 怒っているのではなく恥ずかしがっているご様子。


 なかなか珍しいものが見ることができた。と内心ニヤついていると、門の向こうから大きな亀に乗った兎族のおじいさんが現れた。


 間違いない。ルナのおじいさんだ。


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