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二話 なぜ大切な物はベッドの下に隠したくなるのだろうか

「ネロさん起きて下さい。朝ですよー」


 次の日俺が寝ているとカトレアの声が聞こえてきた。


 だが俺はまだこの寝心地のいいベッドから出る気は無い。心苦しいが退出願おう。


「あぁカトレア大好きだよ。だからあと一時間寝かせて……」


「大好き!? 大好きなら仕方ないですね! まだ寝てていいですよ!」


 よしチョロい。大好きと言われたことに浮かれたカトレアはスキップで部屋を出ていってくれた。


 これでまだ寝れるぞ。



 一時間後、再びカトレアがやって来た。


「そろそろ起きて欲しいかな〜って思ったり?」


 控えめに声をかけてくるので申し訳なく思うがやはり俺はまだ寝ていたい。また適当なこと言って帰ってもらおう。


「あぁカトレア愛しているよ。だからあと2時間寝かせて……」


「愛してるなら仕方ないですね! いいですよ! 寝ててください!」


 喜んで帰っていった。また寝れるのは嬉しいけど少しチョロすぎませんかね?



 二時間経つと三度カトレアがやって来た。


「ネロさんもう起きてください……」


 あとほんの少し寝足りないんだよ! わかるだろ、この気持ち? ……また追い返すか。


「あぁカトレア、君をこの星の誰よりもあいs」


「――いい加減に『起きて下さい』!」


 カトレアの言葉に反応した首輪が首を絞めてきた。ぐっ、ぐるじい。


「ゲェホ、ゲェホ!いきなりなんなんだよ! なんか恨みでもあるのか?!」


「今まで告白してくれなかった恨みもありますけど、もうお昼ですよ! いつまで寝てるんですか!」


 外を見ると確かに太陽が真南にある。……寝すぎたか?


「ええーと……。おはよう?」


おそ(・・)ようございます! それより昨日の件はいったいどういうことですか!」


 腰に手を当てぷんぷん怒っている。


 けど昨日の件と言われても心当たりがないんだけどな。


「なんのことを言っているの?」


「とぼけないでください! ネロさんが宝物庫を漁ったのでしょう!?」


 ん? 寝る直前に騎士たちがそんなことを言っていたような。


「宝物庫って盗賊が漁ったんじゃないの?」


「始めはそう思われていたんですけど、死の呪いをかけた鎖で封印していた魔導書まで無くなっていたんです。あの鎖を触れた瞬間死ぬはずなのに、死体が無いことから魔力無しの犯行だと推理できます」


 魔力無しとは読んで字のごとく魔力を持たない人のことだ。数万人に一人が魔力無しで産まれ、一切の魔法が使えないせいで酷い差別を受けることとなる。ちなみに俺も魔力無しで、よくいろいろな人から馬鹿にされてきた。


「ちなみにその魔導書には何が書かれているの?」


「それが分からないのです……。なんでも建国当初から禁書扱いされていて、ここ数千年読んだ人はいないらしいですから。あっ、でも数百年前、狼人族であの本を調べていた者がいたそうですよ? まあ調べている最中に次元の狭間に消えたとかで消息を絶っているんですけどね……」


 なんちゅう恐ろしい本を深淵さんに渡してしまったんだ……。昨日袋の中で嬌声を上げてたけどクトゥルフの触手的な何かにヤられてるんじゃないだろうな?


「と言うわけで宝物庫にあった他の物と一緒に魔導書を返してください」


「あー、誠に言いにくいんだけど、その魔導書、この袋の中の深淵さんに上げちゃったんだよねー。ははは……」


「は? ネロさん、仮にも私が主人なんですよ? 主人に嘘を付くのは良くないですよ? まだ私が笑っているうちに本当のことを言ってください」


 顔は笑ってるけどそれ絶対笑ってないよね?! 握りこぶしがプルプル震えてるし、こめかみに怒りマークが出ているもの!


「本当のことなんです! 許してください!」


「はぁー、もういいです。それでその深淵さんとやらとお話をしたいので袋を貸してください」


 大丈夫かな? もうだいぶ時間が経ってるしまだあの声をあげてるとか無いよね?


「何を渋ってるんですか。早く袋を貸してください」


 袋が奪いとられ開かれてしまった。


「やっ、ダメッ……。そこは、あンッ」


 そしてすぐに閉じられる。


「ネロさんこれはどういうことですか?私というものがありながら袋の中に他の女を入れとくなんて……。袋をすぐに渡さなかったのはこういうことですか……。なるほど……。ふふっ、ふふふふふ、ふふふふふふふ……」


 狂ったように笑いながら近づいてくる。

 こえー、超怖いよ。幽霊も真っ青になって逃げ出すレベルで怖いよ。いつの間にか手錠と猿ぐつわまで持ってるよ。何されるの?! 俺捕まったら何されちゃうの?!


「違うんだ! あれは事故なんだ! 俺はカトレアだけを愛している! お前だけしか見てないよ!」


「私だけを見ているなら他の人はいらないですよね? なら二人で誰も来ない場所で永遠に過ごしましょう?」


 ヒィッ! マジだよ! この人マジだよ! いつもならさっきの言葉で元に戻るはずなのに戻らないよ!


「ネロさんこっち向いてください。私の目を『見てください』」


 グエッ!首輪で無理やり向かせるなんて……。


 あれ? 身体に力が入らないぞ? これって大ピンチじゃない? さっきカトレアが猿ぐつわとかの道具出したすきに袋を取り戻したけどヤバない?


「ふふふ、今から二人だけの場所に行きましょうね……。セバス」


「はい、ここに」


 いつの間にか現れたセバスさんに王城の下へ下へと運ばれた。


 ここって地下牢ってやつじゃないかな?途中の牢屋に骨があったし。本当に死ぬまで監禁されるの?


 ぐだぐた考えてるうちに黒い鉄の扉の前に連れて来られた。


 屈強な騎士数人がかりで扉が開かれる。


 扉の向こう側は意外なことに、今まで過ごしていた部屋より大きくて清潔だった。ただ壁が真っ赤で目に悪そうだ。


 俺は部屋の中央にあるベッドの上に横たえられた。カトレアが騎士達と話している間に服の下に隠していた例の袋をベッドの下に隠す。


 ひとまずこれで安心かな。すぐカトレアが戻ってきそうだし天井のシミを数えるふりでもしておくか。


 予想通りカトレアはすぐに戻ってきた。


「ふふふ、ネロさんこれからは私と2人だけですよ。でもまずは袋のことを反省してもらうためにこのまま二日間一人でいてもらいましょうか。二日後ネロさんが私をどう求めてくるのか楽しみにしときますね」


 そう言い残すと全員帰っていった。



 ん? これはチャンスなのでは?



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