閑話 ココの奮闘記I
二話構成になりそうです。
「くッ、ネロはいったいどこに連れ去られてしまったのです!」
ベスティア獣国の首都クティノスの大通りで怒りを露わにしている狼人族の少女がいた。
ココである。
ネロが筋肉ダルマに連れ去られたあの日から、ココの心は荒れに荒れていた。
自分がもっと注意していれば……。
自分がすぐに助けにいったならば……。
後悔の念が次々と湧いてくる。
反省しようと思えば飯も食べずに何時間だって反省していられるだろう。
それくらいネロと離ればなれになってしまったことを悔やんでいた。
しかし今すべきことは後悔することでも、反省することでもない。
ネロを助けることだ。
事件の後のココの行動は迅速だった。
馬車の行者をしていたオヤッサンからネロがどこに連れていかれたであろうかを聞き出した。
そしてその日のうちにクティノスへ向けて出発した。
行者はもちろんオヤッサンである。
余談だが、出発前のオヤッサンに、ネロを見捨てたことについての罰を与えたのは言うまでもない。
その恐怖でオヤッサンの髪の毛が黒から白に変わったそうな……。
「あのジジイに、きっとクティノスだろうと言われて来たものの、どうやってネロを探せばいいのです?」
クティノスに着いてはや一週間。
ココは冒険者ギルドを使って情報収集を行っていたが、なんの進展もみられなかった。
今も、期待半分に冒険者ギルドで新たな情報が入っていないか確かめに行く道中である。
「はぁー……。 なんでもいいので手がかりが欲しいのです」
ため息をつきながら冒険者ギルドの扉を開ける。
すると、この一週間で顔馴染みとなった受付のお姉さんが声をかけてきた。
「あっ! ココちゃん! ちょうど良かった! ついに情報が入ってきたよ!」
「ほ、本当なのです?!」
ここにきてようやく事態が進展した。
ココは慌ててカウンターに詰め寄る。
「本当よ。 ここで話すわけにはいかないから奥に行きましょ」
お姉さんの案内でギルド内部にある密談等に使われる部屋に移動する。
出されたお茶を飲んで、落ち着きを取り戻す。
「じゃあ、早速だけど教えるね。 えーと、ココちゃんが探していたネロ君は――どうやら明日開かれる奴隷オークションに出されるらしいの」
「オ、オークション?」
聞きなれない単語にココは首を傾げる。
「そう、オークション。 奴隷商人が奴隷たちを出品するの。 そして客が金額を競い合って、最も高い金額を提示した人が買うわけね」
「そんな……。 ネロは無理やり攫われたのに」
犬耳(狼耳)と尻尾が下を向く。
そんな状態のココをお姉さんは不憫に思った。
「攫われた人がオークションに出ているって噂を聞いたことがあったけど本当だったようね……」
「ギルドで取り締まることはできないのです?」
ココは一縷の望みにかけて尋ねる。
「無理ね」
しかし、返答はやはり酷なものだった。
「オークションは国の主催だもの。 どの国にも属していないギルドが誘拐犯を捕まえに行くのは難しいわ」
「じゃ、じゃあ国に訴えれば!」
「証拠もなしに捜査してくれるとは思う?」
「……」
ココは黙って首を振った。
「これも全てあの筋肉ダルマのせいだ……。絶対に許すものか……」
暗い目をして呟いた独り言は、お姉さんの耳に届くことなく空気にとけていった。
★☆★☆★
次の日――オークション開催日。
ココは客としてオークションが行われる建物に入場した。
昨日ギルドから帰ったココは考えた。
オークションに出されるネロを救うにはどうすればいいかと。
いくつか浮かんだ案の中で比較的現実味を帯びているのは二つだけだった。
まず一つ目、金を支払ってネロを買う。
ココにとってネロが自分だけの奴隷になるという、なんとも甘美なものであった。
しかし問題がある。
それは金だ。ネロは美形であるがゆえに間違いなく高値が付くであろう。
その大金を支払うことができるかどうか。正直言って無理だろう。
だからと言って諦めるわけにもいかない。
そこで二つ目の案だ。
それはネロを競り落とした者を帰り道で襲って、彼を助けるというものである。
ココほどの実力があれば成し遂げることも容易いだろう。
ともすると、一見、金も払うことなくネロを救うことができて最高に思えるが、実はそうでもない。
ココが最近ギルドでネロについて情報を集めていたのは周りの記憶にも新しい。
そんな時にネロを落札した人が襲撃を受け、同時にココが姿を消したら疑いの目を向けられることに違いない。
そんなことになればギルドには近づくことができず、今後金を稼ぐ手段がなくなってしまう。
なので、購入することができるなら購入して、無理そうなら落札者を襲うという単純な案でいくことにした。
後は座して待つのみ。
ココは期待と不安の入り混じった感情で待った。
ネロが現れぬとは知らずに……。
後に二話目をこの一話目に繋がるかも?
700話にも及ぶ日常系の作品を読んでたら執筆時間が取れなかったのです……。
日常系っていいですよね。




