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六話 またやらかす

 次の日、朝食を食べた俺はさっそくルナの部屋に向かった。


 授業は学校にあわせて週に五日間行うことになっている。

 月曜日から金曜日までってことだな。不運にもオークションが行われた昨日は日曜日だったため月曜日の今日から俺は家庭教師の真似事をさせられる。

 一日、二日休みをもらってもいいと思うが昨日ルナに今日から授業すると言った手前休むわけにはいかない。

 なんであんなことを言ったんだと昨日の自分を殴りたい。



 憂鬱な気分になりながら歩いているといつの間にかルナの部屋にたどり着いていたので躊躇いながらもノックをする。

 昨日の喧嘩を忘れてくれてるといいんだけど……。


「はーい!」


 そんな明るい返事の数秒後に開けられたドアからルナが姿を見せた――薄い生地のネグリジェで。


 呆気にとられ見つめてしまっているとルナの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。


 な、なんちゅー格好をしてんねん!? え? 俺ちゃんとノックしたよね? ドア開けたのもルナだよね?俺悪くないよね?

 と、とりあえず何か言わないと……!


「ありがとうございます!!!」


「しねっ!!!」


 間髪入れず死の右ストレートが放たれた。

 お辞儀をして感謝を伝えていた俺に避ける術などなく顔面にクリーヒット。


「ぶはッ!」


 顔、変形した、かも……。


 痛みをやわらげるため霊力を循環させる。

 幸いにもすぐに痛みは引いてくれた。


「な、なんでこんなことするんですか……」


「あんたが、わ、私の姿を見たからでしょ!」


「そっちがそんな格好で出てきたのが悪いでしょうに……」


「う……、まさかこんな朝早くから来るなんて思うはずないでしょ!」


 ああ、これ俺が折れないと永遠に続くやつだ。このまま口論が続いてもルナが恥ずかしむだけなのに。


「分かりました。俺が悪かったです。これから授業を始めたいのでまずルナ様は着替えてきてください。その格好で授業するわけにはいかないでしょう?」


「当たり前よ! あんたはここで待ってなさい!」


 そう言い残すとドアを乱暴に閉め部屋に戻っていった。


「別に俺何も悪くないはずなんだけどなぁ」




 ★☆★☆★




 着替え終わったルナに部屋に入れてもらう。


「改めておはようございます。月曜から金曜までの五日間、朝から昼休憩を挟んで夕方まで授業を行います。これからよろしくお願いします」


「は、はぁ?! 週五日とか嘘でしょ? 勝手に決めないでよ! 奴隷のくせに生意気ね!」


 自分より歳下の少女にタメ口のみならず生意気発言されたことにふつふつと怒りが湧いてくるが持ち前の精神力で抑える。

 こんなことでキレては後の関係をこれまで以上に悪くしてしまうしリゲルにタコ殴りされるかもしれない。

 それだけは勘弁願いたい。


「いえ、これはリゲル様と相談して決めたことです。なんなら確かめて来てもらってもかまいませんよ?」


「嘘よ! お父さんが私が嫌がることするわけないじゃない! いいわ! 今すぐ確かめてきてあげる! 嘘だって分かったら絶対殺してやるんだから!」


 そして嵐のごとく慌ただしく去っていった。

 しかしこうもいちいち反抗されると心にくるものがあるな……。

 やっぱり昨日の件が原因なのかな。それとネグリジェの件も……。

 はやめに仲良くならないと授業がままならないぞ。どうしたもんか……。



 そんな調子で十分も考えていると不機嫌になったルナが戻ってきた。

 どうやらさっきの話が真実だったと知ったみたいだな。

 よーし、いっちょからかってやるか!


 つい数秒前までルナとの関係を悩んでいたことを忘れ、俺の頭の中はからかうことでいっぱいだった。


「リゲル様は何と?」


 俺はニヤつきそうになるのを必死に堪えながら尋ねる。


「…………」


「おやおや、黙っていてはリゲル様が何とおっしゃっていたのか分かりませんよ?」


「…………うっさい」


「え? なんて?」


 調子に乗った俺は耳に手を当てルナに近づく。

 この後俺はこの行為を激しく後悔することとなった。


 ルナは大きく息を吸い込み俺の耳に唇が触れそうな距離にまで近づいてきた。


「うっさいって言ってんのォ!!!」


 女声特有の甲高い声は完全に俺の耳を破壊した。


「あ、あぁ! み、耳がぁ!」


 ルナの放った金切り声はココとの旅で鍛えられた俺の三半規管をもってしても前後不覚にするほどの強烈なものだった。


 ビリビリと脳に響き続ける痛みに堪え一言文句を言ってやろうとルナに向き直るが俺の口から文句が出ることはなかった。

 ルナが目を潤ませ全身を小刻みに震わせていたからだ。


 あ、やばいと思った時にはすでに手遅れで「……う、う、うわ〜ん!!!」と屋敷全体に聞こえるであろう大音量で泣き出してしまった。

 すぐに廊下からは誰かが走ってくる音が聞こえる。

 これは言い逃れ……できないな。誰がどう見たって俺がルナを泣かしたと思うだろう。


 全てを諦めた俺は床に額を擦り付け、これから部屋に入ってくる人を待つしかなかった。



五万pvと一万ユニークアクセス突破ありがとうございます!

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