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三話 オークション?

 奴隷オークション当日。


 俺は筋肉ダルマに待合室へ連れていかれた。

 部屋には人族しかおらず獣人は一人もいない。


 ふむ、貴族にとって人族の奴隷の方が獣人よりもステータスになるという筋肉ダルマの話は事実だったようだ。

 こころなしか奴隷たちの雰囲気がピリピリしている。今後の人生を決める分岐点になるからピリピリするのも当然か。


 けど、俺も貴族に買ってもらわねばならない。俺が他国の貴族の奴隷になってしまえばカトレアもアテネも下手に手出しできまい。ココと会えなくなるのは寂しいが本来の目的はカトレア達から逃れることだから奴隷になるのを良しとしよう。カトレア達に捕まったら自由が全くきかなくなるからな。



「一番から十番のやつらはついて来い。十人ずつ呼ぶから次呼ばれるやつは準備しとけよ」


 部屋に入って来た男が告げる。

 番号は部屋に入るときに渡された紙に書かれていた。

 ちなみに俺は二十六番である。部屋には五十人近くいるからちょうど真ん中らへんだ。


 それはさておき先ほどから度々貴族らしき獣人が待合室を覗いてくる。


 みんな着替え終えているからラッキースケベはおこらないのに……。

 と、いうのは冗談であらかじめ見ておくことで、ある程度目星をつけるつもりなのだろう。


 つまりすでに戦いは始まっているということだ! いい姿を見せなければ!


 その時獣人が連れていた赤髪の少女が目についた。

 頭にぴょこんとたっているうさ耳がある。兎族かな? 顔も整っていて可愛い。お近づきになりたいくらいだ。


 けどあの子の家に買われたくない。なぜか彼女がとても不機嫌そうなのだ。

 目じりを険しく吊り上げ、俺たち奴隷一人一人にガンを飛ばしている。

 目が合った奴隷はサッと目を逸らす。まるで命がかかっているかのように。


 ついに俺も彼女と目が合ってしまった。鮮やかな紅い瞳だ。綺麗だな。


 彼女は目を逸らさない俺を見て眉をピクリと動かす。今度は噛み付かんばかりの顔つきで睨んでくる。


 正直言って迫力がない。むしろ微笑ましい。まるで駄々をこねている妹を見ている気分だ。


 そんな俺にとうとうキレたのだろう。鬼のような形相で睨みつけてくる。


「ぶっ!」


 やべ、笑っちまった。次々と表情を変えてくるから我慢できなかった。

 さすがに貴族を笑うのは不味いよな……。


「ゴホッゴホッ。あー咳が止まらないなあー」


 よし、これでさっきの笑いは咳だと勘違いするだろう。俺のパーフェクトな演技にかかればちょろいもんよ。


 一方うさ耳少女は金魚のように口をパクパクさせて顔を真っ赤にしていた。

 …………もしかして笑ったのがバレた?


「ルナどうしたんだ?」


 娘の様子がいつもと違うことに気づいたのだろう。父親が心配そうにしている。


 ちょんちょんと父親の服をひっぱり、彼のうさ耳を彼女――ルナの口もとに近づけさせる。


 うん、男のうさ耳は気持ち悪いな。うさ耳は女の子についているからこそ至高なのである。

 それよりルナは何を話しているんだ。俺に笑われたと告げ口してるのか?


 ここからでは会話が聞こえないが、指が俺の方を指しているのでやはり俺のことだろう。父親が驚いた表情を浮かべている。

 話が終わったのか今度は父親が近くの奴隷商人に話しかけている。

 初めは渋るような顔をしていた商人だが、だんだんと笑みを浮かべ最後には揉み手でニヤついていた。


 おいおいおい、ルナのお父さんやい。あなたが商人と話している間に娘さんが獰猛な笑みでこちらを見ているんですが一体全体どういうことなんですかい? あっしの命は無事なんすよね? あっしを買ったりしませんよね?


 ああ他の貴族のもとへ行きたいよ……。





 一時間後、俺はオークションに出ることさえなくルナの家――セレーネ伯爵家に売られることとなった。

 覚えておけよ筋肉ダルマ、この恨みは絶対許すまい……。



モチベが……

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