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幕間 ◯◯召喚

もう一話続きます

 ネロとココがクズ親子と闘っている頃、オモルフィ王国の王城――謁見の間に複数の人影があった。



「やっと、やっと準備が整いました! ネロさんが恥ずかしがって私から逃げてしまわれたから余計な手間になりました。けど、これがしっかり作動すればネロさんは確実に私のものへ……。ふひひひひ、楽しみです!」


 その人影の一人、王女カトレアは虚ろな目をして笑っていた。そんな彼女の前には、直径二十メートルはあろう巨大な魔法陣が描かれている。


「このサイズならかなりの人数を召喚できそうですね。でも人数が多ければ多いほどネロさんを捕まえやすくなるのでもう少し大きめの陣にしてもらえば良かったかしら?」


「安心なさいカトレア。この大きさなら三百人弱は喚べるだろう。それだけいればネロ君が捕まるのも時間の問題だろうよ」


 そう言ってカトレアを安心させるのはカトレアの父、すなわち国王ユリウス・オモルフィであった。


 ユリウスは親バカである。愛娘カトレアが望んだものは全て与えて、望まぬものは全て排除してきた。以前カトレアがネロを監禁したときも裏でバックアップして支援していた過去をもつ。


 そんなユリウスでも、先日カトレアが王家に伝わる伝説の召喚をしましょうと言ってきたときは流石に躊躇した。何せ伝説の召喚だ。この召喚は王国が未曾有の危機に瀕したときのみ使用しなさいと代々言い伝えられてきたものだ。それを愛娘の為だけに使っても良いのかと悩みに悩んだ。


 そして出した結論は、カトレアの為なら何だってやってやろう!であった。歴代の国王は天国で嘆いていることだろう。



「さてと、そろそろ召喚してみようじゃないか。カトレアは一刻も早くネロ君に逢いたいのだろう?」


「そうねお父様。じゃあ召喚について書かれたマニュアル通りにやりましょうか」


 カトレアが取り出したのは一冊の古びた本。中には魔法陣の描き方と喚びだされた者に対する対応の仕方が書かれていた。


 ひと通り目を通し最終確認をする。

 召喚され、現れるのは自分と同じ人間ではあるが、何かしらの特別な力を持っていると伝えられている。そんな者たちを怒らせたら一大事だ。そのためにも過度なストレスを与えないように慎重に期さねばならない。


「よし! 始めましょう!」


 本を執事のセバスに渡し、気合いを入れる。


「魔術師たちよ、陣を起動してくれ」


 王の命令に従い、魔術師たちが魔法陣へ魔力を注ぎ込む。

 魔力に呼応するように魔法陣の文字が蒼く神秘的に輝きだした。


 謁見の間にいる全員の気持ちが高まったその時、ポンッ!とコミカルな音を立て、陣の中に上下黒い服を着た集団が現れた。

 集団の男たちは詰襟つめえりかつ立襟たてえりで、前にボタンが付いた奇妙な服を着ていた。一方の女子もV字の胸元、大きな襟が特徴のこれまた不思議な服を着ていた。


 いきなり知らない空間に召喚されたため、ざわざわと動揺する黒服たち。


 ぱんッ! ユリウスが手を叩くと黒服たちに落ち着きが戻る。


「私はオモルフィ王国の国王ユリウスだ。突然知らない場所に召喚され驚いていると思うがどうか取り乱さずに聞いてくれ」


 黒服の男女を見渡し、静かになったところで話し始める。


「君たちは勇者(・・)としてこの世界(・・・・)に召喚された。その理由を私の娘カトレアが今から話す」


 カトレアが黒服たちの前へ出る。


「私がカトレア・オモルフィです。王女の身分ではありますが歳が近い皆さんとお友だちになりたいので親しくしてください」


 ここで最上級の笑顔を見せる。たったこれだけで、国民に天使と言われるカトレアの笑顔を見た黒服たちは魅了されてしまった。


 この笑顔を見せる作戦も本に書かれていたことだ。上流階級の笑顔など見たことのない黒服たちに微笑むだけで、いともたやすく心を撃ち抜くことができるらしい。


 黒服たち全員が自分の笑みに見惚れていることを感じたカトレアは語り出す。


「それではあなたたち勇者様を異世界から召喚した理由を話しますね。この世界は永らく平和の時を過ごしていました。しかしその平和は仮初めの物でした……」



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