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十五話 私闘

 クズ親子に先導され訓練場に来た。


 訓練場はどこから聞きつけたのか冒険者のギャラリーでいっぱいだ。


「はっはっは! 見ろよ! お前らがやられる姿を見たくてこんなに集まってるぞ!」


 おっさんは周囲の熱気に当てられ興奮しているようだ。


 けど、そんなこと言っていられるのも今のうちだぞ。


「ダグリス! 闘うんだったらまず名乗れよなー! こんな形式でも決闘なんだからよ!」


 ウォーミングアップをしているとギャラリーの一人がダグリスに呼びかけた。


「おお、そうだな。このダグリス様の名をさらに広めるいい機会だしな」


 いい歳したおっさんが若い俺たちを倒したところで悪名が広がるだけだと思うが……。


 しかしそんなことも考えつかないダグリスは喜んで名乗る。


「俺の名前はダグリス様だ!この街で一番の冒険者だ!万が一にも勝てるなんて思わないことだな!」


 え……。こいつが一番強いのか。大丈夫なのかこの街。


 続いてジジイが名乗る。


「わしは魔法使いのケヴィンじゃ。この前メリー嬢と、その獣人との試合を見ておった。しかしその獣人は姑息な手を使うのじゃな。同じ魔法使いとして恥ずかしいわい」


 またこのジジイ意味わからないことを……。こんなところにいないで治療院にいた方がいいんじゃないか?


「一応聞いておきますが何が姑息だったんですか?勝手な言いがかりで俺のココを貶さないでください」


「俺の……。ふふっ」


 その瞬間ココから熱い視線を感じた気がした。

 しかも背すじがゾクッとしたぞ。


「たわけたことを。獣人の娘なんかがあの数の火球を生み出せるわけないじゃろ。おそらく優秀な魔法使いを観客に紛れ込ませてタイミングよく魔法を使わせたのじゃろう? そうでないとわしより魔力が高いことになっておかしいじゃろ」


 魔法は一般的に魔力量と比例して一度に使える魔法の数が増える傾向にある。


 しかし自身の魔力がココより低いことを認められないとは悲しいジジイだな。

 けど、登録試験で思い出したぞ。このジジイ試験中に、嘘だ! 嘘だ! と騒いでいたやつだ。道理でどこかで見た覚えがあったわけだ。


「そのようなせこい真似をする獣人に本物の魔法使いの力を見せてやるわい!」


 言いたいことが終わったのかジジイは魔法の詠唱を始めた。


 まだこちらは名乗ってもいないのに!


「わしの自慢の火魔法で燃やし尽くしてやるわい!

 φωτιά() σφαίρα()!」


 ココの詠唱は間に合わなそうなのでノータイムで打ちだせる霊力球をぶつける。


 寸分違わず霊力球は火球にヒット。そして火球はスッと消え去った。


「なッ! 何をしよった小僧! どうやってわしの火球を消したのじゃ!」


 不意打ち気味に放った火球を消されたせいで動揺しているな? そのまま混乱しているがいい。


「自分の身を守る大切な技をわざわざバラす冒険者なんていませんよ」


「ッ! 一度消せたくらいで図に乗りおって! φωτιά() σφαίρα()

 φωτιά() σφαίρα()

 φωτιά() σφαίρα()!」


 その火球も全て霊力球で打ち消す。

 するとまた次の火球を飛ばしてくる。そして俺が霊力球で打ち消す。


 そんなループに俺が飽き飽きしているとダグリスが急に突撃してきた。


 俺が火球に対応するのに必死だと思ったのだろう。けど残念、今の俺なら二人相手にできるんだな。


 すぐそばまで近づいてきたダグリスをこれまた霊力球で相手しながら考える。


 戦闘が始まって十分も経ってないけど、もうケリをつけてもいいかな?


 コンマ数秒の間に結論を出す。


「よしっ! 終わらせよう!」


 倒し方も考えついたのでココに協力してもらおう。


「ココが全力を出した火魔法でギリギリ脱出できるほどの分厚い氷のドームを作れるか?」


「それで閉じ込めるのです?」


 さすがココ、俺がやりたいことを理解してくれたようだ。


「そうだ。あのジジイは火魔法が得意と言っていたんで、その実力を見せてもらおうじゃないか」


 ギャラリーから俺を見たらすごく悪い顔で笑っていそうだ。そのくらい口角が上がっているのがわかる。


「わかったのです! すぐ作るので二人を近くに纏めてくださいなのです!」


 さあフィナーレといこうじゃないか!



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