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十三話 クエスト報告

「で、君たちは報告もせずに寛いでいたと。僕がギルドオーダーの事後処理を徹夜でしていた間に暖かいベッドで寝ていたと。疲れているであろう君たちを迎えられるように準備しといたのに宿に戻ったと。……おっと何か言いたげだね。言いたいことがあるなら何でも言ってくれ。相手を十時間も待たせることができる僕と君の関係だもんね」


「すいませんでしたぁ!」


 俺は四十五度に腰を曲げ、ベンジャミンに最上級のお辞儀をした。


 現在の時刻は午前八時。普段ならまだ寝ている時間だ。

 なぜこんな朝からベンジャミンに頭を下げることになったかというと一時間前に遡る。




 ★☆★☆★




「ネロさん! 獣人っ子! 起きなさーい!!!」


 そんな声と同時にドアが蹴破られた。


「メ、メリーさん?! いきなりどうしたんですか!」


 壊されたドアの向こうから現れたのはギルドの受付嬢メリーさんだった。髪はボサボサで目の下には酷いクマができていた。


「どうしたもこうしたも無いわよ! いつになったら依頼の報告に来るつもりなのよ!」


 昨日は街に戻るなり宿へ直行したためギルドには寄っていなかった。


「今日朝一で行こうとしていたんです」


「今日?! 今日じゃ遅いのよ! ネロさんたちが来るのを何時間待たされたと思っているのよ! しかも待ってるだけならって仕事を今まで手伝わされていたのよ?!」


 それでこんなに辛そうな姿をしているのか。南無〜。


 冗談はさておき、俺たちに非があるようなので罪悪感が湧いてくる。今日手に入るであろう報酬金で何か奢って埋め合わせでもするか……。チョロいしすぐ機嫌も良くなるだろう。


「じゃあ今度一緒に出かけませんか? その時にお詫びをしようかなぁと」


「お出かけ?! デート?! いいわよ! その言葉忘れないでね!」


 よし、チョロい!


「ダメなのです!」


 せっかく話がいい方向に進んでいたのにココには不服があるみたいだ。


「何よ獣人っ子。せっかくネロさんとのデートの約束を取り付けたのに水を差さないでもらえるかしら」


「ネロはココにメロメロだからデートなんてダメなのですぅ〜」


 なぜか俺の隣で寝ていたココはベッドから這い出て俺の腕にしがみつき、そんな発言をした。……裸で。



「………………」



 く、空気が重い……。

 なんでココは裸なんだよ! まだ小さい子だからベッドに潜り込むのは理解できる。けど裸はないだろう!

 裸の幼女と一緒に寝ていて、しかもココを愛しているなんて聞いたら誰もが俺をロリコン扱いするよ!


「え、えーと。愛は人それぞれだから私は何も言わないわ。それとさっきのデートの件だけど、無かったことでいいわ」


 ほらさっきまで好意的なメリーさんでさえ完全に引いてるよ!ココもしてやったり、みたいな顔で笑うんじゃないよ!


「違うんです! これは本当に違うんです!!」




 ★☆★☆★




 この後メリーさんの誤解を解くために時間を費やしたのは語るまでもない。


 やっとのことで説得できた俺はメリーさんに壊したドアについて尋ねた。


「別にいいんじゃない? この宿を経営しているのはギルマスの姉だから、ネロさんたちにこの宿を紹介したギルマス本人に請求がいくと思うわよ」


 なんと、この宿の女将はベンジャミンの姉貴だったようだ。


 おすすめの宿を紹介するとか言って、自分が監視できる場所に誘導するとはなんて食えない男なんだ。


「じゃあギルドに行きましょうか」


「待ってください。シャワー浴びてからでいいですか? ベドベトして気持ち悪いんです」


 普段は寝汗などかかないのに今朝は身体中がベトベトしていたのだ。


「いいわよ。シャワーを浴びてさっぱりした姿を疲弊しきっているギルマスに見せつけてやりなさい! そうすれば私の心もスッキリするわ!」


 さらに待つことになるので渋るかと思いきや、くだらない理由で許可された。


 メリーさんはギルマスに恨みでもあるのだろうか?

 許可された俺からすればありがたいが。


 急いでシャワーを浴び、ベンジャミンの待つ冒険者ギルドへと向かった。




 ★☆★☆★




 そしてギルドに着いた途端ギルマス部屋に連行され今に至る。かれこれ一時間はベンジャミンの話を聞いている。


「――だからそういうことなんだ。ようやく分かってもらえたようだね。僕も叱言こごとを言うのは好きじゃないんだ」


 右耳から入った言葉を左耳に流す作業をしていると彼の叱言(嫌味)が終わりを迎えた。


「ではそろそろ本題に入ろうか。間違っても嘘をついちゃいけないよ。ギルドオーダーを発動したからには上層部に発動理由を伝えないとならないから」


 でも神様(天照)の話をしたって法螺だと思われるだろうから上手く誤魔化せることを祈るしかないか。


「ゴブリン達を殺したモヤの正体はなんだったんだい?」


 眼鏡をキラッと輝かせながら聞いてきた。


「俺は悪魔だと聞きました」


「そうか悪魔だったのか。それで君は誰から悪魔の正体を聞いたんだい?」


 あれ?悪魔と聞いて驚かないのね。この様子なら昨日冒険者に正体が悪魔だったと明かしてもよかったかな。


「俺があいつに閉じ込められていた時に脳に(天照が)直接語りかけてきたんです」


 さあどうだ? 少し省略したが嘘は言っていないぞ?


「悪魔が直接? そんな話聞いたことないなぁ」


 ベンジャミンは疑り深そうな目で俺を見てきた。


 ここで目を離したら気づかれる!と感じ、目を逸らしたい気持ちを抑えつけた。


 それが功を奏したのか、ベンジャミンはため息をつき椅子の背もたれに寄りかかった。


「当事者のネロ君の言葉を信じるしかないか……。悪魔の話を誰かに言ったかい?」


「いいえ。悪魔だったなんて知ったらみんな驚くだろうと思って話していませんでした。まあここでココに聞かれちゃいましたがね」


「そうだね。ココ君くらいなら構わないが多数の人に話してしまうとパニックを起こしかねないからね。この件は他言無用で」


 その言葉に俺は首肯した。



累計ポイント100ポイント達成しました!ありがとうございます!目指せ1,000ポイント!


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