表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/34

十二話 帰還

「は?え?へ?」


 予想外の事態に俺は動揺してしまった。それは冒険者達も同じだったようでお互い時が止まったかのように固まった。


「通すのです! 通してくださいなのです!」


 そんな空気を破ったのはココだった。ココは集団を押し退けながら、勢いそのまま俺に抱きついてくる。


「クンッ、クンッ」


 そして流れるような動作で俺の胸に顔を埋め、匂いを嗅ぐ。感動の再会とはならないらしい。


「……あの、ココさん何してるんですか?」


 念のため聞いてみる。


「匂いを嗅いでるだけなのですよ。けど、少し臭うのです」


 シャワーを浴びれる環境じゃなかったから仕方ないだろ!

 俺だってできることなら体洗って服を着替えたかったよ!


「なのですぐに風呂に入るべきなのです! ほら宿に行くのです!」


 な、なんだ? ココってこんなに心配性だったか?


「おい待てよ!」


 しかし再起動した冒険者のおっさんが前方に立ち塞がった。


「チッ!」


 一瞬ココから舌打ちが聞こえた気がしたので驚き、顔を覗いた。しかしそこにはニコニコした笑みがあるだけだった。

 そうだよな。こんな可愛らしい見た目をしているのに舌打ちなんてするはずがないよな。

 そんなことより今はこのおっさんの話だ。


「お前あのドームに閉じ込められていたんだろ? なんとも無かったのかよ?」


 俺のことを心配してくれているのか? それともドームの中での出来事が知りたいのか?

 女神様の件以外は伝えても構わないから教えてあげるか。


「精神系の術をかけられただけで他は何とも無かったですよ」


「せ、精神系だと?!」


 他の冒険者もざわめき出す。


 え、俺なんかヤバいこと言った?


「お前精神系の攻撃をしてくるなんて言ったら危険度がかなり高いんだぞ! よく生きて出てこれたな……」


 思い返せばあのまま怒り続けていたら自我を失っていた可能性があった。て、ことはかなりギリギリで助かったのか? 今になって鳥肌が立ってきた……。


「しかもその敵を倒したからここに出てこれたんだろ? いったい敵は何だったんだ?」


 それ聞いちゃうの? だって悪魔だよ?

 悪魔です、なんて言えるわけないじゃん。


「あははははー、何だったんでしょうねぇー。俺には分かりませんでしたよー」


「そうか、それは残念だ……。後でギルマスに呼び出されるだろうから、その時知っていることは全て話せよ?」


「分かりました。それはそうとどうしてこんなに集まっているのですか?」


 ずっと疑問だったことがようやく聞けた。まるでベスタの全冒険者が集まっているのではないかと思うほど大勢いてびっくりしたよ。


「ああ、これか? これはギルドオーダーってのもあるけど、その狼人の嬢ちゃんが必死になってみんなを集めたからだよ」


 確かギルドオーダー(命令)はその名の通りギルドが冒険者に出す命令だったはず。

 その街の冒険者全員でなんとか対処できる危機が差し迫った場合のみ発動されるんだっけ?

 滅多に出されることは無いけどその分強制力が絶大でギルドオーダーに従わなかった冒険者にはペナルティーが下されるとか。


 まあ自分がホームにしている街が危機だって言われれば大抵の冒険者はペナルティー関係なしに参加するだろうが。


「ココも一役買ってくれていたのか。ココありがとな」


「パートナーとして当然なのです!」


 えっへんと薄い胸を張るココ。


 本当に可愛いなもう! 抱きしめて耳をもふもふしちゃいたい! けどその前に冒険者達に感謝の気持ちを伝えないとな。


「冒険者の皆さん、ココの言葉を聞いて集まってくれてありがとうございます。俺は助かったし、敵は倒したのでギルドオーダーも完了です。ありがとうございました!」


 俺の言葉で敵の脅威が完全に去ったことを知り、冒険者達は勝ち鬨を上げた。


 そんな色めき立つ冒険者達を横目に、カトレアから逃げているということもありあまり絡まれたくない俺たちはベスタの街にこっそりと帰還した。




 ---------------




 その夜 宿での出来事



 とある宿の一室に小さな影があった。その影は着ていた服を全て脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿になる。


「ネロがドームから出てきたとき、服から女の匂いがしたのです……。ネロはココを次元の狭間から救ってくれた王子様なのです。ココ以外の女を近づけちゃダメなのですよ?」


 その影の正体はココだった。ココは裸のままネロの寝ているベッドに潜り込む。


「むふふふふ。それにしても可愛い寝顔をしているのです。ずっと見ていたくなるのです。けど今は大切なミッションの最中なのです」


 するとココはネロに身体を擦り付け始めた。


「んしょ。んしょ。ココの匂いをつけて変な虫が集らないようにするのです」


 頬を上気させながらネロにくっつく。


「あはぁ、ネロの匂いがプンプンするのですぅ」


 口から涎を垂らしながらも続ける。


 一時間も続けていただろうか。ココは身体を大きくビクッ、ビクッと震わせると大人しくなった。


「ハァ、ハァ、ハァ……。きょ、今日はこの辺にしといて寝るのです。もうこのままネロと寝てしまってもいいです……よね? おやすみなのです」


 こうして今日も深夜の宿に静けさが戻った。



おや?ココの様子が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
気に入ってくれたらクリックしてください
ランキングが上がればモチベーションも上がります
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ