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十話 女神との邂逅

 食われた――っと思ったがどうやら生きているらしい。なぜかって? だって意識があるんだもの。


 状況を把握するため周りを見渡すが何も見えない。否、正確に言うなら黒が見える。辺り一面黒一色だ。


「ここはどこなんだ」


 もちろん答えてくれる人は誰もいない。ここには俺しかいない……。その現実に怒りがふつふつと湧いてくる。


 どうして俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ! 元はと言えばベンジャミンが変な依頼を出してきたせいだ。俺じゃなくて他のやつに頼んでもよかっただろう! あいつのせいで蛇もどきに会ったんだ! ここから出たら絶対にぶっ殺してやる!

 さらに言えば俺が王都から逃げ出す理由になったカトレアとアテネも同罪だ。あいつらは俺を飼ってやるとほざいていたが逆に俺が飼ってやる!


 絶対にみんな許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナ……イ?


 脳に僅かに残っていた冷静な部分が俺に違和感を知らせた。なぜ俺はこんなに怒っているんだ?

 全て俺が蒔いた種だろ。そこまで怒ることだったか?

 猜疑心を抱くと違和感がどんどん大きくなっていく。


 ……蛇もどきの仕業か?


 その答えにたどり着くと、スゥーと胸の内に蔓延はびこっていた黒い感情が消えていった。


 この空間に閉じ込められると蛇もどきから精神干渉を受けるのか? ゴブリンたちの顔があんなに歪んでいたのもこのせいか。


 独り納得するとどこからか声が聞こえてきた。


『おお、自らじんを克服したのか。おかげで妾も出てくることができたのじゃ。よくやったのじゃ』


 なんだこの女声。これも蛇もどきがやっているのか?


『違う、違う。妾は蛇もどきの敵じゃ。それとあれは蛇もどきじゃのうて第六天魔王波旬(・・・・・・・)、いわゆる悪魔(・・)じゃ」


 あ、悪魔ぁ?あんな蛇みたいなやつが?


『そうじゃ。妾の国では天魔と呼ばれておるな。そしてあやつは人の煩悩で心を惑わせて楽しんでいるクズじゃ』


 それはクズ野郎だわ。そういえば君の名前は?


『そうじゃった。まだ名乗ってなかったの。我の名は天照大御神じゃ! 神様じゃぞ!』


 神様? 冗談はよしてくれよ。


『冗談じゃないわい! 我は太陽の神じゃ!』


 あー、そういう設定なのね。十四歳になるとかかる病気か。見ているとこっちが恥ずかしくなるんだよね。


『違うのじゃー!! 我は本当に神様なのじゃ……』


 シクシク泣いているのが聞こえてくる。


 え……。まじで泣いちゃった?


『…………………………』


 ごめんねー。君が神様って信じなかった俺が悪かったよ。君は神様! とっても偉い神様だよ!


『……本当に信じてくれるのか?』


 勿論さ。俺が神様を信じない愚か者に見えるかい?


『……見えるのじゃ』


 ああん?てめえぶっ○すぞ?!


『ひぃい! 現代人は恐ろしいのじゃ!』


 ふぅ……落ち着け俺。……こんなことよりここから脱出する方法を考えないと。


『脱出するのは簡単じゃぞ。妾の力を使って天魔を倒せばいいのじゃ』


 それは頼もしい。神様が手伝ってくれるなら敵なしだな。じゃあ早速やってくれるか?


『なにを言っておる? 妾の力を貴様が使うのじゃぞ』


 何訳わからんことを言ってるんだ。やっぱ神様(笑)だったか。


『ほー、そんなことを言うのかー。妾は貴様の中から出てこれないから、別にここを脱出しなくてもいいんじゃぞ』


 は? 俺の中に閉じ込められてる?


『そうじゃ、理由は分からんが気づいたら貴様の中に閉じ込められていたのじゃ。貴様は魔力がないじゃろ? それは妾がいたからなんじゃよ』


 お前のせいで俺は今まで魔法が使えなかったのか! 最低なやつだな!


『貴様先ほどから神様に対してなんて口の利き方じゃ! もう許さんのじゃ! κλήση(召喚)八咫烏!』


 ――足元に紅く輝く三つ巴が現れた。


 巴は時計回りに高速で回転していく。速すぎて三つ巴が一本の太線に見えた次の瞬間、小爆発を起こし三本足の烏が現れた。


『妾が貴様から出てこれない代わりに、眷属の八烏ようかちゃんを出してやったわい! 行け、八烏ちゃん! こやつの頭を突っついてしまえ!』


「頭突っついてしまったら天照あまてらす様もダメージ喰らうけどいいんですカァ?」


 この烏喋れるのか! どっかの神様よりよっぽどすげーわ。


『ムキィーー!!! 構わんやってしまうのじゃ!!!』


「ええっとネロさん……突っついてもいいですカァ?」


「ダメです」


「ほらやっぱりダメですって。天照様諦めてください」


『なんじゃ貴様! 妾の言うことを聞けんのか!』


「だって召喚するたび毎度毎度嫌なことばかりさせるんですもの。そして天照様がネロさんから出てこれない現状、逃げるチャンスじゃないですカァ」


『もういいのじゃ! 妾は奥に引きこもるからもう勝手にするがいいのじゃ! 今度はウズメちゃんが来ても絶対に出て来てやらんからの!』


「はい、さよーならー」


 天照様の声が聞こえなくなった。本当に引きこもったようだ。


「改めまして私は八咫烏の八烏ようかです。太陽の化身やってます」


「ご親切にどうも。俺はネロ・ナダリヤです。訳あって姫様と妹から逃亡中です」


「大体の事情は天照様の記憶から把握しています。取り敢えずここから脱出しましょうカァ」


「どうやって脱出するんだい?」


「えーと……この姿だと説明するのが大変なので人型に変身していいですカァ?」


「変身した方がいいならどうぞどうぞ」


「なら失礼して……カ、カッ、カァッ!!!」


 大きな声で鳴くと同時に同い年くらいの少女の姿に変わった。



小説家になろう 勝手にランキング

総合“200位”、ファンタジー部門“141位”ありがとうございます!


来年もこの作品にお付き合いいただければ幸いです。では良い年末年始を!

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