素敵な場所にいくために
僕は前世に連なる夢のことを伏せて、見聞きしたものを話していく。
スティーブンはすぐに目を覚まし、少しだけ沈んだ顔で黙って耳を傾けていた。
「羽の生えた双子、ですか」
「そうですね。髪型以外瓜二つの」
そしてやはりエインセルたち、そしてアリエル様の話は三人ともが絶叫するほど驚いていた。
時間が止まった部屋なども説明するのが難しかったが、とりあえずそういう空間と言うことで済ませることが出来た。月などは説明した上でも、あれが実物ではないということまでは説明することが出来なかったが。
話を聞き終わったマリーヤが、人差し指の中程を咥えながら要約してくれた。
「つまりカラス殿は北壁の波に浚われた後、不可思議な白い部屋で妖精の双子と会い、その案内で伝説の妖精……アリエル様とお会いし、その助けでこの世界に戻ってきたと」
「そういうことですね」
「はー、妖精の国なんて本当にあったんだなぁ……」
頭を掻きながら、グーゼルがそう呟く。信じたいであろうスティーブンは別にしても、二人が疑わないのが意外でもあった。
特にグーゼルなどは、『夢でも見ていたんだろう』と否定すると思っていたが。
「ですが話を聞くに、私たちが実際にこの目で見ることは難しそうですね」
「まあ、そうなるかと思います」
最後のアリエル様の言葉を思い出しながら僕は答える。僕は苗床にはしない、ということは、他の誰があそこに飲まれても妖精の苗床にされてしまうわけだ。
同時刻に飛び込んで事情を説明すればと思っても、あの時間があやふやな世界では、もう手遅れということもあり得ると思う。
それ以上に、僕がアリエル様の意向を尊重したいということもあるけれど。
「しっかし、アリエル様もどうしてお前には甘いんだろうな。他の人間は誰一人として帰ってきてねえのに」
「そうです。何故、カラス殿だけはアリエル様も手を貸したのでしょう」
二人の視線が僕へと迫る。特に、マリーヤの目が恐ろしい。怖いわけではないが、隠していることなど簡単に察してしまうような澄んだ目。
嘘をつくわけではないが、日本のことは隠しておきたい。だが、隠すためにはどこまで言ってもいいものだろうか。
大きな目を縁取る睫毛を羽ばたかせ、青い目が僕を捉えた。
悩みながら、それを顔に出さぬよう努めて声に出す。
「……『私があんたの母親よ』と仰っていましたね。母のいない僕の身を、気遣ってくれたようです」
「妖精が母親って……」
少しだけ笑いながら、グーゼルが乗ってきた。これなら……。
「親いねえって、そんなん、あそこに入った奴ならいくらでもいたろ」
「それよりも、それならばカラス殿の身の上をいつ知ったのですか。身の上話をするような雰囲気でもないでしょう」
だが、有耶無耶にしようとした話題はマリーヤに遮られる。
たしかに、本来ならば自分の身の上を明かすような話にはならないと思う。簡単な自己紹介はしても、生い立ちまで話すことはないだろう。
「以前、お会いしたことがあったようです。僕としたらすっかり忘れておりましたが……というよりも、幼すぎて覚えていなかったという方が正しいでしょうか」
これは本当だ。しかしそれではマリーヤは納得しまい。
思った通り、更に追及してくる。身を乗り出して、真剣な目で。
「伝承によれば、勇者が身罷った頃にアリエル様は姿を消しております。その後、壁の向こうを離れて何処かにいたということでございますか」
「ええ。何年も前ですが。しかし自分は勇者とともに死んだとして、もうエッセンやリドニックには干渉しないと決めているようです」
この世界には、という言葉は使わない。だから回りくどい表現にもなるが、しかたあるまい。
「旧友のドゥミ様にも会うことはなく、もうあの北壁の向こうからこの世を見つめているだけなのだと」
「ドゥミ・ソバージュ……〈千尾皮〉の魔法使いですか……」
マリーヤが目を細め、悩み考えるように俯き座る。組んだ腕の下で、右手を忙しなく動かしながら。
グーゼルが、その姿に目を留める。
「んだよ。やけに細かいところに」
「……そうですね。どうにかして使えればと。いいえ、使えそうだと思いまして」
「使える?」
重ねて尋ねたグーゼルに、じとっとした目でマリーヤが溜め息をつく。
「お忘れですか、プロンデ殿の死の真相を。もしもそのせいでエッセンとの間に万一のことがおきたときに、アリエル様にご助力を願うことが出来れば、これほど心強いものはないでしょうに」
「そんなん気付くかよ」
けっ、とグーゼルが横を向く。その横顔に追撃するように、マリーヤは続けた。
「カラス殿がアリエル様と懇意にしているのならば、そこからアリエル様との繋がりをとも思いましたが……それも難しそうなご様子。であるならば、アリエル様ご存命のことをお伝えし、ドゥミ・ソバージュ殿との繋がりをつくってしまうということも考えるべきでしょう」
「あん? 難しいって、何で?」
こちらを向いたグーゼルに、僕はドキリとする。
マリーヤは、やはり僕が突っ込んで聞かれたくないということを把握しているようだ。特に僕とアリエル様に何か共通の話題があることも、きっと気がついているのだろう。その中身まではさすがにわからないと思うが。
そして僕の想像でもあるが、その共通の話題がなければ、マリーヤの想像通り僕を使っても彼女と渡りを付けることは出来ないだろう。アリエル様自身が、もうこの世界に関わりたくないと言っているのだから。
「……説明できないこともあるんです。すみません」
もう誤魔化すことは出来まい。だが、言いたくもない。僕が素直に謝ると、グーゼルも首を傾げながら聞かずに引いてくれた。
しかし別のところには納得できないようで、もう一度マリーヤの方を向く。
「でもさぁ、いくら勇者の仲間だからって、一人と仲良くなっておいてどうするんだよ。たしかミーティアってドゥミ様いても一回エッセンに負けてるんだし」
「それでも、牽制にはなり得ます。仮にドゥミ様を招聘し、この国に留まっている際にエッセンがこの国と諍いを起こしたら、ミーティアの対エッセン感情も悪化するでしょう」
「だから、悪くなったところで気にするような奴らでもねえだろ」
「もはや国外にも目を向けられる時期ですし、そこは上手く調整いたします。いくつも準備があり、最悪の結末すら招きかねませんが、……南にある二つの大国の一つ、エッセン。強国ではありますが、三方向を一度に守れるほど器用でもないでしょう」
……さらりとマリーヤも恐ろしいことを言う。スケールの大きさではレイトンと変わらない気がする。
僕がそんなことを考えているのもわかったのか、僕を見てマリーヤは一瞬表情を和らげた。
「まあ、そんな事態まで発展しなければ良いだけの話です。レイトン殿の工作が上手くいき、ウェイト殿が口を噤んでくだされば直接の衝突はないでしょうし、ここでドゥミ様と接触してはエッセンを刺激する恐れもあります。まだとっておくべき対策はございますし、グーゼル様は門外漢、その辺りはお任せ下さい」
「信用はしてっけど、無理すんなよ?」
「ええ。ご心配なさらないで下さい。仮に危なくなったら、ヴォロディア王の首でも土産にエッセンに恭順を申し出れば良いのですから」
「楽しそうだけどやめろな?」
グーゼルすら苦笑いで止める。異国人の僕とスティーブンに至っては、無言で無視を決め込んでいたが。
それからマリーヤは僕に向けて声を発する。言いづらそうに眉を顰めていた。
「さて、カラス殿。妖精の国のお話ですが、やはり、その……」
「箝口令ですね。わかっています」
その言葉の最後までは言わせずに、僕は答える。わかっていたことだし、僕も異論はない。
「『壁の向こうに妖精がいた』それが真実であるならば、物珍しさに訪ねていく者も今より多く出てしまうでしょう」
それで勝手に苗床になる分には誰も困らないが、それでもそれを殊更に助長するべきではあるまい。あるかどうかわからないものに挑戦する者が勝手に飲まれる。それくらいでいいのだろう。
マリーヤは頷き、そしてそれからわずかに首を振った。
「それもございますが、ドゥミ様との関係をこちらで制御するためには必要なので。申し訳ございませんが今は他言無用に願います。いつか時が来たら、きちんと公に致します」
「別にその辺はどうでもいいので、やりやすいようにどうぞ」
僕とマリーヤは頷き、了解し合った。
そしてなんとなくマリーヤもわかっている気がするが、僕の方にはもう一つ理由があった。
現状北壁の向こうに行けるのはこの世界で僕と、可能性があるとしてもドゥミの二人だけなのだ。
『一人しかそれを行うことが出来ない』ということへの他人の反応は、昔のハイロの対応でわかっている。羨み、そしていずれは悪意を帯びるだろう。
『魔法使い』も生まれつきの長所であり、それに似てはいるが、魔法使いの場合は一定の社会的な地位がある。闘気を併用できることは、浸透してはいないからまだ平気だ。
『妖精』という鉱脈の価値は僕には算出できない。だが権力者はそれを求めるだろう。
その欲望の矢面に立たなければいけないのは、少しだけ腹立たしい。
子は親を選べないのに。
「カラス殿には申し訳ございません。アリエル様のこと、口止めさせていただくなど」
「そうですか?」
そこまでではない気がする。僕も積極的に話したくはないので、特に問題はないと思うが。
そうは思ったが、スティーブンは僕に向けて諭すように言った。
「親が良く出来た我が子を誉れに思うように、子も偉大な父母は誇るもんじゃ」
「そうなんですね。実はよくわかっていませんけど」
尊敬できる親など、未だかつていただろうか。だがきっと、そういうものが望ましいということは僕にもわかる。まだ実感はないけれど。
「……その場限りかもしれんが、アリエル様がその口で仰ったんじゃ。お主は、そう名乗ってもいいはずなんじゃよ。自分の母は、偉大なる妖精アリエルじゃと」
「……偉大……」
その言葉を聞いて噴き出しそうになる。
偉大。あの小さな人形のような見た目の妖精には、偉大という言葉はあまりにも似合わないと思う。
だがその言葉を感慨深げに呟いたように聞こえたのだろう。
スティーブンは目を閉じ、腕を組んで頷いた。
「妖精か……。生きとるうちにお会いしてみたいもんじゃのう。勇者の冒険録では、可憐で美しい花のような方じゃったか」
「…………」
僕が返せずにいると、スティーブンは改めて目を開く。それから僕の両肩に手を添え、また真正面から問い詰めるように言った。
「で、じゃからして、変若水はあったかのう? 時間が止まっとるというのはわかったが、妖精じゃもの、何かしら持ってたんじゃろう? 何か、のう、なぁ!」
「……残念ながら、変若水はなかったですね。確認しましたが、ご本人も『そんなものはない』と仰っていました」
「ハハハハハ! 残念だったな! ジジイ!」
グーゼルの哄笑が響くが、憮然ともせずスティーブンは奥歯を噛みしめてからまた同じような質問を繰り返した。
「じゃ、じゃあのう、何か人知を越えた霊薬なんぞは? 勇者も勇者でよくわからん薬をつかったり奇跡を起こしたというからにはその仲間のアリエル様も何か……」
「そういう不思議なものはありませんでしたね」
「………………」
今度はスティーブンが口を開けて黙る。それからガクンと頭を垂れて声なく一度だけ笑った。
肩に掛かる力が強くなる。いやこれは、手が重たくなったというだけだろう。スティーブンの体に力が入らなくなったのだ。
見ていて気の毒だ。
だからというわけではないが、僕は情報を一つ追加する。スティーブンが求めているものとは少し違うとは思うけれど。
「しかし、不死の茸はありました」
「……ひょっ!?」
弾かれるようにスティーブンが顔を上げる。僕の鼻先にある顔がやたら近い。
「肉霊芝というらしいですが、西の果てで採られた茸だとか」
「……なんじゃなんじゃー! ふひょー!!」
僕の言葉に、手を放し小躍りを始める。喜びがすごいが、これではこの続きが言いづらい。
マリーヤたちも苦笑いをしてその様を見つめていたが、僕の顔を見てマリーヤはまた笑っていた。これから言うことがどんな類いのことか想像がついたのだろう。遅れて、グーゼルもにんまりと笑う。
「まだ喜ぶには早えだろ」
「妖精があると言ったんじゃ! 確実にあるんじゃよ! これを喜ばしいと言わずしてなんといえばいいんじゃ!!」
……まあ、探せば見つかるという保証があるのだ。喜ぶのもわかるけれど。
あまりの驚きように呆気にとられたグーゼルは、また鼻で笑って僕を見た。
「んで、それはどんな素晴らしいもんなんだ?」
それから楽しそう僕に尋ねる。その強い笑みはおそらく、スティーブンの反応を予期してのことだろう。
期待に応えなければ。僕はスティーブンの耳に届くよう、少しだけ声を張った。
「食べると死ななくはなりますが、徐々に体が茸になっていきます。やがては意識もなく、ただ生きる人型の茸になるとか」
「…………!」
ぴたりとスティーブンの動きが止まる。それから、油が差されていないブリキ人形のように首を回して僕を見た。
アリエル様は人型の茸とまでは言ってはいないが、恐らくそういうものだと思う。菌糸を体内に張り巡らせるという性質からして、きっとそうなるだろう。
「なるほど、そりゃ大したもんだ。ジジイ、そんなの食いたいか?」
「……おぅ……」
へたりとスティーブンが座り込む。なんとなく、髭も萎れた気がした。
そんな様を見てまたグーゼルは笑って、首の後ろで手を組んだ。
「ま、そんな旨い話はないってこった。妖精すら知らねえんじゃ、もうねえんじゃね?」
グーゼルの言葉に再起動したスティーブンが、上目遣いに僕を見る。唇が震えていた。
「いや、カラス殿、そうではないじゃろ? な?」
「さて、僕にはわかりかねます。少なくともアリエル様が仰ったのは、『ここには若返りの薬はない』だったので」
あまりにもかわいそうだったので、さらに本当のことを言う。
効果は覿面だったようで、また勢いよくスティーブンは立ち上がった。
「ならよし!」
存在しない、と言われたわけではない。それだけで、スティーブンは元気を取り戻したようで、鼻から強く息を吐いた。
「じじい、もうそっちは諦めろって……」
「アリエル様がないとおっしゃったんじゃったら、ないんじゃろ。じゃが、ここにはない、ならここ以外にはあってもおかしくなかろうが」
何を馬鹿な、というふうにスティーブンはグーゼルに返した。それを見て、グーゼルも閉口する。
「それに、不死の薬が実在するというのも大きな進展じゃ。もちろんそれは儂は口には出来んが、それでも肉霊芝は実在するんじゃ。変若水も霊薬も甘露もあってもおかしくはあるまい」
仁王立ち、という風情でスティーブンは吠える。
それから僕を見て、喜色満面の笑みを作った。
「カラス殿、礼を言おうぞ。本当に、あのときお主に助けられて本当に良かった。この国に来て、本当に良かった。おかげで、儂は旅をまだまだ続けることが出来る」
「……それはよかった」
力強く言いきったスティーブン。なら、もう僕が何を言うこともなさそうだ。そもそも僕の言葉なんて、アリエル様に比べればとても小さいのだろうけれど。
ふと、足先の感触が気になった。そういえばまだ裸足だったか。
僕の視界の端に、靴が映る。そうだ、靴は履かなければ。
僕がいそいそと靴を履き始めると、マリーヤがそれを見て目を細める。
「貴方の元へ返すことが出来て、本当によろしゅうございました」
「ええ。僕も、嬉しいです」
足の汚れは魔法で除去し、感触を確かめながら紐を結んでいく。そうだ、こんな感じだった。空気の流れや温度変化には鈍くなるものの、靴裏の環境には左右されなくなる。
靴を覆う表面の革は蹴り砕いた動物の血液も弾き、染みのようなものはない。魔力で覆われている僕の足はそもそも傷つきもしないけれど、それでも靴底の感触を確かめれば何となく心強くなった。
「……これから、カラス殿はどうするんです?」
「どうするかは決めていませんが、どこかに歩いていきますよ。素敵な靴は、素敵な場所に連れていってくれますからね」
プロンデが死んだ。が、その後始末はマリーヤたちに任せてもいいだろう。プリシラに真意を問いただしたいけれど、会うことすら僕にはきっと難しい。
なら、僕にはこの国ですることがない。喜ばしいことに。
また足任せに旅を続けよう。今度はどこかで美味しいものでも食べたいけれど。この国の料理は歯ごたえもないし脂が強いしで僕には向いていなかった。
「それがいいじゃろ。その靴、使わんともったいないほど良い靴じゃ」
スティーブンがまた強く頷く。それから、前歯を見せて笑った。
「一流とは言い難いが、それでも丁寧な仕事がされておる。そのご友人は、真にお主のことを想って作ってくれたんじゃ」
「そのようですね。……いえ、その通りです」
僕は言い直す。リコの仕事を疑うわけではないし、疑うのも失礼な話だ。先ほど誇れる親という話が出たが、リコは本当に、誇れる友達なのだから。
「その靴、出し縫い糸に、所々結び目があるのがわかるか?」
「……? いえ? どこですか?」
僕は聞き返す。さすがに靴には詳しくないし、どこのことだろうか。
スティーブンがしゃがみ込み、指をさす。そこにはたしかに小さな結び目がいくつか並んでいた。気付かなかったほど小さなものだけれど。
「……へえ」
意味ありげにグーゼルも身を乗り出して見る。マリーヤは、と見れば首を傾げていた。
「そのご友人もよく知っておったのう。仕立てた靴の糸に結びをつくって贈るというのはな、戦いに出る男の旅先での厄を防ぐという呪いじゃよ。儂も子供の頃に聞いたきりじゃけど」
「そうなんですか」
僕の顔が少し綻ぶのがわかる。そしてまた感謝が浮かぶ。知らなかった、けれど、そういう願いを込めてくれていた友達に。
「靴は、生きて使うもんじゃ。けして、死ににいくときに置いていくものではない」
「はい」
感慨深く、僕もそう返す。
「お主があのとき軽々しく死を選んだわけではないことはわかっとる。けれど、もし次があったら。その娘さんの気持ちも考えて、真剣に悩んでから選ぶんじゃ」
その通りかもしれない。きっと、アリエル様が自分を母親だと名乗ったのも同じような理由なんだろう。
自分を見ている母がいる。自分の安全を祈る友がいる。
それが嬉しいのか煩わしいのか、まだ僕にはわからない。しかし、軽々しく命を投げ出すわけにはいかなくなったのはきっと確かなのだろう。
「は……」
返事をしかけて、僕も言葉を止める。今おかしなことを言ったけど。
「……? いえ、これ作ってくれた人は男ですけど」
「え?」
良いことを言った、と気分良さげにしていたスティーブンが目を見開く。
「そ、そうかのう。はは、そうか、そうか……。……おかしいのう?」
首を捻るスティーブン。
「……ちょうど良い時間です。食事を用意させますので、皆様少々こちらでお待ち下さい」
マリーヤの言葉で動き出すまで、誰も一声も発しないのが不思議な雰囲気だった。




