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捨て子になりましたが、魔法のおかげで大丈夫そうです  作者: 明日
姫様の休日

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296/937

追加された項目

4/15 新規小説作成で書き込んでいた約三千文字の最新話が、エラーで消滅してしまいました……。ちゃんと戻るボタン押したのに……。

ということで、申し訳ありませんが14日深夜分の投稿は出来ません。明日中には何とかしますので、本当に申し訳ありませんが少々お待ちください。

最近この手のミスが頻発しています、本当に申し訳ありません。

4/16 次話投稿完了しました。重ねて、申し訳ありませんでした。

 


 今まさに隠れようとしている覆面の男は、見てみれば服自体は普通のものだ。戦いに出るようなものではなく、普段遣いが出来るような服。隠密行動などではなく、ごく普通に歩いていた一般人が持っていた布で覆面をして襲撃を掛けた。そんな感じか。


 敵影はとりあえずその一つ。

 だが、油断はできない。レヴィンの時と同じ失敗は繰り返せない。

 だから、もう一人以上敵がいると想定して行動する。


 今目の前にいる男が単独でないとしたら、他の者はどこに?

 一緒に行動しているわけではないようだ。一緒だったら、一斉に弓を射掛けでもした方がよほど効果的だし。

 弓などの遠距離からの狙撃ではなく、剣などでの強引な襲撃を考えれば、近くの物陰にでも潜んでいるか。いや、その感じはしない。魔力を広げて探査しても、不審な人物はいない。


 矢を放った男の位置を魔力波で捕捉しながら考えを続ける。

 物陰は多い。が、周囲に誰か隠れている風でもなく、しかも一発だけ撃って逃げた。……追わせようとしている? 僕を引き剥がして、無防備なメルティを襲おうと?

 それも無さそうだ。だったら、初撃を外した時に慌てることはない。それが演技だという恐れもあるが、そういう風には見えなかった。


 ……では何故慌てた?

 よく考えたらそれもおかしいか。あの躊躇の無さからいえば、相手が一般人のような僕だったから、というのは考えづらい。きっと誰でもよかった。それに、外れてから慌てている。誰かを殺す気だったのであれば、攻撃を繰り返すか、舌打ちをしながら撤退をするはず。なのに、まるであれは計画が外れたようだった。



 僕は、手に残る矢を見る。

 普通の矢だ。隠密性を高めるために黒く塗られるでもなく、普通の狩りに使われるような……。


 狩り。その言葉が浮かんだ瞬間、ようやく意図が読めた。

 そうだ。計画が外れたのだ。誰か、店から足を踏み出した者を殺すという計画が。


 とすると、本命はそちらか。やはり、もう一人いる。

 姿を確認したわけではない。だが、店の裏手の方を見ながら、僕はそう確信した。


 とりあえず、逃げた男の目の前に不可視の壁を出現させる。魔力圏の外に魔力波で出現させているからごく短時間しか出せないが、それで充分だ。

 屋根の上を逃げていく男。その壁にぶち当たり、転んだ様子。そこに衝撃を与えて、弾くように強引に移動させる。魔力圏の中まで引き戻し、上から圧力をかけて拘束する。肉眼では見えないが、屋根に接着剤でも塗られたかのように張り付けられた男は、きっと粘着シートにでも引っかかった鼠のような状態だろう。


 その男はそれでいい。では、もう一人の処理だ。

 この、追い込み漁を完遂すべく、店の裏で待ち構えているであろう敵の処理を……。




「メルティ様……!」

「何してますのー?」

 裏手の方に目を向けて、そちらも……と思った僕に声がかかる。恐らくソーニャの制止を振り切り、メルティが出てこようとしているのだ。

 内心の舌打ちを隠しつつ、僕は言葉を紡ぐ。

「今はお出になりませんよう。安全が確保されてから……」

 そこまで言って気が付いた。メルティは、僕が何をしているのか知らなかった、ならばソーニャは何もメルティに言っていない。

「でもー、お皿はもう飽きてしまいました」

 次に続いたその言葉も、危機感のない力の抜けた顔も、それを裏付ける言葉だろう。僕がソーニャをちらりと見ると、申し訳なさそうに微かに頭を下げていた。


 それからソーニャは、唇だけを動かして僕へと問いかけてくる。

「(敵はまだいるのだろうか?)」

 声に出さないということは、メルティには伝えたくないのだろう。正直意味が分からないが、とりあえず追従しよう。僕は悩んでいるふりでさりげなく顔に手を添える。メルティからは見えないように口元を隠しながら、唇の動きだけで返した。

「(一人は拘束しておりますが、恐らく裏手の方にまだ残っています)」

「(……では、申し訳ないが位置だけ教えてもらえまいか。後の対応はこちらでする)」

 そこまで言って、ソーニャは声を上げた。

「では、メルティ様、場所の確認だけ先に致しますので、少々お待ちください」

「もうー、はやくしてくださいまし」


 頬を膨らませたメルティをさりげなく店の奥に押し込みながら、ソーニャはずいと前に出る。

 店から出て通りに足を踏み入れ、それからメルティに顔を見せぬように立つ。そうしてソーニャが口を開こうとしたその時、僕から質問を口にした。

「……何故、明かさないのでしょうか?」

「メルティ様に、心安らかにいていただくために」

 僕の言葉に応えて、暗い顔を見せたソーニャ。雇い主様に口答えはしたくないが、せめて先に言ってほしかった。

「護衛を雇ってまで外に出ています。荒事があるのは承知の上のはずでしょう」

「メルティ様は、慣例としか思っておりません。ですが……いえ」

 一度首を横に振り、何かを決意した顔でソーニャは顔を上げる。

「実際に襲撃を受けている以上、カラス殿にもお伝えしなければ。詳しい話は後程致しましょう。ですがそれよりも、まず賊の位置は……」

「……先ほど矢を射かけてきた男は、ここから三軒離れた屋根の上で磔にしてあります。店の裏手にいたであろう敵は、所在もつかめていませんが」

 拘束している男のいる方向を指さしながら、僕は答えた。

「恐らく、表で誰か一人を殺傷し、僕らが裏口から逃げたところに待ち構えているという策でした」


 元王族を狙っているにしては、あの程度の腕でしかも一人ということはあり得ない。恐らくあの覆面は陽動で、本命が裏で待ち構えていたのだろう。そちらはメルティが邪魔で対処出来ず、多分もう逃げている。

 最後の部分を伝えるための説明だ。それを読み取ったのだろう、僕からの抗議を受けて、ソーニャが軽く頷くように頭を下げた。

「……それは、申し訳ない」

「いえ。ですがメルティ様を守るためにも、次からはメルティ様にもご協力頂ければ、と進言いたします」

 次など無い方が良いが、もしも次があったら、だ。

 オトフシ曰く、危険が無ければ敵を倒さずとも問題ないという探索者による護衛任務。だが、倒さなくても構わないからといって、目の前の敵をむざむざと逃がすことは無いだろう。出来る限りは迅速に排除すべきだ。

「その事態ももちろん考慮させていただく。が、確約は出来ませぬ。申し訳ない」

「……わかりました。こちらも、これからはそういう想定で動きます」


 メルティには危機を悟らせないように任務を続けろ。

 突然判明したルールに少々納得がいかないが、仕事だ。やらざるをえまい。そういう方向で考えていくとしよう。


「カラス殿、その拘束は、いつまでもつ?」

 磔にしてある男のことだろう。男は、ただ念動力で縛り付けているだけだ。触ることが出来れば脊髄を焼き切るなど出来るだろうが、流石に姿も見えないこの距離では難しい。

「私がこの場から離れなければいつまでも。しかし、麻痺させるなどはしておりませんので、ここから離れてしまえば解けてしまいます。……ああ、麻痺させておけばいいですかね」

「お願いする」

 そうか、何も魔法だけに頼らずとも良い。こんなときのために……ではないが、そういった薬ならばいくつか携帯しているはずだ。

 背嚢を開き、中の瓶のいくつかに触れる。傷薬や解熱剤、消毒薬や血止め。薬がいくつか入っているが、中には毒になるものもある。時間があるときには作り置きしているが、こういう時は便利だ。


「ええと、鎮痛剤……これだ」

「それは?」

 取り出した小瓶の木製の栓を抜いて揺らす。中の透き通った白い液体から飛沫が上がった。

「傷口などに塗って使う鎮痛剤です」

「そんなものを使ったところで……」

 意図が分からないようで、ソーニャは眉を顰める。それはそうだろう。痛みを鎮める薬を普通に使っても、ただ痛みが引くだけだ。そう、普通に使っては。

「霧状にして吸わせると、まず肺が麻痺して息が吸いづらくなります。そしてその後、筋肉まで回ればそちらにも力が入らなくなる。量的にはこの瓶一つ必要だとは思いますが……」

 目の前に作った風の球。その中に、超音波を当てて霧状にした鎮痛剤を封入し、浮かべる。

 ふよふよとシャボン玉が飛ぶように、それを磔にした男の下へ届けた。


 口と鼻の部分から侵入させて、吸わせる。

 狙い通り、抵抗が弱まる。息も絶え絶え、そんな様子が魔力を通して伝わってきた。


「……凄まじいな」

「ええ。銀貨五枚はするでしょう。趣味で作ったものなので、特に対価は取りませんが」

 自分の作品を褒められて、少し嬉しくなる。ソーニャの頬が少しひきつったように見えたのは、何故だかわからなかったが。



「では」

 ソーニャは懐から細い犬笛のようなものを取り出す。というか、見た目は完全に犬笛だ。

「そちらは?」

 今度は僕が聞く番だ。だがソーニャは僕に微笑みを見せると、黙って笛を吹いた。犬笛のように、やはり鳴らない。というか、広がったのは音ではなく魔力波で……。

 慌てて展開している魔力を抑えて、その波の通り道を作った。邪魔をしてはいけない。

「笛じゃない、ですか?」

「……魔道具です」

 端的にそう答えて、ソーニャは空を見つめた。効果は何だ? そう思ったが、その効果はすぐにわかった。

 一羽の鳩のような鳥が上空から舞い降りる。その鳩がソーニャの肩に止まり、首を捻った。

「あとはこちらに任せていただきます」

 対外的な物だろう、丁寧な口調で、僕にそう言う。その言葉に頷くと、もう一度ソーニャは笛を吹く。

 その鳩は、先ほどの男のところに一度止まり、また西へ向かって飛んでいった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 文章は自動保存の利くようなクラウドの文章作成ソフトなんかがお勧めですね
[気になる点] あれ? 魔力圏が最大約100mで、魔力波で魔力を飛ばせる範囲が最大約300mですよね。 大犬を約100m先まで念動力で運んだり、約300m離れた複数の敵を両断したりしていましたし。 な…
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