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捨て子になりましたが、魔法のおかげで大丈夫そうです  作者: 明日
抗争

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僕のいる世界

やんわりとグロ(?)注意

 



 何となく覚えていた違和感に不快感。

 その正体がやっとわかった。どうして、殺さなければいけないと思ったかも。


 回復しつつあった目を閉じて、静かに一歩踏み出す。

「貴方の言う、世界ってどこでしょうか」

「はぁ?」

 聞き返すレヴィン。本当に、意味が分からないという風に。

「この世界を異世界と言った。ならば、貴方のいる世界ってどこです?」

「……っ! 俺は!」

「ああ、やっぱりいいです。わかりきってましたね」

 レヴィンの言葉を遮り、念動力で拘束する。少し伸ばせば手が届く距離。この距離ならば、魔力負けすることは無い。


「僕は、この世界がわりと好きです」

 笑顔で、レヴィンに宣言する。これをはじめに言っておかなければ。

 立ち位置を宣言したからか、レヴィンと僕の間に何か見えない壁が出来た気がした。そこには何もないはずなのに。何も変わってはいないはずなのに。

「美味しい料理や素晴らしい景色。僕は僕なりにこの世界を楽しんでいたんです」


 勿論、楽しめなかったことだってある。貧民街の者に向けられる視線だとか、団栗のシチューだとか。

 けれど。


「この世界にはこの世界のルールがある。この世界の住人の僕は、それに従って生きてきました」

 でも、レヴィンは違う。

 この世界を作り変えようとしている。それも、住民たちが助かるからとかそういう理由ではなく、自分が、元の世界に帰りたいから。


 レヴィンは、まだあの世界にいるつもりなのだ。


「ずっと日本にいるつもりだった貴方は、それを楽しめなかった、でしょう?」

「……テメエも……!?」

「この世界で生きていない以上、この世界に貴方の居場所は無い。多分、本当は僕も」


 そう言い切ると、レヴィンの顔が歪む。嘲るような笑い方で。

「ハッ、馬鹿じゃねえの? 居場所が無い? 居場所なんか作ればいい。現に、この世界を良くしようと努力してきた俺の周りには仲間がいる! 従う部下もいる! 独りぼっちなのはテメエだけなんだよ!!!」

「僕に仲間がいないのは否定しません。今いる仲間の人たちも、邪魔となれば僕を簡単に殺すでしょう」

 レイトンは躊躇しない。多分、エウリューケやグスタフさんも、残念に思いながら。そういった信頼はある。

「ハハ、だろうな! 貧民街の平民崩れ! お前の味方は一人もいねえ! 俺は違う! 今に俺の仲間が助けに来る! エリノアも離脱してここに来るはずだ!! 終いだ! お前も終いだ!!」

 動けず叫びながらも、余裕の表情を湛えている。滑稽だった。


 では、その自信の根拠がなくなったらどうなるのだろう。

「……全員、処理済みなので問題はありません」

「……は? どういうことだよ、なあ!!?」

 仲間がいる。囚われているのにどこか余裕が見えていたのはそのせいか。だが、そんなものを残しておくと思っているのか。

「エリノアさん、というのが先ほどの馬車を襲撃していた人でしょうか。騎士の方が対応していましたが、貴方はそこまで見ていなかったんですね」

「嘘だ!? エリノアが負けるはず……!」

 能力は信頼していたのか、その顔に青みが混じる。それから一転して赤くなり、怒りが混じった。

「ふざけんな! エリノアを殺しやがったな!! 殺す!! 殺してやる!!!」

 もがく力が強くなり、そして若干温度も上がった。体温の上昇、これも魔法によるものか。

 だがその程度、何の問題も無い。


 それにもう一つ、付け加えることがある。僕の言葉をちゃんと聞いていないようだ。

「全員、と言ったでしょう。ルチアさんとやらも……ああ、そういえば名前を聞いてもいませんでしたけど……獣人の姉妹も、既に処理済みです。ルチアさんの方は今頃、という感じですけれど」

 そちらはレイトンが行っている。僕と違って、不覚をとることは無いだろう。

「な……!」


 救援は来ない。それを頼りにしていたのなら、もはやレヴィンに逆転の目は無いのだ。

「……先ほど、独りぼっちなのは僕だけ、と言いましたね」

「……知るかよ、殺してやる! 俺の女を……!!」

「貴方は、どうなんでしょうか」

 返答はいらない、これは僕の自己満足だ。

「貴方の周りに集まったという仲間。その方々は本当に、貴方を見ていましたか?」



 脳裏に声が響く。オルガさんとの会食の夜の、あの時の夢。

 "旦那様には、返しきれない恩がありますから"

 今は多分関係ない。それなのに浮かんだ言葉。本当は関係あるのだろう。その辺りの記憶は未だ曖昧で、さっぱり思い出せないけれど。



 それよりも、今は目の前のレヴィンだ。僕の言葉の意味を図りかねて、またも聞き返してきた。

「ああ?」

「こちらには、一応人体の専門家……? うん、専門家がいますので、モノケルさんの脳を解剖していただきました」

 頼んだのはレイトンだが、別にそれは言わなくてもいいだろう。

 僕の言葉に、レヴィンは唾を飛ばして激高する。

「モノケルさんの死体を!? ふざけんなテメエそれでも人間かよ!!!!」

 いちいち叫んでうるさい。その首を締めあげ、言葉を強制的に止める。今は僕が喋っている。

「結果、魔法により変質した形跡がありました。貴方の言葉に従うように、脳が作り変えられていた。わかりやすく言いますと、《魅了》の魔法で」


 洗脳、調教、色々と言い方はあるだろうが、ここまでのレヴィンの言動を見て、当てはまるのはそんなところだろうと推測する。仲間を惹きつけ、そして従わせる魔法。その目的は多分それだ。


 苦しそうに、それでもレヴィンは言い返した。

「……変質? 知るか、魔法なんか使ってねえよ! あいつらは、俺が……」

「使ってない、ですか?」

 言葉を遮り尋ねる。惚けているのだろうか。今まさに、僕は何らかの魔法を闘気で無効化しているというのに。いや、多分これは無意識に使ってる。スヴェンの体が本人の意思にかかわらず治癒するように。

「俺を信じてついてきてくれてんだよ! それを、テメエが……!!」

「信じて、ねぇ……」


 僕はレヴィンの仲間の姿を思い返す。

 被差別民のミーティア人の姉妹。それを使うものは多くが堅気でないという黒々流を扱う少女。左耳が削げ落ちた金で動く傭兵。

「僕にはそうとは到底思えませんが」

 もちろん、心を通わせて友誼で動くことはあるだろうが、出会いは違うだろう。

 身分が違う。立場が違う。簡単に言えば、レヴィンよりも下の立場の者たち。

「……何故、そのミーティアの方や黒々流の方だけなんです?」

 その魔法があれば。もし無意識に使っているとしても、現実には誰でも仲間に加えられるのに。それなのに、何故。

「はっ、信用できねえ奴らを集めて何になるよ! 俺の仲間たちは……」

「ま、その辺はどうでもいいんですけど」


 どんな理由があるかは薄々想像がつく。けれど、どうでもいい。

 本人は絶対に認めないだろうし。


「話が逸れましたね。まあ、簡単に言えば、貴方の仲間たちが貴方に向けていた態度。その全てが本物、というわけじゃないんですよ」

「くだらねえ嘘ついてないでさっさと俺を解放しろ! 殺してやる!!」

「それは怖いので外しません」

 力は一切緩めない。二度も逃がしている。レヴィンとの因縁は、今日で最後だ。


 僕は溜息を吐いて、それからわざと憐れむような声音で口に出す。

「……想像するに、多分すごく幸せだったと思うんですよ。誰も貴方には逆らわない。貴方が一声指図するだけで、殆どの人は素直に聞いてくれるんです。生まれも育ちも貴族階級、何一つ困ることは無い」


 羨ましくはある。何者も自分を邪魔しない優しい世界。

 それが自らの魔法によって維持されていると気が付かないのであれば、天国に近いのではないだろうか。



 ゆっくりと目を開ける。もう、肉眼での視界は完全に元に戻っていた。

「というか、さらに話が逸れてましたね。そう、貴方は僕の好きなこの世界を異世界と言った」

「何が悪いってんだよ! うるせえ、殺してやる! 殺してやる!!」

 語彙の少ない叫び声。考える余裕もないくらい、本気なのだろう。

 自分を支える仲間たちは、レヴィンにとっては世界の一部だ。その自分の世界を守るため、レヴィンは本気で怒っているのだ。この世界ではなく、自分の世界を。

「別にこの世界が貴方にとって異世界であることもどうでもいいんです。そして貴方がこの世界に持ち込んだ技術。それがこの世界の人間の手で必要に応じて広がるのも構わない。けれど……」


 良かれと思って広まった技術。それが勝手に広まったのならば、それは必要な技術だったということ。つまりそれは、いつか開発される技術だ。でも。

 再び口を塞ぎ、強引に黙らせる。そうだ、僕が今感じている感覚。それは多分、僕にしては珍しい。



「人を強制的に従わせる魔法。その魔法を使う()()()()()の貴方がこの世界にいる限り、この世界はどんどんと異世界に浸食されてしまう。僕はまだ、この世界を楽しみきっていないのに」

 敵意を込めて、レヴィンを睨み付ける。なんだか新鮮な感覚だった。


「だから、僕と貴方は同じ世界にいることは出来ません。それは、僕の側からお断りします」



 睨み返してくるレヴィン。僕の話など殆ど聞いてはいないだろう。

 でも、言いたいことは言った。これで十分だ。ふう、と一息吐く。

 もはや、レヴィンの言い分を聞く気も無い。


「では、お待ちかねの解放といきましょうか」

 拘束を解く。その、首から上だけ。

「……もうお会いすることは無いでしょう」

 というか、会いたくない。これは使命感か。トントンと少し跳ねながら、間合いを取る。問答していた距離から半歩近づけば、ちょうどいい距離になった。……もう少し足が長ければなぁ……。


「なん」

「さようなら」



 軸足の左に力を込めて、右足を振り上げる。首から上を蹴り飛ばす。左側頭部を右から左へ、力を込めて。

 伸びる首、そしてブチンと神経や血管、軟骨が切れる音がした。



 ゴロゴロと転がっていく金色の髪の毛。拘束を続けている胴体の方はビクンビクンと痙攣する。

 噴き出し襟元を汚す血は、やはり貴族の者でも赤い血だった。





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[気になる点]レヴィンが自分の能力に気付いてないというのは無理がありませんか? モノケルは自領で接している内に自然と・・・とかまだ言えるでしょうけど それこそオトフシのような初対面の超一流の探索者がい…
[一言] うあぁぁあぁあ チャーム魔法でハーレムモテモテで空しくないのかとか感想書いちゃった者ですが、なんとまあ無自覚垂れ流しパッシブスキルだったということか~ よくある貴族の末っ子子息に異世界転生し…
[良い点] 待って、今気づいた。どの時点から〇〇〇〇の存在を作者さんが考えていらっしゃったのかはわからないのですが、 レイトンがいる=〇〇〇〇がいるってことでいいですか? ワンチャンこの時点で〇〇…
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