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捨て子になりましたが、魔法のおかげで大丈夫そうです  作者: 明日
抗争

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火を扱う

 


 簡単な指示。それ故に作戦会議も短い。

 イラインに点在するレヴィン一味の隠れ家。それらの場所を頭に入れた後、僕らは一時解散となった。

 ……しかし、点在する敵の基地は五つとそれなりに多かった。それに今まで気が付かなかったのは、本当に隠蔽が上手かったというか、そういうことなのだろうか。


 エウリューケは『準備ー!』と言いながら姿を消した。レイトンも、適当に挨拶をして店を出ていく。

 それぞれ、必要な準備があるのだろう。作戦開始まではきっと、思い思いに待機するのだ。



 では、僕もとりあえず街の中へ……と思ったそのとき、グスタフさんから呼び止められる。

「そうだ、カラス。こいつを返しておかなきゃな」

 グスタフさんは横にあった引き出しを軽く漁り、中から銀色の金属を取り出した。そういえば、預けていたか。恭しくその鍵を受け取ると、そんなに長い間預けていなかったにもかかわらず、慣れない感触が手に触れた。

「ありがとうございます」

「おう」

 僕の家の鍵。一時帰宅するにしても必要だろう。こんなに早く戻ってくるとは思わなかったが。

 背嚢に鍵をしまう僕を見ながら、グスタフさんは少し俯いたように見えた。


「呼びつけといてなんだが……レイトンに任せといてもいいんだぜ?」

「いえ、僕も出ますよ。わけもわからず殺されかけた以上、仕返しはしませんとね」

 直接的な因縁はほぼ無いが、それでもいきなり喧嘩を売られた挙句、もう関わらないという約束は反故され今度は殺されかけている。そんな男からの『邪魔をするなら容赦しない』という通達は、挑発されたと捉えてもいいだろう。

 ライプニッツ領で負わされた汚名も、恐らくもう返上できないのだから。

「そうか。じゃあ、存分にその力、使わせてもらう」

「はい。わかりました」


 楽な殲滅戦。きっとそうなるだろう。

 モノケルという予定外の戦力が判明したが、グスタフさんやレイトンに動揺は見られなかった。そして、さらに石ころ屋にはエウリューケやニクスキーさんもいる。騎士団や衛兵、魔術師たちの中で抜きんでた者たちも到達できない領域の者たちが複数いる。戦力が劣っていることを飛車角落ちと表現するが、むしろ石ころ屋には歩の代わりに飛車と角が配置されている。負ける道理はない。


「それと、一応これも忠告だ。無いとは思うが、今日は大っぴらに姿を見せるんじゃねえぞ。お前の面は割れてんだ。標的の隠れ家を攻撃するなんて以ての外だからな」

「その辺りはお任せしますので大丈夫です」

 その役目はエウリューケのものだ。先ほどの指示通り、僕は待機。それはわかっている。



 非常時には連絡も来る。

 ならばその間、僕も準備をしなければ。装備の点検、腹ごしらえ、することはある。

 とりあえず、帰ろう。僕は石ころ屋を出て、自宅へ向かった。





 自宅で簡単な準備を済ませた後、僕は姿を隠したままレヴィンたちの隠れ家を見て回った。

 遠目ではあるが、全ての位置を確認し、襲撃に備える。何度も襲撃を受けたが、今度は僕が襲撃する番だ。

 隠れ家とはいうが、それは全て普通の街中にある。

 商店や工房の一部を間借りして、中には雑多に増築された建物の隙間に秘密裏に作られたようなものあったが、いずれにしろ全て周りは普通の街だった。一般の人が暮らし、汗を流しながら今日の糧を得ている。小さな子供はまだ何も知らずに笑って走り回り、子世代に仕事を任せた老人たちは、優雅に集まってお茶を楽しむ。

 そんな中に、レヴィンたちのような者の住処がある。ただ自分が逃げるためだけに建物を倒壊させ、中にいた、何の罪もない人間を殺しかけた。周囲の建物に火薬を仕掛け、名も顔も知らぬ人間をいつでも殺せるような状況を作り出した、そんな奴らの住処が。



 なるほど、やはり悪党は住み分けなければならない。

 必要悪や相対悪など、そんな区分の話ではない。何も知らぬ人たちには、そんなもの無縁でなければならないのだ。人の住む隣に、火薬庫があってはいけない。悪党は、隔絶した場所にいなければ。


 今回、エウリューケが行うことによって、この周囲の人たちは危険に陥るだろう。怪我人も、死人すらも出るかもしれない。

 一般の、何も知らぬ人たちを危険に晒す。それはレヴィンたちも石ころ屋も変わらない。


 だからこそ、この街でそんな悪人たちは石ころ屋だけでなくてはならないのだ。

 レヴィンは、衛兵たちにも騎士たちにも焼かせない。レヴィンを焼くのは、僕たちだ。


 この街で最低の悪党は、石ころ屋でなくてはならないのだ。




 そうして待った次の日。当然、事態は動く。

 街の北側、僕の担当地域に待機していた僕の視界の中で、レヴィンたちの隠れ家が燃え盛る。

 それを確認した僕の下に、一羽の鵲が舞い降りた。




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