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捨て子になりましたが、魔法のおかげで大丈夫そうです  作者: 明日
抗争

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早く急いで

 



 結局、追手は来ることなく僕らは平穏な朝を迎えた。


 警戒していたのが馬鹿らしい、とも思うが仕方がない。警戒は必要だった。

 それは、喫茶店へ衛兵たちが集結する速度が異常だったからだ。喫茶店が潰れて僕が救助を終えるまで。五分も立たぬうちに喫茶店が包囲された。

 それが、誰の何の干渉もなく行われたものであれば、それは褒め称えられるべきだ。イラインなどでは到底期待できない衛兵たちの練度の高さ。

 そう、警戒は欠かせないはずだったのだ。彼らの練度が本当に高かったのならば。


 今となっては、警戒していたのは本当に馬鹿らしい。

 ここは、街の明かりが確認できる範囲。もしも、建物を一つ倒壊させた上に中の人物に大怪我を負わせる凶悪犯相手ならば、当然捜索しなければいけない範囲だ。仲間を得て逃走しているのならば尚更だ。


 しかし、来なかった。衛兵など、誰も。



 ならばやはり、あの迅速な集結には誰かしらの意図が……、いや、もう確定でいいだろう。仮面の男の意図が入っていたと見て間違いない。

 事前に知らせて待機していたからこそ、僕の逃走前に現場に駆けつけることができたのだ。

 そして、仮面の男は姿を消した。近くにいる僕を警戒してか、衛兵たちに追撃の指示を出さなかった。それは僕を取り逃すと思っていなかったのか、それとも取り逃しても構わないと思っていたのか。追えという指示を出さなかったのか、追うなという指示を出したのか。その辺はわからないが、そんなところだろう。



 『指示がなかったから僕を追わなかった』などという無能な衛兵がいるとも思いたくないので、後者だと信じたい。だが、そんな気もする。

 そう思ったほど、この街は平和すぎた。

 夜道の安全を担保するはずの街灯が暗かった。それが僕のこの街に対する一番の印象だ。





「三日目ともなると、やっぱり固いっすなー、おにぎり!」

 肌寒い朝の空気から身を守るように焚き火を囲む。厚手の生地を重ねて着ているエウリューケが寒いとは思えなかったが、火をつけるとすぐに寄ってきた。そして、懐から取り出したおにぎりを渋い顔をして齧り、水を一気に飲み干す。ぷはー、と息を吐き出す姿は、どこか親父臭い。


 僕が食べるのは、夜のうちに捕まえて処理しておいた蝙蝠だ。ほぼ鼠肉のような味だが、ちょっとコリコリしている感がある。丸焼きにした頭を噛み砕けば、トロリとした甘い味が口の中に広がった。




 口の中が落ち着き、会話が出来る雰囲気になったところで僕が口を開いた。

「で、そのエウリューケさんが、何故こんなところに? まさか、通りがかったとは言わないでしょう」

 まさかレイトンと同じとは言うまい。それに、突然僕の横に転移してくるなど、偶然するわけがない。

「そうだねぇ、君も予想しているとおりだよ、正解!」

「何にも言っていませんが」

 勝手に納得したように、僕に向けて笑顔でサムズアップをするエウリューケは、僕の言葉に口を大きく開けた。どうしよう、この人話し辛い。

「ありゃ、じゃあ説明必要かー、面倒だけど仕方ないなー」

「お願いします」

「はいはいー。んで、簡単に言うと例の姉妹の行方が分かりそうなんだ。君が手配したミーティア人の資料が予想外に役立つみたいで、じっちゃんが『もうすぐ見つかるから呼んでこい!』ってよ」

「へえ!」


 僕も驚きの声を上げる。まだあれから三週間と少ししか経っていないのに。

 僕がアウラと周辺の観光を楽しんでいるうちに、もうサーロは仕事を済ませていたのだ。

 だが、今の言葉からすると。

「では、まだ見つかってはいないんですね」

「そんな感じだねぇ。でも、資料には元の名前も生い立ちも他にも色々とあったから、すぐ見つかるよん。むしろ見つからなかったら驚きだ!」

 自らの頭を挟むように両拳を当てて、エウリューケは大きく首を振る。よくわからないが、それは驚きのジェスチャーなのか。


「まあそんなところでー、一番速く君を運べるあたしが直々に来たってわけさ! さあ喜べ喜べ」

「運ぶというのは、やはり空間転移で」

「そうさね。イラインからあたしはここまで二日で来たけど……」

 そこまで口に出し、エウリューケは僕を見て何かを促すように瞬きを繰り返す。顔を左右に振りながら、催促の意を全面に押し出した。

「……二日ですか、早いですね」

「ウィッヒッヒー、だろー?」

 僕のやや棒読みになってしまった反応に喜びを返し、ようやくエウリューケは話を続けた。

「君を連れ帰るとしても、三日あれば充分だからねぇ。三回も跳べば、明日にはイラインさ!」

 明日には、という言葉でよくわからないことになっているが、自信満々な様子だ。それから一転して、人差し指を咥えて上を見上げた。

「そうそう、昨日君が受けていた襲撃に関しては君からじっちゃんに伝えてよ。ねー」

「そうですね。ま、実質僕しか関係していませんし……」


 と、エウリューケの言葉で昨夜のことを考えて、重要なことを思い出した、

「そうです、エウリューケさん!」

「んん!? 何だい? 愛の告白なら随時受け付けてるけど! 受け付けてるけど!」

「いえ、急いで帰りましょう! イラインで、奴らは何か騒動を起こす気です」

 エウリューケの言葉を半ば無視し、僕は焚き火を片付ける。その慌てた様子からか、エウリューケも勢いよく立ち上がった。

「騒動? いいねえ、エウリューケちゃんが輝くときだぜぃ!」

「奴らが何をする気なのかはわかりませんが、とにかくお願いします」

 僕に邪魔されたくない、ということは邪魔ができるということだ。そして『あの弓使い』という言葉からして、それは僕に限らず誰でも邪魔できる。


 正直、イラインで騒動が起きようとも殊更に止める気はない。だが、僕を遠ざけようとして、さらに罠にまで嵌めようとした。そんな者たちの行為を見過ごすのは、少し腹が立つ。

 そして、『被害は少し出るかもしれない』という言葉。昨日躊躇なく無辜の民を死なせるところだった奴らの『少し出る被害』とはどれほどのものだろうか。


「寝て魔力も回復したし、すぐに行くぜぃ超行くぜぃ」

 困ってる人に手を差し伸べている、という感じの雰囲気でエウリューケは僕に手を差し出す。

 昨日は一方的に掴まれたが、今日は僕からその手を掴む。


「とりあえず、跳んだらお昼寝するからねー!」

「え」


 景色が変わり、また知らぬ森の中。

 今度は手近な木のうろの中で。またしてもエウリューケは、すぐに丸まって寝息を立てるのだった。



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― 新着の感想 ―
舐めプして嵌められても驕りが消えない主人公 ちょーっと鼻、折られた方が良いかも?(笑)
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