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捨て子になりましたが、魔法のおかげで大丈夫そうです  作者: 明日
お伽の国

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220/937

お伽会議

 



「それで、僕をどうやって紹介しようとしていたんですか?」

 姿を隠したまま、僕はアントルに問いかける。ここで今姿を現すわけにはいかないのだ。

「どうって……、普通に俺の付き添いとして会議場に入れようと……」

「……入れるわけないでしょう……」

 鼻を掻きながら暢気なことを言おうとしているアントルの言葉を遮り、僕は頭を抱える。何か考えがあったと思い、それを使えば楽に入れるかと思ったがそうでもないようだ。


「何でだぁ?」

「この会議は、ミーティアがエッセンと戦争をするためのものでしたよね。要人が集まってるそんなところに、仮想敵国民の僕が普通に受け入れられるわけないじゃないですか……」

 どうしよう。話を聞いてもらうまでも長い道のりだった……。


「……とりあえず、アントルさんは普通に入っていってください。僕はこのまま、様子を見てますので」

「わ、わかった……」

 アントルが頷く。そして、集落に足を踏み入れる。土が露出した集落には、アントルの家と同じような丸いドーム状の家が並んでいた。

 そして、ここには人がいる。人といっても、ミーティア人だ。

 人間の子供程度の大きさの鼠や鳥、僕よりも大きな兎、大の大人よりもまだ大きな牛。数々の動物たちが、皆二足歩行で歩いていた。


 馬もいる。だが、四つ足で歩いているため、ミーティア人か普通の馬か判別が……。


「よぉ、アントル! 今日はいらっしゃったんだなぁ!」


 ……ミーティア人だった。敬語だか何だかよくわからない言葉で、流暢に喋っている。所々嘶きのような発音も入ってはいるので馬っぽくはあるが、それでも人間の声だった。

「おう、日にち間違えてたから、間に合わねぇところだったぜぇ」

「ヒハハ、お前はいつもそれだよ! ま、今日は許してやらぁ。また一杯おごれよ」

「ああ、またなぁ」

 笑顔でアントルは手を振る。当然だが、顔は広いらしい。



 ずんずんと歩いていくその先に現れた、枝を何層にも重ねて作られた一際大きなドーム。その周囲には、門番と同じく犬の兵隊らしき人がたむろしている。ここが会議場だろう。



「……なあ、いつまで隠れてる気だよ?」

「姿を見せて大丈夫だと判断するまで、でしょうか」

 もしくは大丈夫な状況を作れたら、だろうか。だがそこまで言うことはあるまい。

 会議場の周囲には、兵隊以外の人影はほぼなく、あっても偉そうな人とその付き添いばかりだ。一応警備のためだろう、人払いは済んでいる。

「それよりも、もっと小声か、喋らなくとも唇だけ動かしてくれればいいです。一人で喋ってると変な感じなので」

「お……」

 おお、という感じで声を潜めてアントルは頷く。それで、中の様子はどうだろうか。

 そう思い、覗き込もうとした中から一人の犬が姿を現わした。


「珍しい顔だな、アントル。今日は出るのか」

「おう、サーロ! もちろん、間に合ったからなぁ!」

 ガハハと笑いながら返すアントル。……会議場から出てきて親しげに挨拶を交わす以上、このサーロという黒犬はアントルと同じように族長相当の地位にいる人物か。

 ドーベルマンのようなその姿は直立したアントルと同程度の大きさで、筋肉の盛り上がりが薄い皮膚の上からハッキリとわかった。


 族長だけあってよく鍛えられているのだろう。周囲の兵隊と比べると、それなりに鍛えられている彼らの身体が貧弱なものに見えてきた。



「で、勿論今日の議題も……」

「ああ。今日こそ、身どもの発議が可決されることを願う。これ以上、森人どもの好きにはさせぬ」

「……やっぱそうだよなぁ……」

 ぼやきながらアントルが頭を掻く。背筋を伸ばし、精悍な顔つきでアントルを見ていたサーロは、その姿を見て耳をぴくりと動かした。

「いい加減、貴様も賛成しろ。貴様が動けば、中立を気取る者たちも動こう。また身どもら二人で、三百年前のように森人どもを土に還してやろうではないか」

「あー、すまねえな。今はその気はねえんだよ」

「……貴様も、すっかり腑抜けてしまった。その姿を見て、パイア様は何と仰られるか……」

「きっとあの人は、ただ笑って済ますさ」


 アントルはサーロの横を通り抜けるように歩み寄り、そして横に並ぶ。ポンと肩を叩き、軽い口調で言った。

「ま、頑張るんだなぁ。俺は俺で、出来ることをすっからよぉ」

「……可決した折には、貴様にも戦ってもらう」

「ガハハ、そりゃとっても楽しそうで、……とっても嫌な話だなぁ……」


 それから二人は互いに振り向かずに歩いていく。サーロは兵たちのところへ、アントルは会議場の中へ。二人とも、どこか無理をして見えるのは気のせいなのだろうか。




「よっこいせ、っと」

 親父臭い掛け声を掛けながら、アントルは切り株の椅子に座る。円形に並べられたその十二個の椅子の中央には、上で社交ダンスでも踊れそうなほど大きな切り株が置かれていた。


 アントルは唇を動かし、僕に声を掛けてくる。毛で覆われているからと、それと普通に慣れていないのだろう、唇が少し読みづらい。

「……何か、聞きたいことが出来たんじゃねえかぁ?」

「ええ、少し。先程のサーロさんが、宣戦布告を発議した抗戦派でしょうか?」

「その筆頭だなぁ……。あいつが率いている銅犬と、磨猿、あとは翠鳥の氏族が抗戦派だ」

 まだ戦いすら起こっていないのに、抗戦派とは不思議なものだ。


 話している内に、太鼓が鳴る。猿が一定のリズムで太鼓を打ち鳴らすと、続々と人が入ってきた。見た目人間は誰もいないので奇妙な光景だが、これがこの国では普通なのだ。


 切り株の椅子が埋まっていく。兎に鼠、牛、馬、羊、猿、鳥、犬、獅子、そして猪。……本当に、動物園のような、だが動物園ならば同じ檻に入ることはないようなメンバーが揃った。……きっとこういうことを考えるのは失礼なんだろうが。

 そして最後に、中央の切り株から離れた位置に一つだけ置いてある切り株に、ちょこんと狐が乗っかる。人間のように腰掛けていないのは、狐と馬と羊……だけかな? 馬と羊は、切り株に胸を押しつけるようにしなだれかかっていた。


 席も二つ空いてはいるが、それで始まるらしい。もう一度、担当らしい猿が太鼓を強く叩いた。



「それではぁ、これより、先日より続く竜騒動に関する議会を開催する! 発起人、銅犬のサーロ!」

「は!」

 低い声で唸るように金色の獅子が開始を叫ぶ。その声に応えて、サーロが俊敏な動作で立ち上がった。

「かねてより議題として出している、エッセンへの宣戦布告! 今日こそ、ここに集まった者たちの立場が明確になることを願う!」

「……ばかばかしい。まだまだあたしらにはやることがあんだろうによ」

 サーロの言葉に水を差すようにボソリと呟いたのは、鼠だった。全体はクマネズミのような感じだが、胸の辺りが赤い毛に覆われていて、そこだけが僕に違和感を覚えさせた。

 声だけ聞くと、中年の男性かな。


 そちらをサーロはジロリと見ると、一度鼻を鳴らした後軽蔑するような目で睨み付けた。

「では、セルヴォー殿、貴殿は他に何が必要だと? この国の存亡以上に、重要な事があるとでも?」

 だがその視線を、セルヴォーは嘲るように笑った。

「存亡、ねぇ? 存亡なんざかかっちゃいないだろう。たかだか竜が出ただけだ。それよりもあたしらは、まず国の中身を充実させるべきじゃないですかねぇ」

「そのような油断が、国の滅亡を招くのだ!」

「まだまだ、あたしらや翠鳥の一族は日々のご飯にも事欠いているのにかい? ハハ、銅犬さんも暢気なもんだ。明日のことより、未来のことを心配出来るんだもんさ」


 一瞬二人が睨み合う。そこに、おずおずと手が上がった。

「あの、宣戦布告するにしても、戦力とかはどうなんよ? エッセンの戦力や、あてらの戦力は? 勝てる見込みはあんの?」

 ホルスタインのような牛が手を挙げ、そう発言する。そうすると、猿がキイキイとやたら高い声を張り上げた。

「んなもん決まってんだろ! 圧勝(あっしょー)だよ、圧勝! 俺らが負けるわけねっしょ!」

「そんなぁ……私達には、まだ戦えない子たちもいるんですよぅ……」

 気弱そうに、小さな震える声で羊が反論する。その言葉は、誰にも聞こえていないようだった。



 ここまでの時点で、まだ始まって三分も経っていない。

 見た目はファンシーなのに、いきなり議論が始まって、どう見ても統制が取れていない。

 何だろう……なんかこの会議、放っておいても戦争なんて起こらない気がしてきた。




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― 新着の感想 ―
[一言] うむ、これは……あつまれどうぶつのm(うわなにs
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