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いつもの喫茶店で

作者: 春乃 凪那

お昼休憩になると俺は毎日決まって会社から歩いて二分の喫茶店で食事をとる。

いつの間にか日課になっていて、周りに何もないその店はお昼時でも早く行けばお決まりの端のテーブル席に座ることができる。



最近になって、決まって隣のテーブル席に座る女性がいる。

大学生か社会人か判別としないが、恐らくは20代前半と言ったところだろう。

髪は綺麗に後ろで束ねられていて、スキニーというのだろうか、細めのズボンにブラウスを着ていることが多い。

彼女は決まっていつもホットケーキとカフェラテを注文している。


俺はいつも食事を終えて、三十分で席を立つようにしている。

会社の休憩は12時から13時までなのだが、お昼休憩が終わる前に仕事に取り掛かるようにしているので、決まって三十分に出ている。



彼女はいつも俺より先に来て、俺より後で帰る。

ホットケーキを食べ終えると決まって本を読んでいる。

見た目の清楚さと、読書をしている姿が少し近寄りがたい雰囲気を出しているが、どことなく気になるものがあり、俺はいつも彼女が来ていることを確認すると安心する。



居酒屋ならまだしも、喫茶店のテーブル席に隣になるというだけで話しかけるわけにもいかない。

だが時々彼女を見て、彼女も俺が来ることに少しは何かを感じているのだろうか。

そんな自意識過剰なことを考えている。






ある日会社のシステム点検のために午前で仕事が終わった。

今日ならば彼女が何時に帰るのかわかるかもしれない。

俺はそんな淡い期待を込めながら喫茶店に向かった。



いつもより少し早い時間、彼女はまだ来ていなかった。

俺は彼女を待ちわびてそわそわするなどと言ったストーカーのようなことをするわけでもなく、珈琲を飲みながらパソコンを立ち上げた。

いつもは会社と家以外で仕事をすることはないのだが、今日は時間が空いてしまったので喫茶店で仕事をすることにした。


しばらく集中していると、カップが空になったことに気づいた。

ふと隣に目を向けると、いつの間にか彼女が来ていて、ホットケーキは半分ほどなくなっていた。

腕時計に目を向ければ既に12時が過ぎていた。


俺はそこで一旦仕事を切り上げ、珈琲とサンドウィッチを注文した。


サンドウィッチを食べながら店を見渡した。

ふと隣に目を向ければ彼女は既に本を読んでいた。

サンドウィッチを食べ終え、珈琲を飲んだ。


このまま仕事を続けるべきか、それとも帰るか。

その時にはもう彼女の帰る時間を知ろうとしていた気持ちなど消えていた。

入口を見つめようと目を向けると、隣の彼女が腕時計を見ているのが目に入った。

今日は急ぎの用事でもあるのだろうか、それともそろそろ帰る時間なのだろうか。

なんとなく気になって彼女を見つめていると・・・。




「「あっ」」



目があった。




何故彼女がこちらを見たのだろうかと不思議に思って腕時計に目を向ければ、時計は丁度12時30分をさしていた。

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