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世界の半分

作者: 小倉あん

構想2日執筆3時間

たいした量ではありませんが暇つぶしの足しになれば幸いです

 「世界の半分をお前にやろう」


 「断るっ!ボクが欲しいのはっ、、、」


 目の前のくたびれた浴衣のおっさん、いや、『お義父さん』がボクに問うた提案を断り、さらにボクが続けようとしたセリフをはにかんだ笑みを浮かべながらさえぎってくる。


 「キミの望みは知っているよ、言ってみたかっただけさ、【魔王】としてね。」



   -----



 ボクは彼女のご両親に挨拶に行った、一大決心を胸に、


 「お嬢さんをボクに下さいっ!」


 彼女のお義父さんは土下座するボクを制して2人で飲みに行かないか?と誘ってきた。


 場末のスナック、ちょっとお歳を召したママさんにビールを頼んで、お義父さんは言った。


 「私はこの魔国の魔王だ。」と



   -----



 場所が場所なら最終決戦でもおかしくない相手にセリフだが、場末のスナックだと どうにも締まらない。


 「キミの立場は知っているさ、私にも覚えがある、これでも先代の勇者だからね、勇者として魔国に入り魔王を討伐する、聖国の掲げる正義のために。

 ところが国境はおろか魔国内にも悪がはびこる気配が無い、国境では歓迎され、巡回の兵にも襲われず、むしろ他の国に比べると治安もいい。」


 お義父さんは温くなったビールを飲みながらボクに語る。


 「潜入のために魔国王都で仕事をみつけて、何年か様子をみたよ、魔王は力もカリスマもあったが、野心が無い、配下の皆さんもそうだった、いつの間にか私にも恋人が出来てね、まぁ、今のカミさんなんだが。」


 お義父さんの言葉は今のボクに共感できるモノだった、

聖国に勇者として召喚されてここまで旅を続け、潜入と称して魔国の中枢-役所に就職し3年、

聖国・魔国とは何か疑問を抱えながら仕事を続け、かわいい彼女も出来た。


 空になったビールの追加をたのみ、お義父さんの話は続く。


 「カミさんのご両親に挨拶に行って、ビックリしたね、『世界の半分をお前にやろう』って言われたよ、私がキミに言ったように。」


 「え?」


 「私の義理の父親、つまりカミさんのお父さんは先代の魔王様だったのさ。」


 スナックのママが懐かしそうな顔をして話に入ってくる、


 「ふふっ、あのときの当代様はさっきの勇者クンみたいな顔をして固まってたわよね。」


 「まぁねぇ、カミさんは先代様の事教えてくれなかったしねぇ、キミは娘から多少は聞いていたんだろ?」


 「い、いえ、まったくもって初耳でしたが。」


 「あらあら、お嬢さんは奥様似なのかしら。」


 「はぁ、娘にはまいったもんだ、それだと聖国の勇者と魔国の魔王の関係も知らされておらんのだろう?」


 「はい、まったく。」


 「代々の魔王は入り婿でね、私もそうだが、聖国で召喚された勇者だった、いつの頃からそうだったのかはもう知る術すらないが、聖国で召喚された勇者は魔国の魔王の娘と恋仲になり、婿として魔王の座に収まる。 それをもってして魔王討伐となるそうだ。」


 そ、そうだったのか!

しかし、それならば勇者の責務を果たさんと頑張ってきたボクはバカみたいじゃないか!


 「なにやら悶々としているようだが、代々の魔王の娘は己の責務を果たさんと頑張る勇者の姿に惚れるそうだよ?カミさんも お義母さんも 娘もそう言っていた。それでいいじゃないか。」


 「そ、そうですね。」


 「なによりも私の大事な娘が選んだ男性だ、私の大切な世界の半分を預けるに相応しい、頼んだぞ?」


 「え?」


 「あら魔王様、お嬢さんが大切な世界の半分だとするなら、残りの半分は?」


 「そりゃあもちろん、カミさんに決まっているだろう!」


 場末のスナック、場所こそ締まらないが、ママさんとお義父さんの笑い声がボクと彼女の世界の始まりに相応しい声援に聞こえた。


お嬢さんをボクに下さい からの土下座は定番でしょうか?

ちょっと悩みました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、大本営と言います。 末席ながら灰鉄杯に参加させてもらっていますので、皆様の作品を拝見しています。 父親にとって娘を貰いに来た人物は勇者であると共に、ある意味魔王でしょうね。 愛…
[良い点] ほのぼのしました。 [一言] 言われてみれば、というか、このアプローチは盲点でした。ラスボスだからといって苛烈なバトルとかしなくていいんですよね、和みました。
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