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Forget me not  作者: 林檎亭
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青年

精悍な顔つきの青年は1人剣を構えた。

標準的な両手剣を自身の正面よりやや左に切っ先を倒し、前を見据えている。


対面に立つは5人の騎士。

両手剣、片手剣、戦斧、槍、弓とそれぞれがバラバラの武器を手にしていた。


6人は睨み合い、お互いの呼吸を探る。


最初に動いたのは弓を持つ男だった。

常人の目には捉えられない速度で、矢をつがい撃つ。

風を裂きながら迫る矢を前に青年は動かない。

矢は寸分違わず青年の眉間を狙う。

青年はスッと矢の先端に剣をあてがうと、矢は僅かに軌道を逸らし、青年の顔のすぐ横を通過していった。


しかしもちろんのこと彼らの攻撃はこれでは終わらなかった。

矢が放たれると同時に、片手剣の男と槍を持つ女が左右から同時に距離を詰めてきていた。

片手剣の男は胴を薙ぎ、槍の女は足を払いに来た。

中段の剣、下段の槍、ほぼ同時に襲い掛かるその攻撃を青年はバックステップにて避ける。

しかしそれは罠だった。

後方に引いた時、すでに頭上から戦斧が振り下ろされていた。

青年の体制は崩れている。

戦斧を受ける以外に選択肢は存在しなかった。

だが青年の目は見てしまった。

地を這うように両手剣の男が駆けている姿を。

おそらく戦斧を受けた瞬間にその剣は放たれ、がら空きの胴を薙ぐだろう。


そう、これは最初から決まっていた事。

将棋のように一手ずつ相手を追い詰め、最終的に王手を打たれる。

これはこの5人が最も得意とし、未だ破られたことのない詰め将棋。

そもそも最後の一手まで行くことすら少ない。

ここまで粘った青年をむしろ褒めるべきである。

戦斧に砕かれるか、戦斧受けて両手剣に斬られるか。

青年の一瞬後の未来を誰もが想像、いや確信した。


しかし、青年はその未来を裏切る。


青年の行動は誰もがその目を疑うものだった。


青年はこともあろうか剣を投げたのだ。

とはいってもその辺に捨てたわけではない、両手剣の男に向かっての投擲。

斬る体勢に入っていた男は剣を避ける事など出来ようはずもなく、その額に剣を受けた。

青年は目前まで迫っていた戦斧の横腹を拳で叩き、軌道をずらしながら避ける。

本来ならこんな事を許すような戦斧の男ではないが、直前に両手剣の男が倒されたことで、戦斧の男は僅かに怯んでしまい、その決定的な隙を生んでしまったのだ。

青年は戦斧を払った拳をカウンター気味に男の顔面に叩き込む。

全体重を乗せて攻撃を繰り出していた男は自らの体重と速さで、意識を断たれた。


青年は投げた両手剣を素早く拾うと、構えなおしていた片手剣の男と槍の女へと攻撃対象を移した。

間合いに入られる前に槍の女は、槍の最大の長所である射程を生かし、鋭い突きを放った。

が、突いた所にすでに青年の姿はなく、青年は片手剣の男に迫っていた。

片手剣の男は応戦すべく剣を振るが、青年にいなされ、上段蹴りを食らうことになった。

槍の女はすぐに槍を構えなおし、青年に攻撃しようとするが、そこで動きが止まった。

蹴りを食らった片手剣の男が青年と槍の女の間に倒れこんできていたため、青年を攻撃することが 出来なかったのだ。

その一瞬の躊躇いは致命的な隙となり青年の接近を許してしまった。


だがそこで矢が青年を狙った。


矢を交わせば再び槍の間合いに入られ、槍の女を倒せば矢が青年を倒す。

そこで青年は剣を振ることなく、そのまま槍の女に突進した。

矢は青年の後頭部を掠め、槍の女は体当たりの衝撃で反撃どころではなかった。

体勢が大きく崩れた槍の女に冷静に青年は止めをさし、弓の男に向き直る。

この時点で数の優劣はなく、純粋に弓の男と青年のみが相対することとなった。

両者の距離は10Mほど。

弓の男は考えていた。

いかに間合いを詰めさせずに遠距離から攻撃し続けるか、を。


しかしそれはある思考の欠落。


青年は体を沈めたかと思うと伸ばした手で、槍を掴んだ。

アンダースローで放たれた槍を弓の男は反応しきれず、腹部に受けた。

弓の男は「自身が遠距離攻撃を受ける可能性」を全く考えていなかった故に反応が遅れてしまった。



こうして1分にも満たない時間で、5人の騎士たちは青年に倒されることとなった。


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