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クリムゾンな思考な策略家

帝国西部にある、極々普通な町、カレンカレン

 町の食堂で、商売のあがりを数えるクーパ。

「うん、普通に商売できた、良い日だったな」

 ウドンが咎める視線を向ける。

「皇后様のお名前を使って普通というのか?」

 クーパがあっさり頷く。

「あのアクセサリーを叔母さんが使ってたのは、本当だし、偉い人や有名人の名前を使うのは、普通だよ」

 オシロがスープを飲みながら言う。

「でも、どうして商人なんてやってるの? 輝石剣士なんだから、冒険者や何でも屋が妥当じゃないの?」

 クーパが苦笑をする。

「残念だけど、それだと目立つんだよ。皇帝陛下に近い位置にいる輝石剣士が冒険者や何でも屋をやってるのは、不自然だからね。それにあちきは、商売が好きだからだよ」

 そんな普通の会話をしていた所に、一人の農民が現れる。

「親衛隊隊員様!」

 そう言って、ウドンに縋りつく。

「どうか、どうかおらの村を助けてくだせい! おらの村は、ここより数日のところにあるんだが、山賊に襲われ、子供達が人質にとられたんだ。どうかお救い下せい!」

 その言葉にウドンの顔が真剣になる。

「ほおっておけないな。道案内は、頼めるか?」

「もちろんだ!」

 その農民の返事を聞いてウドンは、オシロの方を向く。

「すまないが先に行ってくれ。直ぐに追いつく」

 オシロが頷いて農民についていくのを見送ってからウドンが言う。 

「罠だな」

 頷くクーパ。

「でも噛み破るつもりでしょ。万が一の時は、花火を上げさせて」

 頷いてウドンが出て行く。

『狙いは、お前の方の可能性もある。お前の警護を外させる為の囮だとしたら、来るぞ』

 胸のペンダントからの声に眉を顰めるクーパ。

「そろそろ、約束の期間が過ぎるから、来る頃だと思ったけど、らしくないやり方。ボンだったらその実力から、正面からの戦い以外は、しないと思ったけどな?」

『セル=ドロスが、痺れを切らして後押ししてきたと考えるのが妥当だな。そうなると本人より、周りの人間に気をつけるべきかもな』

 ペンダントからのキキの声にクーパが真剣な顔をして言う。

「冗談、もし本当に戦いになったら、ボンが一番危ないよ。実力だけは、高いからね」

 そして立ち上がり店をでたクーパの目の前に一人の人の良さそうな男が立つ。

「大人しくついて来てください。拒否権は、ありません」

 男が指を鳴らすと数人の男が輝石を掲げる。

 クーパが鋭い目をして言う。

「ここでやらないのは、自分達があちきを殺した証拠を残さない為、全てを輝石剣士同士のいざこざで終らせたいって訳だね?」

 男は、微笑み答える。

「理解が早くて助かります」

 クーパは、男が示す道を進んでいく。



 そこは、大きな空き地であった。

 何も無いそんな空き地にボンが居た。

「気に入らない」

 それがボンの正直な気持ちであった。

「失敗したお前にそれを言う権利は、ない」

 ボンの監視役の男の言葉に、ボンが鳥輝を向ける。

「口には、気をつけろ」

 監視役の男が余裕たっぷりの態度で言う。

「ここで俺を殺せるつもりか? そうなれば、この周りにいる俺の仲間が……」

 その言葉が終る前にボンが輝石を取り出す。

『サファイアよ、その力、水の力を我が剣に宿せ』

 男が慌てる。

「待て! 死にたいのか!」

 ボンが剣を振るうと、届く筈の無い男の仲間達がどんどん倒れていく。

 最後の一人になった男にボンが告げる。

水連暫スイレンザン。まさか輝石剣士をこの程度の人数で倒せるとでも本気で思っていたのか?」

「セル=ドロス様に逆らうつもりか!」

 最後の抵抗と上司の名前を口にする男に鳥輝が振り下ろされた。

「最初から従うつもりなど無い」

 拍手をしながら、クーパを先導した男が来て言う。

「さすがは、ボン様。お見事な腕前で」

 クーパが周りの死体を見て舌打ちをする。

「あんた業とこんな馬鹿を配置したでしょう。ボンが自分達側に居ない事を証明する為だけに」

 男が肩を竦めて言う。

「邪推ですよ。それでは、後は、二人で決着つけて下さい」

 下がる男を無視してボンが言う。

「今度こそお前を殺す。全ては、我が主の為だ」

 クーパも蛇輝を構える。

『我が戦いの意思に答え、我が前に戦いの姿を示せ』

 長剣に変化した蛇輝を構え直してオニキスを触れさせる。

『オニキスよ、その力、闇の力を我が剣に宿せ』

 クーパが蛇輝を振るうと、闇が周囲を覆う。

闇幕舞アンバクブで、視界を塞ぎ、不意打ちをするつもりか?」

 ボンが鳥輝を振るうと金属音と共に闇が晴れる。

「逃走するつもりだったんだけどな」

 クーパは、大きく距離をとって居た。

「逃がさない!」

 ボンが一気に駆け出す。

 クーパは、慌てて蛇輝にタイガーズアイを当てる。

『タイガーズアイよ、その力、雷の力を我が剣に宿せ』

 クーパが篭った雷を大きく振って開放する。

雷乱波ライランハ

 乱れ飛ぶ雷の波紋にボンは、鳥輝に水を纏わせる。

水帯斬スイテイザンで剣の力を上げても、水では、雷撃は、防げないよ」

 クーパが次の攻撃の準備をしようとした時、雷の波紋を弾きながらボンが近付いて来た。

「純粋な水は、電気を通さない。自分の技術の低さに判断を誤ったな」

 クーパの体に鳥輝の水が迫る。



「詰り、依頼されたんだな!」

 ウドンは、山賊の頭に剣を突きつけて言う。

 山賊の頭が必死な顔をして言う。

「そうだ、馬鹿な兵士を二人送るから、足止めしろと言われただけだ!」

 ウドンが山賊の頭を気絶させる。

「どういうこと?」

 ザコを殆ど一人で倒したオシロが首を傾げる。

 ウドンが駆け出す。

「やばい、狙いは、クーパだ、急いで戻るぞ!」

「嘘! もしクーパにもしも事があったらあたし等どうなるの!」

 後を追いながらのオシロの言葉にウドンが真剣な表情で答える。

「俺が腹を切って責任を負う。お前は、新しい仕事を探せ」

 唾を飲み、足を速めるオシロであった。



「実力の差って奴だね?」

 地面に倒れるクーパに鳥輝を向けるボン。

「これで終わりだ」

 クーパが悔しげに言う。

「情けないな、最後には、頼っちゃうんだもん」

 その一言に殺気を感じたボンが離れた時、クーパの胸のペンダントが輝き、クーパの目付きが変わる。

『ここで、クーパが死ぬことは、誰にとっても良くないのでな』

 ボンは、全身に走る鳥肌を無視して、鳥輝にダイヤモンドを当てる。

『ダイヤモンドよ、その力、光の力を我が剣に宿せ』

 超人的とも思える動きで、接近して広げられた二刀の刃から無数の光が放たれた。

「光弾陣・双烈コウダンジン・ソウレツ。これは、避けられない」

 両側から迫る、圧倒的な数の光の攻撃にクーパは、蛇輝を向けて言う。

『輝石の力よ、剣に戻れ』

 光が次々に蛇輝に吸収されていく。

 信じられない物を見て、動きを止めるボン。

 クーパが蛇輝をかかげる。

光断コウダン

 光が地面を切り裂き、ボンが弾き飛ばされる。

 壁にたたきつけられたボンに近付くクーパ。

「お前は、何者だ!」

 ボンの言葉にクーパ、クーパの体を操るものが答える。

『残念だが、答えられないな。私の事をしる権利は、常に一人だけに与えられる』

 呻くボンに蛇輝を突きつけた所で、クーパが大きく溜息を吐く。

「正直、今回は、あちきの負け。ノーカウントって事にしよう」

 悔しげにボンが頷く。

「そんな中途半端な事が許されると思っていたのですか?」

 クーパを連れてきた男の言葉にクーパが言う。

「ボンが敗れた以上は、何も出来ないはずだよ。ボン以外の方法であちきを殺した場合、ロの怒りを受ける事になるから」

「罪を被ってくれる人間は、居ます。それで十分だと思いませんか?」

 男の答えに、クーパが大きな溜息を吐く。

「策略家を気取ってるけど、今の戦い見て気付かなかったの?」

 男が首を傾げる。

「お二人とも強いのは、確かですが、近付くつもりはありません。この遠距離からの輝石術、人数も揃えさせてもらっています。ご安心あれ」

 男が指を鳴らすと、何処に潜んでいたのか、物凄い数の輝石術士が表れる。

 クーパが頬を掻き言う。

「どうして輝石剣士が陛下の傍に居るか知ってた? 多分しらないだろうな」

「戯言は、十分です」

 男が合図を送ると無数の輝石術が放たれる。

 しかしクーパは、自分とボンに当る輝石術を全て切り裂く。

「輝石剣士がその気になれば、輝石術を切り裂く事が出来るんだよ。特にこの蛇輝を使えば、殆ど無制限にね」

 そう言っている間にボンが復活する。

「次のチャンスに期待しろ」

 その一言に男があっさり頷く。

「了解しました」

 しかし、男の部下の一人が慌てて反論する。

「ヤペ=ハヤシ様、この事がばれたら一大事です! ここは、確実に始末すべきです。いくら切れると言ってもこの数を相手に永遠に斬りつけられる筈がありません!」

 部下の言葉に男、ヤペが首を振る。

「今の一撃で決められなかったら無理なんですよ。それに表沙汰には、出来ませんよ。これは、輝石剣士にとって一大スキャンダルなんですから。元々、彼女にとってもロン様に容疑が向けられるのは、避けなければいけないそうですよね?」

 クーパが渋々頷く。

「ロが暴走する恐れがあるからね。だからといって殺されるつもりもないよ」

 ヤペが残念そうに肩を竦める。

「それは、残念です。我が主は、貴女の死こそが、陛下の心を決断させると思っていられる。次は、確実に殺します」

 ヤペがボンと共に去ろうとした時、一部の輝石術士が暴走する。

「俺達は、死にたくない!」

 それは、ボンの凶行を見ていた故の暴走だったが、だからこそ気付くべきであった、自分達がどれだけ危うい立場だったのかを。

 クーパがサファイアを、ボンがダイヤモンドをそれぞれの刀に当てる。

『サファイアよ、その力、氷の力を我が剣に宿せ』

『ダイヤモンドよ、その力、光の力を我が剣に宿せ』

 最初に動いたのは、クーパ。

氷鏡舞ヒョウキョウブ

 氷が無数に空中に舞い踊る。

「光弾陣・乱烈コウダンジン・ランレツ

 ボンの鳥輝から放たれた光が、クーパの作った氷に反射して本来なら死角に居るはずの術士までも捉えた。

 ヤペが溜息を吐く。

「少しは、頭を使って欲しいものです。チャンスは、あの一度しか無かったのですよ。ボン殿が戦える状態になったら幾ら数が居ようと関係ないという事実くらい」

 大量の死体にも動じないヤペと自分を殺そうとした男と平然と歩き出すボンを見送ってクーパが呟く。

「キキ、訂正。あの男は、危ないよ。多分、ほっておくと大量の犠牲を出す」

 ペンダントの中のキキが答える。

『そうかもしれないな。一度、バンに伝えておく事だな』

 頷くクーパであった。



 町の外れで、ウドン達と合流したクーパは、事情を説明した。

「本当に大丈夫だったんですか?」

 必死にしがみ付いてくるオシロにクーパが頷く。

「なんとかしたから大丈夫。それよりウドン、伝言を頼むね」

 ウドンは、クーパが預かった手紙を持って言う。

「話は、理解したが、それこそ俺が離れて大丈夫か?」

 クーパがしがみ付いてくるオシロを指差して言う。

「これにその手紙を預ける度胸ある?」

 その一言にウドンはなんともいえない複雑な顔をしてから言う。

「出来るだけ早く合流する」

 オシロが眉を顰める。

「二人とも何かあたしの事を馬鹿にしていない?」

 クーパが溜息を吐く。

「事情が複雑だからね、万が一にも余計な人間にばれたくないの」

「複雑って、ロン様の後見人がクーパの命を……」

 とんでもない事を口にしようとするオシロを殴りウドンが睨み殺す視線で言う。

「そんなんだから任せられないんだろうが! とにかく今回の事は、一切口にするな! それと俺が戻ってくるまで、しっかりガードしろ!」

 オシロが瘤を抑えながら頷く。

「あちきは、これから貿易路、ストーンロードを進んでるから宜しくね」

 クーパの言葉にウドンが頷き帝都に向かって急ぐのであった。

クーパの完敗。そして殆ど暴走モード突入勝利って感じです。

多分、気付いている人は居ると思いますが、多分想像とおりです。

あれの秘密能力の一つです。

ところでヤペの名前の由来に気付いた人は、いるかな。

キャラとのギャップが笑いどころなんだけど。


シリアス展開には、行きません。


次回は、商売のお話。

しかし、毎度毎度上手く行くとは、限りません。

クーパ最大の失敗のお話しです。

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