クラウドな誇りの貴族
帝国東部にある、田舎町、トートレン
田舎町をクーパとロが並んで歩いていた。
「幸せってこういう事を言うのだな」
ロの言葉に、隣を歩くクーパが呆れた顔をする。
「自分で言ってて恥ずかしくないの?」
ロが笑顔で頷く。
「ああ、クーパと二人きりでデートできる以上の幸せは、数えるほどしかない」
「当然、その中には、幸せな国民の顔を見ることが入っているんでしょ?」
クーパの意地悪質問にロは、あっさり首を横に振る。
「そんな悪趣味なのは、入っている訳ないだろう」
クーパが少し眉を寄せて言う。
「あなたの立場でそんな事を言っても良いの?」
ロが頷く。
「この広大な帝国にどれだけの国民が居ると思う?」
クーパが首を横に振る。
「正確な数なんて、それこそ帝都の一部の高官しか解らない事だよ」
ロが手を横に振る。
「正確な数といえば、誰も解らない。少なくとも、毎日数千人会っていったとしても、私がその全てを見ることは、出来ない」
クーパが頬をかく。
「まーね。平均すれば、ほぼ同数の増加が考えられるからね」
ロが頷く。
「だから、一部の人間の笑顔を見て、国民が幸せだと思っていると考えるのは、愚かな事だ。私がやらなければいけないことは、部下に正しい報告をさせて、その報告を判断し、よりよいルールを生み出す事だ」
クーパが少し悲しそうな顔をする。
「あちきは、ロのそういう所は、嫌いだよ。それが単なる思い込みだとしても、人との繋がりを持つべきなんだよ」
「すまない、それでも私は、人であって人でないからな」
謝罪の念を込められた一言にクーパは溜息を吐く。
「人として付き合うのは、お前と母上だけだ」
肩に置こうとするロの手を払いながらクーパが言う。
「それにしてもこんな事になるとは、思わなかったよ」
一日前の食堂。
「この町にロが来るの?」
クーパの言葉にミッドが頷く。
「はい、この町で、水の調和竜様のお祭りがあります。それに参加する為に、いらっしゃるそうです」
「あちき、今日中にこの町を出るわ」
クーパの言葉にミッドが縋る。
「お願いですから、一目だけでも会って下さい」
クーパが嫌そうな顔をする。
「前回の事で貸しがあるから、会うと色々面倒な事になるから嫌なの」
ミッドが頭を必死に下げる。
「どうかお願いします」
困った顔をするクーパにウドンが言う。
「頼みごとだけして、知らぬ存ぜぬは、通じないと思うぞ」
クーパが溜息を吐く。
「了解。でも、帝都に戻るとかは、期待しないでね」
「会いたかった」
ロが休む、簡易宿泊施設(田舎では、十分の施設が無いので、簡単に組み立てられる豪華宿泊施設を持ってきている)を訪れたクーパを迎えたロの第一声だった。
クーパは、苦笑して言う。
「元気そうだね。こないだの件は、ありがとうね」
ロは笑顔で答える。
「気にするな。そんな事より、帝都に戻る気は、無いか?」
クーパが首を横に振る。
「あちきは、今の生活を意外と気に入っているの」
ロが真面目な目で言う。
「それは、お前の目を見れば解る。しかし、私は、それに耐えられない。お前の居ないのが辛いのだ」
クーパが呆れた顔をして言う。
「早く御妃様を決めたら?」
ロは、揺ぎ無い顔で言う。
「お前以外に居ない」
クーパは、頭をかきながら言う。
「あのね、いくらあちきが叔母様に似てるからと言っても、別人だよ。それに顔で、御妃を選んだら駄目でしょうが」
ロは、大きな溜息を吐く。
「前から思っていたのだが、誤解していたのだな」
クーパが首を傾げるとロが語りだす。
「お前だけなのだ、私を皇帝陛下としてでは、無く単なるロと見てくれるのは」
その一言にクーパが驚き、素早く傍に居たバンに視線を送る。
「カン親衛隊隊長を除き、この部屋より出よ」
親衛隊のメンバーと侍女達が部屋を出る。
残ったのは、クーパとロ、親衛隊隊長カン、側近のバンそして、専属侍女のムーメだけだった。
「気を使う事は、無い。この程度の事は、誰もが気付いていること」
ロの言葉にカンが答える。
「陛下の弱気な発言を下の者に聞かせる訳には、行きません」
苦笑するロ。
「その程度で揺るぐ程、私の力が弱いと思ったか?」
カンとバンが言葉に困るとクーパが言う。
「最善を尽くす、それが臣下の者として当然の事だよ」
ロは、そんなクーパを見て言う。
「その言葉が私をどれだけ救うか、お前には、解ってなかったようだな」
クーパが困った顔をしているとムーメが言う。
「私達も外に出ましょう」
バンもカンもムーメの言葉に従い外に出て行く。
「バンも親友だが、最終的には、皇帝陛下として私と接する。だが、お前だけは、従兄弟のロが基本で動いている。それが、どれだけ嬉しい事か」
ロの独白にクーパが複雑な顔をして答える。
「それでもロは、皇帝陛下なんだよ。もしもあちきと結婚したらどうなるか解るでしょ? 皇宮に血の雨が降る。あちきは、それに耐えられないよ」
ロがクーパを強く抱きしめた。
「私が護る。お前を苦しめる全ての者から護り通す。お前が望まないのなら、皇宮にも血の雨など降らさせない。私は、それだけの力を得ている。いつまでも単なる若様では、ないのだ。安心しろ」
クーパが少し思案したのちに言う。
「もし本当にそうなら、後は、あちきの気持ちだけだよね?」
ロが頷く。
「お前がどうしても私の事が好きでないのなら、好きになってくれるまで待つ」
クーパが笑顔で言う。
「だったら、ロの個人的な魅力みせてよ」
「個人的な魅力?」
ロが首を傾げる。
「絶対反対です!」
カンがクーパの提案を断固拒否した。
ロが強い口調で言う。
「これは、私の決定だ、逆らう事は、許さない」
カンもそれには、黙るしか無く、バンが嫌そうな顔をして言う。
「それでは、クーパから絶対に離れないで下さいね。いざと言う時には、クーパが貴方をお助けします」
その言葉に不満気な顔をするロ。
「それは、男として問題があるだろう」
バンは断言する。
「間違いなく、クーパの方が強いのですから諦めてください」
そこにクーパが入ってくる。
「ロ、服を手に入れてきたけど、どうする? 止めるんだったら今のうちだよ」
それに対してロが胸を張っていう。
「誰が止めるものか。男として、自分の魅力で恋人を満足させられなくてどうする」
周りの人間がクーパに敵意を向ける。
クーパが服を置いて部屋を出た。
その後にバンがついてくる。
「どうして明日、皇帝陛下でないロとデートをするなんて事を提案した?」
クーパが答える。
「いい加減にはっきりさせたかったのかも。上手く行っても失敗しても、あちきもロも納得すると思うよ。そうすればいままで見たいな事は、なくなるよ」
バンが小さく溜息を吐く。
「そうかもしれないが、万が一の事があったらどうするんだ?」
クーパが強い目で答える。
「その時は、あちきが命に代えてもロを護るよ。元々輝石剣は、大切な人を護る為の剣だもん。それに視界に入らないレベルで付いて来るんでしょ?」
バンが視線を逸らして言う。
「仕方ないだろう。間違っても出歯亀する気持ちは、無いぞ」
「最初から心配してないよ。でも、あちきが動けなくなるまでは、出ないでね」
クーパの言葉にバンが頷く。
「そのくらいの分別は、ある」
クーパとロは、そういった事情で二人だけでデートをしていた。
「ほら、あそこのお菓子どうだ?」
ロの言葉にクーパが少し考えてから言う。
「ねえ、ここで使うお金をロが、自分が労働して稼がない? 働いていないなんて言わないけど、ロ個人の力で稼いだお金で奢ってほしいな」
ロが少し考えてから、周りを見回して言う。
「解った。任せろ」
そういって、近くのお面屋に行くと、店主に話しかける。
「ここに出ているお面を全部売ったら、売上の一割を報酬として貰っていいですか?」
店主が呆れた顔をして言う。
「いいが、そんな事は、絶対無理だよ」
それを聞くとロは、自信たっぷりに答える。
「大丈夫、三十分後には、ここのお面が全て売れていますよ」
首を傾げる店主を尻目にロは、クーパを連れて、その場を離れていく。
「どうですか? ちゃんと売り切れたでしょ」
ロの言葉に驚いた顔をする店主。
「どんな手品を使ったんだい?」
ロは、唇に指を当てて言う。
「秘密です」
そして、一割の礼金を貰って、その場を離れる。
「少し離れた複数の場所で首都では、あのお面を腰の後につけるのが流行りだって嘘情報を流して、購買意欲を起こさせるなんて始めてみた」
クーパも感心するとロが説明を開始する。
「人は、情報を判断する時に大事にするのは、聞いた相手なのだ。誰だったら信じられるみたいに。だから、一箇所から広がる情報では、信じる人間と信じない人間が生まれる。しかし、複数の場所から発生すると、情報源が複数生まれ、それが信用を高めていく。それが、自然と情報の広がりに繋がる」
クーパが小さく溜息を吐く。
「ロに商才で負けるなんて、少し複雑」
苦笑するロ。
「クーパは、最終的には、誰もが儲かる道を模索するからな。本当に商売で成功したかったら、相手を破滅させる覚悟が無いと駄目だ」
嫌そうな顔をするクーパ。
「痛いところ突いて来るんだ」
ロが頷く。
「下手に褒めたてもクーパは、喜ばない」
渋々頷くクーパ。
「相手が悪人だったら、少しは、痛い目見せても良いかもって思うけど、そうじゃないとどうしてもね……」
ロは、落ち込むクーパの耳元で呟く。
「そんなクーパが好きだよ」
「……馬鹿」
顔を赤くするクーパ。
そんな二人の前に、小さな姉妹が通りすぎていく。
「可愛いね」
クーパの言葉にロが頷いた時、その姉妹に向って馬車が突っ込んでくる。
クーパが慌てて、駆け寄り、姉妹を救う。
「大丈夫?」
恐怖で泣く姉妹を宥めるクーパ。
そして、馬車が止まり、傍を併走していた騎士の一人がクーパ達の所に来て言う。
「無礼者! この馬車がアイダホ男爵の物と知っての狼藉か!」
町民が怯える中、クーパが強い目でにらみ返す。
「馬鹿を言うのもいい加減にしなよ。街中でそんなスピードで場所を走らせるのは、想像力が無い馬鹿だけだよ」
「謝罪もせず、なおも無礼な口の利き方、ここで処罰する」
クーパが蛇輝に手を伸ばそうとした時、その前にロが立ち塞がる。
「その言葉、冗談だろう?」
騎士は、ロを見下した態度で答える。
「邪魔立てするとお前も処罰するぞ」
ロが肩をすくめて言う。
「そんな事をすればお前の主が逆に罰を受ける事になるのだぞ」
騎士が逆上する。
「何故、お前等みたいな愚民の為に我が主が罰を受けないといけないのだ」
ロが淡々と答える。
「全ての帝国民が、皇帝陛下の臣下、それを裁判せずに処刑する、不届き者が配下に居れば、監督責任にとられるのは、当然だろう」
周囲の町民は、驚くが、騎士は、平然と言う。
「そんな話は、十年以上騎士をやっているが知らん」
肩をすくめるロ。
「アイダホ男爵といえば、二年前の戦争で帝国に協力して帝国入りした貴族。他の国の常識で判断するのは、止めてもらいたいものだ。正直、がっかりした、部下の躾もちゃんと出来ない無能者だったなんて」
騎士が激怒する。
「何を根拠にそんな台詞を吐く!」
ロは、緩まぬ視線で答える。
「お前のその態度が、そう結論させる。真に主を思うのなら、己の態度を省みる事だな」
高まる緊張、クーパは、姉妹を逃がして蛇輝を何時でも抜ける体勢をとる。
「そこまでだ、その者は、弁が立つようだ」
そういって、馬車からロと同じ年頃の青年が出てきた。
「挨拶をしておこう、我こそは、アイダホ男爵の子息、トポテ。貴様の言葉は、確かにあっている。しかし、現実を見ることだ。お前みたいな下賎の者が死んだところで我の力を使えば、いくらでももみ消せる。今だったら我の靴を舐めれば許してやるぞ」
それに対して、ロが少し考えていう。
「そうすれば、この場の事は、無かった事にしてくれるか?」
クーパの顔に緊張が走る。
「駄目、そんな事をしたら駄目!」
ロが振り返り笑顔で答える。
「相手にも意地がある。誰にも被害が出ないのなら、こっちが折れても良いだろう」
「そういう問題じゃなくて、あんたがそんな事をしたら」
無言で唇に指を当てるロ。
トポテが偉そうに頷く。
「良いだろう。我が靴を舐めれば、この場の事は、無かった事にしよう」
「了解した」
ロは、トポテに近づき、その靴を舐める。
クーパの全身から冷や汗が流れ出すのを感じた。
トポテが馬鹿笑いをあげて言う。
「情けない男だ! 恋人の前で人の靴を舐めるなどプライドが無い下賎の輩は、やはり人間では、ない。人間では、ない者との約束は、守る必要も無いな」
トポテがロの顔を蹴る。
そして先程の騎士に命ずる。
「お前、その娘をこの場で犯せ! 我に取引を持ちかけた下賎の輩に自分の身の程を知らせてやれ」
邪悪な笑みを浮かべて騎士が言う。
「了解しました。こんな眼鏡の小娘など、立ちもせんが、主の命令だしかたないから、抱いてやる。光栄に思え」
「止めろ」
ロが制止しようと立ちあがろうとした時、他の騎士がその槍でロを地面に押し付ける。
「そこでじっと見ていろ。あんな下賎の女だ、人間様に抱いて貰えば喜ぶぜ!」
クーパは、深い溜息を吐いて言う。
「助ける気も無くなる」
「だろうな、さあ、抵抗しなければ天国を見せてやろう」
クーパの助ける相手を誤解して居る騎士をクーパは、肘打ち一発で黙らせると蛇輝を構える。
『我が戦いの意思に答え、我が前に戦いの姿を示せ』
刀に変化した蛇輝でロを押さえつけていた騎士の槍を弾き、手を出すと、ロがその手をとり起き上がる。
「あんな蹴りくらい避けてよ。あちきが怒られるんだからね」
「すまない」
素直に謝るロに溜息を吐きながらクーパが言う。
「これが最後のチャンス。大人しく逃げなよ。そうすれば、家くらいは、守れるかもよ」
トポテが怒り狂った顔をして言う。
「黙れ、下賎の輩が! 見るが良い、我がアイダホ家お抱えの輝石術師の力を! 周りの被害は、気にしなくても良い、消し炭すら残らない様に燃やし尽くしてやれ!」
トポテの言葉に答え、別の馬車に乗っていた輝石術師達がルビーを構えて呪文を唱える。
『ルビーよ、炎の弾を打ち出せ、炎弾』
数十発の炎の弾が同時に放たれたが。
『サファイアよ、氷の力で、炎を防ぐ壁を作れ、炎防氷壁』
呪文と共に生み出された氷の壁が全て受けきってしまう。
「田舎貴族のお抱え輝石術師なんて物の数に入らないよ」
手を叩くクーパ。
「オシロってなんだかんだ言って、輝石術だけは、凄いんだ!」
胸を張るオシロ。
「そうよ、輝石術は、凄いんだから」
そんなオシロの頭を小突くウドン。
「馬鹿にされていることくらい気付け」
輝石術師達が慄く。
「まさか、独りで我等の術を防ぐなんて……」
トポテが怒り心頭の顔で騎士達に指示を出す。
「お前等、何をしている、早くあの者達を殺せ!」
「明確な殺意、これで決まった。お前等は、帝国反逆罪で全員、強制拘束。抵抗した場合は、殺してもかまわん」
カンの言葉に、ロ親衛隊が動く。
ものの数分で、トポテがロの前に突き出される。
「何なんだ! 私は、アイダホ男爵の一子、トポテだぞ!」
それに対してロが答える。
「名乗り返すべきだな。私の名は、ホーク帝国皇帝、ロ=ゼロレだ」
誰もが驚く中、現実を受け入れられないトポテにクーパが告げる。
「さっきが最後のチャンスだったんだよ、あの時点だったら、アイダホ男爵まで影響が出なかった。ロに名乗らせた以上、皇帝陛下を侮辱し、攻撃をした明確な反逆罪、アイダホ家は、断絶の上、郎党皆殺しだよ」
この世の終わりの様な顔をし、必死に周囲を見渡すトポテ。
「嘘だろ、こんな田舎町に皇帝陛下がいるなんてある訳ない! それだったらどうして靴を舐めたのだ!」
ロが淡々と答える。
「皇帝陛下としていたらしなかっただろう。しかし、あの時は、ロ個人としてここに居た。個人的なプライドを捨てることで周囲の人間を守れるのならそうする。それが私の生き方だ」
周りの町民が感嘆の声をあげる。
完全な敗北をしったトポテがその場で崩れると、傍にいたカンがクーパにも聞こえない小声で告げる。
「陛下からの伝言だ、クーパ様を汚そうとしたお前は、殺さない、家族が処刑されるのを全て見せた後、自殺も出来ない独房で一生過ごさせるそうだ」
トポテが魂を削り叫ぶ。
「イヤダァァァァ! お願いだぁぁぁ! 今、ここで殺してくれぇぇぇぇ!」
「皇帝陛下と知らず、ご無礼の数々、何とお詫びすればいいのか解りません」
町長が必死に頭を下げるが、ロは、平然と答える。
「気にしないでもらいたい。今回の事は、全てお忍びの事だ。それより、もうおそく、これから設営地に戻るのも大変なのだが、宿を用意してもらえないか、二人分?」
ロのその言葉に、町長が頷く。
「解りました。直ぐにご用意させて頂きます」
満足気に頷くロであった。
そこは、川添にある水の調和竜が住まう洞窟。
『お前達の行動は、見させてもらっていた』
水の調和竜の言葉にロが頭を下げて問う。
「私に対する判断は、如何ですか?」
水の調和竜は、少しの沈黙の後に答える。
『皇帝よ、お主一人ならば、我の本体の目覚めが近かったかもしれない。しかし、隣の娘の存在が、お前を人に戻させる。大切にする事だ』
「全ての神に誓ってお約束します」
ロの言葉について来ていたクーパが顔を真赤にするのであった。
「それで、どうしてベッドが一つしかない部屋になったの?」
ロの泊まる部屋にやってきたクーパの言葉にロが視線を逸らしながら答える。
「ちゃんと二人分といったのだが、勘違いしたみたいだ」
舌打ちするクーパ。
「今更、自分の宿に戻るわけにも行かないし、あの時のロは、好きになれそうだから良いよ。でも、変な事したら、絶対に許さないからね」
ロが強く頷く。
「絶対に変な事をしない」
こうして、二人は、一つのベッドに入った。
翌日の朝、それは、物凄い爆音だった。
バンが慌てて爆音の元、ロが泊まる部屋に駆け込む。
「どうした!」
そこでは、クーパが蛇輝をロに突きつけていた。
「あちきは、絶対にロとは、付き合わない!」
それだけ言い残して走り去るクーパの目からは、涙が零れていた。
バンが、攻める視線をロに向ける。
「どうなっているのだ?」
ロが視線をさまよわせて言う。
「変な事をしないと約束したから、お酒を飲ませて前後不覚になったところを普通にセックスした」
バンが拳を握り締めて顔だけで笑顔で言う。
「ロ、お前が皇帝陛下だった事を感謝しろ。そうでなければここで斬り殺していた」
ロが縋るように言う。
「……やっぱ不味かったかな?」
バンは、答えない。
「どうしよう……。でも、好きな女性が隣に寝ていて手を出さない方が男として間違っているだろう!」
ロの必死な抗弁にバンが言う。
「酒で酔わせてからしようとする時点で問題だ。下らない言い訳してないで、早く挽回方法を考えろ!」
混迷するロとクーパの恋路の明日は、どっちだ。
正直言えば、この話し自体は、大枠決まっていましたが、全然、気が乗りませんでした。
次の話から、後は、ダークエンド一直線です。
落ちも何度も変えようか考えたくらいです。
はっきり言います。クーパの明るい雰囲気が好きな人は、こっから先は、読まない方がいいです。
因みに最初の方のロの発言は、暴れん坊将軍に対する皮肉です。
ロにやられて傷心のクーパ。
クーパの向った先で待っていたのは、ロによって犠牲になる事が決まっている町。
その町を救う為にクーパが死力を尽くします。




