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クローズコンクリフト  作者: 弓雲
第一章 新生guilty silence
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1話 新人と会議室①

自己紹介と説明ですね、はい。

「JAPAN SECRET PUPIL.略してJSP。

 直訳すると、日本秘密学生だが、まあ、あれだ。

 意味が分からんな!まあ肩書きとしては、『国家秘密学生部隊』。

 一様公務員だが、当人達以外でその存在を知る者はごくわずかだ。

 なぜなら、自衛隊の諜報部、国家によって完全なる情報統制が行われているからだ。

 JSPが関わった事件を目撃した者は、見舞金という名の口止め料を渡され、脅し交じりの警告を言い渡される。

 メディアに情報が洩れても、上から偽装情報に塗りつぶされる。

 まさに国のトップシークレットだ。

 理由は簡単だ。認められる訳がないからだ。

 国民に。

 日本国民は武器が大っ嫌いだからな。

 あまり知られてはいないが、現在の日本は関係の悪化に陥っている諸外国の工作員や、独断の武装集団によって あらゆる事象に関して直接的な揺さぶりを受けている。

 そして、こんなことが国民に知れたら混乱を招くのは目に見えている。

 その結果、警察やSATより強力で、自衛隊よりも即応性に特化した部隊が必要となり、国によって設立されたのがこのJSP 。

 一般学生の中に特殊部隊並みの戦闘能力を持った少年少女をまぎれさせ、事件が起こる前、警察が動く前に事件を終結させ、できるだけ多くの事件を国民の目に触れる前に隠蔽する。

 それが我々の職務だ。

 ターゲットの殺害は推奨しないが、これは戦争、いや紛争か。

 自分の身に危険を感じた場合はやむなしと判断していい。

 最後にこの部隊は、構成員から「隠されし瞳」とも呼ばれている。

 そうも訳せるからだが、こちらの方が、この部隊の真意を貫いているかもしれない。

 その意味をじっくり考え、胸に刻み込んでおけ。」


 奏達、名古屋中央部にある陽陰学園に在学するJSP構成員の分隊規模のチームguilty silenceの四人は、名駅近くのビルの地下にある名古屋支部の会議室(ブリーフィングルーム)で本部へ今回の案件について報告するために集合した矢先、


「校長先生の話かよ!」


 弓弦が突っ込みだすくらい長い。

 しかも


「そんなこと知ってるよ!僕らがいないうちにやっとこうよ!」


 と刃弦が言うように、彼らはそんなことは知っている。

 じゃあ誰のせいでこの支部のお姉さんの長話を聞かされているのか。その答えは彼女だ。


「す、すみません。」


 会議室の一番前に座らされている一見気の弱そうな女の子が泣きそうになっている。

 あせった弓弦と刃弦は女の子のもとに駆け寄って、口々に謝る。


「ごめんね、突然怒鳴っちゃって。」

「ごめんね、悪いのは君じゃなくてそこのお姉さんだからね。」


 刃弦にお姉さんが眼を飛ばしているが、刃弦は気付いていない。

 ちなみにあのお姉さんは元WAC 、つまり女性自衛官で、徒手格闘の名人だ。

 奏は刃弦に対して静かに手を合わせてから、



「ま、まずは自己紹介からしようか。」


 殺伐とした?雰囲気を打破しようと、ぼくは困ったときの必殺技『話題変え』を実行に移す。


「そ、そうです。その通りです。

 私はこの度、このguilty silenceに配属されました、

齋藤(さいとう) 彩音(あやね)

です。」


 髪は黒っぽい茶髪で肩ぐらいのショート。

 百五十センチ中盤の身長で、華奢な体つき。

 そして誰に聞いてもかわいいと返ってきそうな顔立ちの彼女は、カチッとスイッチが入れ替わったように一瞬で泣き止み、ハキハキと自分について話し始めた。


「陽院学園での学年は一年。

 JSPの準備練習場に一ヵ月通い、規定の技量に達したためJSPの存在を明かされ、実戦への投入。

 つまりこの隊への入隊を言い渡されました。

 最後の技術テストの結果、ポジションは近・中距離を任命されています。

 まだまだ戦闘に関してすら新米の不束者ですが、よろしくお願いします。」


 それに対してguilty silenceの面々は……


「陽院学園二年、

 鷲見(わしみ) 弓弦(ゆづる)

だ。

 ポジはアタッカーの補助。

 ライフルマンやらLMGやら、まあいろいろだ。

 これからよろしく!」


「陽院学園一年、

 鷹見(たかみ) 刃弦(はづる)

です。

 ポジションは右に同じです。唯一のためだから呼び捨てでいいよ!ちなみに、弓弦様の下僕です。」


「じゃあそうだな……。全員分のジュース買ってこい。」

「イエッサー!」


(弓弦の命令を聞いて刃弦は廊下に出て扉を閉めて、ジュースを買いに…)


「行かないよ!てか誰かツッコもう!」


 ドアをものすごい速さで開けて、刃弦が涙目で叫んでいる。

(なんだ、買って…)


「こないってば!」


 見事に刃弦は僕の心の声を遮ぎって席に着く。


(さあ、お次は無口なスナイパーさんだ。

 ワクワク!と奏は目を輝かせて彼女を見つめる。

 なぜなら彼女、声はかわいいのに無口で、いつも不機嫌そうにしてるからだ。

 いや、実際不機嫌なのか。)


「奏君。…撃ちますよ。」


(え!恐い。恐いよ~。途中、名前の後から声が変ったよ~)


「だから撃ちますよ。」


 さっきより一段と低くなった声で言い、隣に置かれた細長いアーチェリーの弓具の運搬に使われるハードケースを引き寄せる。

 しかし、その中に入れられているものは決してスポーツ用の道具ではない。

 二丁の軍用銃だ。

 Remington Arms社製のボルトアクション狙撃銃M24と、Knight`s Armament M14のカスタムガン、sage社製のMk.14 EBRをさらにカスタムしたセミオートマチック狙撃銃。

 この二丁が通常(フィールド)分解(ストリップ)した状態で納められている。ちなみに彼女は奏の指導の甲斐あり、M24を約五秒で組み立てられる。

 そのケースを近づけたという事は…。

(謝ろう。)


「小鳩様申し訳ありませんでした。いや、待てよ。」


 盛大に土下座しながら、一つの疑問がわいてくる。

(さっきから会話に違和感が……)


「あ!!お前らなんで僕の心が読める!?」


 奏は刃弦と彼女を指さすが、華麗にスルーされ、部屋は自己紹介に戻っていった。


「陽院学園二年、

 駒谷(こまがい) 小鳩(こばと)

 ポジションはスナイパー。」


「い、以上か?」


 奏が聞くと、

(う。睨まれた。これは後で大好物のくまさんグミを奢らなければ、防弾チョッキの上からゴム弾で撃たれかねん。

 手にメモっておこう。メモメモ。)


「奏。次だけど、うずくまって何やってんの?」


 弓弦に言われてしまった…。


「いや、何でもない。」


 立ち上がって彩音の所へ行く。


「あとここにはいないが、オペレーターをやってくれている不破さんがいる。

 彼女の情報は本人の希望で、ぼくしか知らない。

 後で渡す通常用の小型無線機で名前を呼べば、二十四時間三百六十五日いつでも応答してくれる。

 連絡や質問があったらまず彼女と話せ。」


 彼女はguilty silenceの情報の要。

 事情があり、顔やらクラスを知っているのは奏だけ。不破も本名じゃない。


「さあ、最後はguilty silence のリーダーこと僕です。」

「リーダーだったんだ。」

「リーダーだっただろうか。」

「リーダーだったんですね。」

「僕、泣いていいですよね。」


 弓弦、刃弦、小鳩に言われて、冗談なのはわかっているのに涙が出てきた奏に彩音が問いかける。


「さっきから、みなさんは誰の笑いを取ろうとしているんですか?」



 ……ヒョイ。


「え!なんで全員そっぽ向くんですか!?しかも同時に!」


「僕の名前は 

 柚留木(ゆるぎ) (そう)

 陽院学園二年だ。

 今からうちの部隊のちょっとした決まりごとの説明をする。

 あと、呼び名めんどうくさいから彩音でいいかな?」

「え。は、はい…。」


 奏が微笑みながら言うと、追及することも忘れて彩音は顔を赤くして、目を逸らす。


「話しているときに目を逸らさない方がいいぞ。相手の表情を読んで思考を推理することができなくなってしまうからな。」

「す、すみません…。」


 言われたとおりに、奏の目を見つめている彩音の顔がどんどん赤くなっていく一方、奏は首を傾げている。

(そんな美形の顔で微笑みかけられたら、そりゃ照れるだろ。顔近いし。)

 と思う刃弦たちだが、勿論奏がそのことに気付くことはない。


毎回、字数の差がすごいです。

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