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クローズコンクリフト  作者: 弓雲
第二章 名家の堕ちた刃
14/30

1話 京都旅行?

さあ、新章突入です!

 guilty silenceのメンバー五人は愛知県の交通拠点名古屋駅に来ている。

 学校がある時期と違い、各自自分の好みに合った服を着ている。

 もちろん、仕事上目立ちにくい服装ではあるものの、五人の姿は夏休み初日でごった返す人ごみの中でもよく目立っていた。

 その理由は彼らが持っている荷物の量だ。

 登山用のバッグに似た大型のリュックを背負い、さらに小型のスーツケースやバックパックを持っている。

 背負うとリュックが人より高くなるのだから、視線が集まってもしょうがない。

 だが、彼らは気にしない。

 その中に武器弾薬が入っていると思う人など日本にはいないのだから。

 朝、奏に配られた切符で改札を通り、十七番線のホームで一度荷物を下ろす。


「あ~。ただの観光だったらこんな荷物いらんのに。」


 下りの新幹線を待っていると弓弦がいかにもけだるそうな声を上げる。

 そう、五人が京都へ行く理由は観光ではない。

 京都へ行くことが決まったのはつい昨日のことだ。



「なんで突然、京都旅行なんだ?」


 全員が思ったであろう疑問を弓弦が代表して奏に聞く。


「もちろん旅行というのはただの名目であって、『京都へ何しに来たんどすえ?』って聞かれた時の返答だ。

 あと、熱心に聞いてるけど栞は関係ないからな。」

「えっ!私だけ京都行けないの!?」

「お前だけじゃないよ。

 これは本部からguilty silenceへの指令だからguilty allayのメンバーは行けないの。」

「ひどい、私もかわいい鹿ちゃんと戯れたかったのに…。」

「あの、鹿って奈良じゃないですか?」

 …………

「もういいです。私仕事行ってきます。」


(無言の間を経てスルーされた!?)


 彩音は何とも言えない感情に(さいな)まれながら、部屋から出ていく栞を見た。

 顔が赤い。

 やっぱり、間違えたのが恥ずかしかったようだ。

 扉が閉まると弓弦が話題を戻す。


「で、本部からの指令ってことは仕事(・・)なんだよな。」

「おお旦那。察しがいいの~。」

「「ホ~ホッホッホ!」」


(((何これ。)))


 高らかに笑う二人にあきれる三人。


「奏君、詳細を教えてもらえませんか?」

「了解です、小鳩さん。

 京都で警視庁関係の重要人物が暴力団取締りの会議を行うらしい。

 それに対して、…脅迫状が届いた。」


 小鳩と奏の上下関係があべこべになっていて笑いそうになった彩音だが、彼の臨場感たっぷりの状況説明で思わず生唾を飲んでしまう。


「内容は会議を取りやめないと、京都入りした出席者を全員暗殺するというものらしい。

 今、今回の案件で暗殺の実行犯になる可能性がある人物だけを、不破がJSPのブラックリストから絞り込んでいる。

 僕らの仕事は、実際京都へ行き、要人が宿泊するホテル周辺を巡回する。

 リストに載ってる人物がうろついていたら、応援を呼んで京都支部までしょっ引くって感じだね。

 さらに詳しいことは、着いたら向こうから説明があるだろう。」

「で、出発はいつなんだ?」

「明日だ。」

「そうかそうか、明日か~。ってマジ!?」

「ああ。じゃあ明日七時に名駅銀時計に集合な。」



 という感じで今に至っている。

 ホームに入ってきた新幹線N700系に各自自分より大きい荷物を抱えて乗り込む。

 三列横に並んだシートを一つ回転させ、対面六人掛けになった座席に前男子、後ろ女子というふうに座っていく。


「狭い!!」


 弓弦が言うようにリュック以外の荷物を膝の上や足元に置いた座席はとても狭い。

 窓側に座った彩音が荷物から視線を上げると正面に座った奏に自然と視線がいく。

 Tシャツの上から薄いミリタリージャケットを着て、カーゴパンツをはいた彼の姿は制服姿しか見たことがない彩音にとっては新鮮だった。

 なんとなく彩音は奏を見つめてしまう。


(なんで私奏先輩のこと見つめてるんだろ。)


 自分のことなのにわからない。


「あれ、どうした?僕の顔になんか付いてる?」

「い、いえなんでもないです。それよりこれからの予定をざっと教えてもらえませんか?」


 視線に気づいた奏の言葉から彩音は慌てて話題を逸らす。


(なんで慌てているのかもわからないけど。)


 彩音はなんだかおかしくて心の中で笑ってしまう。

 彩音の考えていることなどつゆ知らず、奏はMEGに視線を落として不破から送られてきた文章を確認しながら今後の予定を発表する。


「まず新幹線に乗っている間にブラックリストを暗記する。

 着いたらすぐに京都支部で全体のブリーフィングに出席。

 終わったらホテルに着替えなどを置き、ついでにチーム内ブリーフィングをする。

 その後は解散して各自警戒って感じかな。」


 他が真剣に聞いている中、弓弦は


「え、観光は?観光が抜けてるよ。」


 奏の予定に心底驚いている。


「これは修学旅行じゃありませんよ。」


 彩音の隣に座っている小鳩が少しキレ気味な調子で言う。


「そうですよね……。」


 そんな彩音のがっかりしたつぶやきが奏には聞こえた。


「まあ、全部終わったら一日くらい観光日を作ってやるよ。

 だから、さっさと仕事をやっつけちまおうぜ。」

「よ!さすが我らがリーダー。器が広いぜ。」


 弓弦は奏を称賛し、彩音は思わず表情が緩む。刃弦もなんだかんだで嬉しそうだ。


「うかれてる…。」


 小鳩だけは仕事しか眼中にないようだ。

 奏としては士気をあげえるための提案だったのだが、小鳩には逆効果らしい。


(小鳩は仕事のことになると、必死になりすぎる嫌いがあるんだよな。

 最近悪化してるから、ちょっと注意しておくかな?)


 車両が静かに加速し、名古屋駅を離れえていく。


(小鳩の件はこの案件が終わってからという事にしておいて、ひとまず今のことを進めないといけないな。)


 奏はMEGを操作して不破からさっき送られてきたデータを開く。


「じゃあ、リストを転送するからみんなMEG出して。」


 全員がMEGを取り出すとすぐにpdf形式データが送信されてくる。

 受信が完了するのをしばらく待つ。

 受信が完了すると彩音はすぐにデータの中身を確認する。

 ネタみたいに『極秘』と書かかれた一ページ目をめくると、一人分のデータが事細かく表示された。

 見ているうちに、彩音は見逃してはいけないものを発見した。

 彩音の視線をくぎ付けにしたのは、逮捕履歴もないのにバッチリ撮れている写真でも、所持予想兵器の欄にある軽装甲車の文字でもない。

 それは画面下部に表示されているページ数だった。


(100ページ!?)


「このページ数って、99人分ってことですか?」

「その通り!」


 彩音がおそれていた答えを奏にさらりと返された。


「不破に百人未満に削れって言ったんだけどさ、99人って酷いよね。500人を超すデータだから大変なのはわかるけどさ。」


 ため息をつきながらページをスライドさせてめくっていく奏にならって彩音も暗記に取り掛かる。

 五分程度の沈黙ののち、小鳩はMEGを膝の上に置いたポーチにしまってしまう。


「いくら多いからって、あきらめるのはよくないんじゃないか?」


 弓弦が茶化すように言うが。


「終わったんです。」

「もう終わった!?計算すると一人当たり三秒。嘘だよね、冗談だよね。」

「うるさいから黙ってもらえませんか?」

「え?嘘じゃないの!?人間のスペック軽く超えちゃってない!?」

「……」


 弓弦の興奮具合に小鳩が辟易している。

 さらに二人の会話を聞いた刃弦があんぐりと口を開けたまま停止している。


「情報分析が本職の僕が、スナイパーの小鳩先輩より遅いなんて……。」


 何事かと思った彩音だったが、単に悔しかったようだ。


「こういう時は何かでうっぷんを晴らさないと。

 ……そうだ!!奏先輩コイツのバツゲームはどうなったんですか?」


 そういって刃弦が指したのは、小鳩に『だまれ』と言われながらハンドガンのマガジンが詰まったポーチで殴られて悶絶している弓弦だ。

 一度奏も弓弦を見てから答える。


「あ~。それなんだけどさ。

 本当は四人掛けの座席に座って弓弦をハブろうと思ってたんだけど。

 なんか流れで六人掛けの座席に座ってしまったのだ。」

「何その陰鬱なバツゲーム。これはあれか?最近増えていると言われているいじめか?いじめなのか!?いじめはよくないと思います!」

「弓弦、今日は十割増しにテンションが高いな。君の言う通り、いじめはよくないよね。だけど、これはいじりだから関係ないよね!」

「関係なくね~よ!」


 弓弦が今にも泣きそうになっている。


「そんな悲しい顔するなよ。バツゲームはまたちゃんとしたやつ考えてやるからさ。」

「もっと悲しいよ!!」


 もう涙が眼尻にたまり始めた鷲見弓弦だった。


伏線の張り方が非常に下手ですよね。

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