異世界という物語へのススメ
「『物語の結末に納得がいかない!!』という経験をしたことはないだろうか?
俺はある!!
主人公のことが好きなまま舞台から消えてしまったり、バットエンドに一直線に向かっていったり、負けヒロインが爆誕してしまったり
納得がいかない物語を上げたらキリがない。
納得がいかない物語を読んでしまったあとの後味の悪さは、夜寝る前に身悶えするほどだ。
ただ、結末のわからなさこそが物語に興味を向けるキッカケとなり、面白さとなっていくことを知っている。
そして、世に出される物語が作者の努力と知恵と発想が詰まっているということも知っている。
納得はいかなくても理解できる物語は多く存在する。
ただ、納得いかないモノは納得いかない。
推しのヒロインと結ばれて欲しかったし、謎を残して終わってほしくなかったし、最強の男は死んでほしくなかった。
だから俺は自分で物語を書くことにした!
自分の好きが詰まった自分が納得できる物語を!!」
***
「それが、現状売れない小説家のあなたってわけね」
「俺が好きで始めたことだ!誰にも文句は言わせないぞ!」
「はあ」
「で、新しい小説は書けたわけ?」
「俺は異世界モノを書こうと思う!!」
「それはいいじゃない。現実逃避が得意なあなたにピッタシだわ」
「だから、世界観だったり、主人公像だったりを広げるために少し付き合ってくれ!」
「いいわよ。あなたのとってもくだらない話を聞くの好きだもの」
「ありがとう!!」
「で、どこまで考えられているの?」
「今主人公を最強の勇者にするか、最強の魔王にするか考えていたところだ!」
「なにも考えられていないということね」
「そんなことはない!」
「主人公はタイムリープすることができて、悪い未来を変えていくってな作品にしたいんだ!」
「やっぱり、なにも考えられていないじゃない。それだとリ◯ロと一緒だわ。あと、最強の勇者か魔王にタイムリープ能力なんてつけたら作者にすら手がつけられなくなるわよ」
「そうか?」
「あなたってほんとバカよね」
「バカと天才は紙一重なんだぜ」
「はあ」
「それで具体的に私はなにをすればいいの?」
「俺と話をして、小説を書くための世界観だったり主人公像だったりを決める手伝いをして欲しいんだ。なんか、良いアドバイスがあれば教えて欲しい」
「わかったわ」
「俺は異世界モノを描こうとしているのだが、まずは、異世界転生かそれ以外かだよな」
「そんな俺か俺以外かの感じで言われてもわからないわ」
「そうか。異世界転生っていうのは、現実世界で死んでしまって新しい世界に転生するんだ。ここでのミソは、異世界に行く前の記憶を持っているという点だ! 記憶を持っていれば、決意を新たにして新しい自分として頑張ることもできるし、現実世界の知識を使って無双だってできる。異世界転生以外っていうのは、そんな異世界転生以外のやつのことだ」
「異世界転生以外の説明を省かないでもらえるかしら」
「本当に近年になって異世界の幅が広がってきて、説明し出したら日が暮れちまうんだよ」
「はあ」
「それでなにが言いたいわけ?」
「要は書く小説の舞台を決めたいんだよ! 異世界に行った主人公が0の状態から始まる世界なのか、なにか色々特典とか持った状態で始まる世界なのかを考えたいんだ!」
「なら、初めからそう言ってちょうだい。そんなの特典とかを持たせた方がいいに決まってるじゃない。そっちの方が話を作る際に幅を広げられそうだもの。それこそ、タイムリープとか最大級の特典になるのじゃないかしら」
「ただ、俺は説明文が多い本にしたくないんだよな〜」
「なんかこう、主人公の持つ能力の説明だったり、過去の説明だったりに文字を使って、物語が進まないみたいなのは嫌なんだよなー」
「そう」
「なら、0からにすればいいじゃない。主人公の成長の幅が広がるし、0から始めさせれば物語を進めながらでもなにが必要なのかを考えることもできるわ」
「なんかこう、なにもない0からだとそれはそれで主人公像を考えるのが難しいっていうか、主人公を動かさないと物語が進まないのに主人公が0だから物語が動かないっていうか」
「はあ」
「なら、異世界モノを描くのやめなさい」
「それは嫌だ!!」
「あなたは、小説を書くために世界観だったり主人公像だったりを決めたくて、私のアドバイスを聞きたいってことよね?」
「そうだ! なんか良いアドバイスがあったら教えて欲しい!」
「なら、世界観や主人公像を決めるために読んでもらうターゲット層を絞るのはどうかしら? どこの層の人達に届けたいだったりが見えてくれば作品の形だったりが見えてくると思うのだけれど」
「元々自分の好きから始めたことなのにターゲットを絞っちまったら自分の幅を狭めることになっちまうぜ。」
「はあ」
「なら、自分の中でイメージできる世界にすればいいのよ。自分の中でイメージできてない世界観を文字にしても矛盾だらけな世界になってしまうもの」
「俺が描きたい世界は、なんか、中世のヨーロッパみたいな感じだけど、文明は発達してるみたいな〜」
「全く具体的じゃないじゃない。それに、そんな世界は存在しないわ」
「だから異世界なんだって! 異世界モノの良さは現実離れした世界観に現実世界にいるような主人公が存在することで生まれるギャップにある!」
「それが良さになるのかしら?」
「例えば、現実では空を飛ぶことなんてできないけど、異世界にいったらみんな空飛ぶことが当たり前で俺も空飛べるぜ、みたいなシーンがあったらなんかワクワクしないか?」
「別にワクワクしないけど。あなたって本当に子供よね」
「それは、褒め言葉として受け取っとくぜ」
「はあ」
「そもそもどうして異世界モノなわけ?」
「異世界モノって読んでてすごいワクワクしないか? 魔法が当たり前にある世界だったり、魔物とか魔王、勇者がいたり、現実とは異なる世界が舞台で、主人公は当たり前のように生活して、冒険して成長していく。読んでてめっちゃワクワクするんだよ! だから、俺も読んでてワクワクする小説が書きたいんだ!」
「はあ」
「あなたが異世界モノを書きたい理由はわかったわ」
「じゃあ、もう主人公像だけでも先に決めたらどうかしら。性格だったり、生い立ちだったりを決めましょう」
「主人公像は決まってないけど、主人公は男にする!」
「そこは既に決まっているのね。それはどうしてかしら?」
「可愛いヒロインを書きたいからだ! 異世界モノにおいてヒロインの可愛さは作品の大部分を占めるほど重要な部分だからだ!」
「なら、その可愛いヒロインとやらが存分に可愛さを発揮できるような物語を考えればいいのよ」
「なんか、可愛いヒロインのイメージはあるんだけど、可愛さを文字にできないっていうか」
「それはあなたの文才の問題ね。小説を書くのをやめなさい」
「それは嫌だ!」
「はあ」
「あなたに小説を書くのは無理よ。諦めて就職先でも探しなさい」
「嫌だ!! 俺は小説が書きたいんだ!!」
「あなたのその原動力はどこからくるのかしら?」
「そりゃ本が好きだからだ。本を読むことが好きだし、書くのも好きだし、本は俺の人生の一部だから」
「あなたは元々、物語の結末に納得がいかなかったから物語を書くことにしたって言っていなかったかしら?」
「それも小説を書く理由として間違っていない。本を読んでたらどうしても結末に納得いかないものに出会って、すごいモヤモヤして、俺が推しヒロインを幸せな結末に導いてあげたいなって思ったから本を書き始めて、書き始めたら思ったより楽しくて、今は全く読まれてないかもしれないけど、自分が書いた拙い本でも数十人でも見てくれる人がいて、それもなんか嬉しくて。でも、小説を書けるっていうのは本が好きって気持ちがなきゃ書けないと思う」
「なら、本が好きなあなたが思う理想の結末を初めに考えればいいんじゃないかしら?」
「それは、いいかもしれないな」
「あなたが納得のいかなかった物語はどんな結末だったわけ?」
「俺が読んだ物語は推しヒロインが主人公のことを好きな気持ちを抱えたまま物語から退場してしまったんだ。俺は彼女が幸せになれるような結末であってほしかった」
「なら、そのヒロインを幸せにできるような物語を考えなさい」
「世界観はそうね。そのヒロインが幸せになれる世界。主人公像はそのヒロインを幸せにすることができる主人公というのはどうかしら?」
「それだ!!」
「俺は本が好きで、読んだ本の結末に納得がいかなくて書き始めたんだ! なら俺が納得のいく結末を書けばいい! 俺がヒロインを幸せにしてあげればいいんだ! 俺がヒロインを幸せにしてあげられる世界観、主人公を作ればいい!!」
「報われなかった推しヒロインを救うことができるあなたにとっての幸せな物語。とても良いじゃない。ただ、具体的な世界観、主人公像にはなっていないけれど大丈夫かしら?」
「世界観は俺が読んだ小説と似たような世界にして、主人公像は読んでて『こんな主人公ならヒロインを幸せにできたのになー』ってのがあったんだよ!!」
「良いじゃない。それを言語化して物語にすればあなただけの小説ができるんじゃないかしら。ただ、ここからは知恵と努力と発想が必要よ。あなたが物語を書く上で大切にしていることはあるかしら?」
「俺が書く上で大切にしていきたいことは楽しく書くってことだな。楽しくないと続けれないだろ?」
「それもそうね」
「ここまでの話でどんな物語にするのか見えてきたかしら?」
「俺は俺と読んでくれる人のために自分が納得できる幸せな結末を目指して、楽しんで小説を書く!! これが俺のこれから書く異世界という物語へのススメだ!!」
「結局私のアドバイスなんてあまり必要じゃなかったわね。答えは最初から出ていたもの」
「いや、話してたおかげで書きたいものが見えてきた!ありがとな!」
「かまわないわ。あなたのとってもくだらない話好きだもの。あなたの物語楽しみにしてるわ」
「ああ、今日は本当にありがとな!」
***
1人女性が一冊の本を手に取る。
新書コーナーに置かれているたくさん並んでいる本の中の一冊。
「彼、すごいわね」




