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私はブスではないが取り立てて美人でもなく、性格も特別明るくも優しくもないと思う。人並み、普通であることが自分の一番好きなところだったと思う。

あの男はそんな私のアイデンティティを壊したのだ。特別な容姿と恵まれた身長で、私に愛を囁くのだ。おかしい。絶対に何かがおかしい。

 

「光子ちゃん」

 スタバのフラペチーノのより重そうな声で男は呼ぶ。

 朝食を終えた私たちは、高校へ向かうため通学路を歩いている。高校まで送って行くよ、毎日男が付いてくる。追い越す同級生、先輩後輩たちの黄色視線。「ね、二人手を繋いでないよ、」「ほんとだあ」「別れた?喧嘩した?」狙う?狙わない私が誰がのさえずり。

 

「手を繋ぐのを忘れていたね」と男は微笑む。そう、私たちは恋人なのだ。幼馴染で、大学四年生の清澄くんと高校二年生の光子ちゃん。両方の親の公認を貰って、清純なお付き合い。それが今の私たち。美しい彼氏と平凡な彼女のカップルは学校中の憧れ。そんなわけあるか。私たちはカップルではないし、この町にスタバはないから重さなどわからない。全ては妄想で空想のはずであるが、現実なのだ。手を繋がないと不思議がられなぜか目立ち、あらぬ噂が立ち、諍いが起こるのだ。

「僕、また他の子たちに取り合われちゃうよ」

 いやだ、取り合われることじゃない。得体の知れない何かと手を繋ぐことが嫌なのだ。動くマネキンと手を繋いでいるような、紛いもの感がこの男にはあるのだ。それがとてもいやだ。

 取り合いも困る。地域を巻き込んで女子たちの争いが起こるのだ。

「…良いよ」

 自分から手を握る。きゃーと歓声が上がる。男から触れるよりはマシだ。温度は私と変わらない。少しぬるいような気もする。

「光子ちゃんと手を繋げて凄く幸せ。」

「私は、いやだけど」

そうだねえと男は笑う。そこに愛があるとかじゃない。この男はただただ接触を楽しんでいるのだ。頭がおかしい。「僕ずっと光子ちゃんと手を繋ぎたかったから」

「高いお金を払ってこの体にして良かった。」

 ぴかぴかの笑顔。ああ、おかしい。

「そうだよ、僕宇宙人だから」

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